表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
4章 温泉と鍛冶師
39/97

1話 呼び出し

4章の始まりです。

「……してやられたわ」


 『フォルト』の冒険者協会会長。マリナは新聞を読んで苦虫を噛み潰したような顔をした。


「あのクソジジイ共め、本当に殺してやろうかしら」

「会長、落ち着いて下さい」


 マリナを嗜めるのは秘書のマリィだった。


 マリィは緑色の髪を纏め、眼鏡を掛けたスーツ姿のエルフの女性だ。


「起きてしまった事はしょうがありません。実際書かれている事は事実ですし」

「そうだけど……」


 マリナが懸念するのは先の巨獣討伐の貢献者。バンの事だ。


 巨獣は生きた災害といわれる悪獣だ。本来なら人がどうこうできるものではない。ただ蹂躙されるだけだ。


 そんな巨獣を、上層部の老害共は倒せと無謀な事を言い、冒険者達は多くの犠牲を出しながらも、前人未到の巨獣討伐を成功させた。


 その立役者はバンだ。それは認めよう。誰も反対はしない。


 そして、()()と呼ばれる事もだ。


 しかし、それがどういった意味を持つのかも知っている。


 だが――。


「私はこの件は情報規制させてたはずだ! 何処から洩れた!?」


 マリナはバンの事については伏せて報告したし、冒険者にも口止めした。


 理由は、バンにはこれから起きるであろう『大増殖』に専念して欲しかった事もあるし、上から束縛させずに自由に過ごして欲しかったからだ。(勿論後半の理由だけ説明して本人の許可も得た)


「人の口に戸は立てられない、か」


 誰かが洩らしたのだろう。それが上に伝わり、世間に公表させた。


「これから争奪戦になるぞ……」

「それは大げさです。まあ、貴族や他国からの引き抜きはあるでしょうが」

「はあ、この忙しい時に……バンを呼んで頂戴」


 まだ巨獣討伐の件も片付いていないのに……。


 さらに増えるであろう仕事を思い。マリナはうんざりとした。


 ◇


「なんじゃこりゃー!?」


 翌朝、協会に呼ばれたので家を出ようとすると、家の前に人盛りが出来ていた。


「バンさんですね? ぜひ取材を!」「バンさん!俺をパーティーに入れてください!」「どいて、私が先よ!」「ギルドは作らないんですか!?」


 人の多さと質問攻めにあい、俺は玄関の扉を閉めた。


「どうしてこうなった?」

「これの所為でしょ?」


 レンが新聞を持ってきてある一面を見せる。


 ――巨獣討伐! その立役者は新しい英雄の少年。その名もバン!


「やめて!」


 あまりの恥ずかしさに、新聞から目を背ける。


「いいじゃない? 他の人達には好評よ?」

「俺は良くない! 自由気ままに過ごしたかったのに……」


 協会長のマリナは情報規制をすると言ってくれたのに、なぜだ!?


