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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
4章 温泉と鍛冶師
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2話 休暇

「……そんなことがあったのね」


 家に帰ってきた俺は、談話室で待っていた仲間達に事の顛末を話す。


「都市のお偉方も勝手だな」


 ロゼは上層部のやり方が気に食わずに吐き捨てる様に言う。


「まあ、会長が手配してくれるなら数日の辛抱です」


 アウルムは俺を励ますように言った。


「バン、家から出れないなら遊ぼう!」

「ワン!」

 

 ……カナはマイペースだな。


 グレイもカナに同意するように鳴くし。


「それで、どうする?」

「そうねぇ…ダンジョン探索は暫く止めて、ゆっくりしましょうか」

「ゆっくりするのはいいが、やることないぞ?」


 レンの提案にロゼが難色を示す。


「買い物は顔を知られてないノアがいるからいいとしても、俺達もバンのパーティーとして顔を知られてしまっている。鍛錬しようにも庭にも出られないぞ」

「それについて一つ話がある」


 俺は、皆にある依頼書を見せた。


「協会から依頼があって、アシト山の悪獣退治だと」

「アシト山? 確かウルバン領の西にある鉱山よね」

「ああ、そこに害獣が住み着き、鉱石が採れないらしい」


 しかも国軍も手が回らず忙しく、優先度が低いので来ないらしい。ではそこで俺達冒険者にお鉢が回ってきたと言う訳だ。


「確か、アシト山と言えば麓のアレト街が温泉街として有名だったような……」

「おんせん!? いきたい!」


 アウルムの言葉にカナが反応する。


「温泉かぁ……」


 俺は温泉に入って、豪華な食事を堪能するイメージを浮かべる。


「温泉か……いいな」

「……そうね。依頼がてら温泉でのんびりするのもいいかもね」


 レンはこの依頼を受ける事に決めたらいい。


「多分、協会長がわざとこの依頼をバンに依頼したんじゃないか?」


 ロゼが依頼を聞いてから思ったことを口にする。


「……なんで?」

「悪獣依頼は口実で、温泉でゆっくりして欲しいんじゃないか? 期日も書かれてないし、経費も協会持ちだ」


 ロゼは依頼書を見ながら言う。


 なるほど……会長なりの謝礼と言った所か。


「なら決まりね……温泉に行くわよ!」

「「「「おー!」」」」


 レンは提案し、全員賛同した。


「アレト街まで列車で1日掛かるから、準備はちゃんとしてね」

「何時行くんだ?」

「そうね……3日後でどうかしら」


 3日後か。それなら会長が人払いしてくれている筈だし、準備は出来るな。


「なら、列車の手配はオレがしよう」

「なら、ノアはお弁当を作ります」

「わたしも手伝う」


 ロゼが列車の手配、ノアとカナが弁当作りを名乗り出た。


「なら俺は……」

「あんたは大人しくしてなさい。家から出れないんだから」

「……はい」


 レンに釘をさされ、俺は大人しく家に篭る事になった。


 ◇


 3日後。


「さあ、行くわよ!」

「「「「おー(ワン)!」」」」


 レンの掛け声の下、俺達は朝一の列車に乗り込む。


 予定では夕方にはアレト街に着く予定だ。


 ポーッ!


 汽笛と駅員の笛の音がなり、列車が走り出す。


「おー!」


 3度目の列車なのに、カナは感嘆の声を出す。


 まあ、初めての時は大半寝ていたからな。まだ新鮮なのだろう。


「そういえば、列車に乗ったのは初めてね」

「そうだな」


 レンとロゼも、初めての列車に興味津々だ。


「意外だな。列車に乗って来たと思ったのに」

「私達の故郷は線路通ってなかったし、お金も無かったしね」


 そうか、俺とカナもココ村から『フォルト』に行くまで金貨2枚したからな。そう簡単に乗れるもんじゃないか。


 改めて、マリナの太っ腹さが伺える。


「クゥーン……」

「なんだグレイ、二度目なのにまだ列車は怖いか?」

「ガウ!」


 グレイは怒って否定したが、尻尾が丸まってるぞ。


「……うぷ」

「アウルムさん、しっかりして下さい!」


 アウルムは列車に酔い、ノアが励ましている。


「アウルム、遠くの景色を見たほうがいいぞ」

「そ、そうですか」

「最悪、車窓を開けてリバースしてくれ」

「……それは、乙女としてやりたくないです」


 そうか、がんばれ。


 こうして列車の旅は夕方まで続いた。




「着いたー」


 夕方。


 アレト街の駅に着いた俺達は列車から降りて駅のホームに立つ。


「……うう、やっとですか」

「しっかりして下さい」


 乙女の尊厳を守りきったアウルムはグロッキー状態で、ノアに肩を借りている。


 早めに休ませてあげよう。


「それで、ここからどうするんだ?」

「まず、温泉街行きの蒸気バスが運行されているから行きましょう」

「バス停がそこにあるぞ」


 ロゼが人が並んでいるバス停らしき立て札を見つけて指差し、俺達もそこに向かう。


「途中悪獣は来ないのか?」

「こういうのには護衛が付いているもんだ…来たぞ」


 話していると、丁度煙突から煙を吹きながら来るバスと、蒸気で動いているであろう厳ついバイクが4台。


 前輪が2輪で後輪が1輪のリバーストライクというバイクだ。


 バイクは『フォルト』には無く、初めて見た。


 そしてバス停に停まり、扉が開く。


「乗りましょう」

「うう……もう無理です」

「もう少しです!」

「我慢しろ」


 レンを先頭に、ノアに肩を貸りてるグロッキーなアウルムにロゼが言い捨て、バスに乗り込む。


「車、はじめて!」

「クィーン……」


 初めてのバスにはしゃぐカナに、バスに怯えるグレイ。


 多分グレイは足が地面に付いていないのが怖いんだろう。


「はしゃがない様になー」


 俺はカナに注意しながら、バスに乗ろうとした時――。


「お客様、申し訳ございません」


 突如、乗務員に止められた。


「どうしました?」

「これ以上が満席で、乗れないのです…しかも、これが最後の便で」


 なんですと?


「じゃあ、どうしろと?」

「申し訳ございませんが、護衛車の後方に乗ってもらえれば……」

「はあ」


 まあ、しょうがないか。


「少年、こっちだ!」


 すると、1台のバイクに跨った、革のベストのズボンに、ゴーグルを頭に掛け、バンダナを首に巻いている女性に呼ばれた。


「災難だったな」

「いえ、バイクに乗るのは初めてなんで光栄です」

「バイク?……ああ、スチームサイクルの事か」


 ここではスチームサイクルと言うのか。確かバイクは和製英語だった気がする。


 ……和製英語? 俺は、日本人なのか?


「……どうした? ボーとして」

「あ、いえ…何でもありません」


 一瞬自分に疑問をもったが、前の時と同じくまたどうでもよくなって、我に返る。


「私はレオだ。よろしく」

「冒険者のバンです」

「バン? どこかで聞いたような……」


 あ、やべ。俺の素性がばれたか?


「…まあいいか。まだ子供なのに冒険者なんてすごいな」

「どうも」


 プーッ!


 話している最中で、バスからクラクションが聞こえた。


「お。バスが発車するみたいだ…バン、私の後ろに乗って腰に抱きついていろ」

「分かりました」


 俺はスチームサイクルに跨り、レオの腰に抱きつく。


「行くぞ!」


 レオがエンジンを吹かし、発車したバスに平行して進み出した。

次回「温泉街」

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