「とりあえず、裏口から出たらどうだ?」

「……そうする」


 騒ぎで集まったロゼの提案を受けて、裏口から出ようとするが、


「いたぞ!」「こっちだ!」


 すでに家の周囲は人に囲まれてしまっており、家から出るのを断念した。


「なんでこの家にいる事が知れ渡っているんだよ!? この世界に個人情報保護法はないのか!?」

「なに言ってるか分からんが、どうする?」


 ロゼに聞かれるが、どうするも何も、こう人が多いと外出もままならない。


「こうなったら2階の窓から屋根伝いに行くか?」

「不審者で捕まらないといいな」


 それは困る。


 どうしようか悩んでいる時、


「バン様。お客様です」


 ノアが客だと言い、1人の女性を連れてきた。


 金髪碧眼の執事服を着た女性だ。


「初めまして、私は協会長のマリナ様の執事のリィスです」


 リィスと名乗った女性はきっちりとお辞儀をした。


「初めまして、バンです……それでどういったご用件で?」

「マリナ様のご指示により、バン様をお迎えに上がりました」


 どうやら、この事態を察して迎えに来てくれたらしい。


「それはありがたいですが……外が」

「ご心配なく。外の方々には()退()()してもらいましたので」


 ……物腰は柔らかいが、なんか怖い。


「車を外に停めております。どうぞ外へ」

「あ、はい……それじゃあ、行って来る」

「行ってらっしゃい」


 レン達に見送られ、俺は玄関を出る。


 外はさっきまで人が密集して通れたもんじゃなかったのに、今は誰も居ない。


「……どうやって解散させたんですか?」

「執事の嗜みです」


 あ、これノアと同じ人種だ。


 俺は車に乗せられ、リィスの運転で協会に向かった。


 


「呼び出してすまないな」

「いいえ」


 広い部屋に通され、机が書類で山積みになっている状況を見れば文句は言えない。


「早速だが、本題に入ろう」

「はあ……」

「今回、君には情報規制を願ったのにも関わらずこの有様だ。すまない」


 新聞の件について机に両手を置いて頭を下げて謝罪された。


「いえ、それは会長の所為ではないですし。協会に何も言うつもりはありません」

「そう言ってもらえると助かる」

「ただ、なんで情報が洩れたんですか?」


 そもそも、討伐に参加した冒険者達には口止めされてた筈だが。


「それは調査中だが、君を世間に広めたのは、おそらく上層部の連中だ」


 ……なんで?


「君を英雄に祭り上げて、抑止力にする為だ」

「抑止力?」


 抑止力なんて言葉、どこかに狙われて無いと使わないぞ?


「この国は何処かに狙われているんですか?」

「いや、ルルジアナ王国は島国だし、貿易と外交で他国とは安定している」

「じゃあ、何処が?」

「このウルバン領の隣、エルド領だ」


 エルド領? でも隣の領って……。


「……同じ国ですよね。なんでまた?」


 ウルバン領もエルド領も、同じルルジアナ王国のはずだ。


「そうか、知らないんだな」


 マリナはさもありなんと言った風に説明を始める。


「ウルバン領とエルド領は正直……仲が悪い」

「はあ」

「なんせウルバン領には3大ダンジョンの一つ『メキド』があるからな。ダンジョンは金の卵だ。隣のエルド領は『メキド』の所有権は自分達のだと主張しているのさ」

「そうなんですか?」

「実際は、ウルバン領とエルド領の境にダンジョンが見つかってな。ウルバン領がこの『フォルト』を作って所有権を主張したのが始まりだ」


 それ、こっちが悪いじゃん。


「おかげでこの『フォルト』が内乱で戦場になるかもしれん」

「国は止めないんですか?」


 内乱は国力低下を招く。王国としても無視できないはずだが。


「勿論調停を進めているが、上手くいってない。ウルバン領とエルド領の合同管理で妥協して欲しいんだがな」


 なるほど、大体話は分かった。


「つまり、俺という戦力をアピールして、内乱を起こさせない様にしようと……俺の許可なしに」

「そういうことだ。大方、断られると思ったんだろう」


 マリナは、疲れた表情で説明を終えた。


 そう上手くいくかねぇ?


「……本当にすまない」

「会長は悪くありませんよ…上層部とやらには思う所はありますが」


 上層部には文句の一つも言ってやりたい。


「私にできる事なら何でもしよう」

「それじゃあ、冒険者や記者とかに俺に関わるのをやめる様に言ってくれません?」


 あれじゃあ、外出できたもんじゃない。


「ああ。手配しよう」

「ありがとうございます」

「私の話は終わりだ。リィスに車の手配をして送るように言ってある。手配まで掛かるから、暫くはおとなしくしておいた方がいいだろう」

「分かりました」

「あと、帰りに受付に寄って欲しい」


 受付?


「……依頼ですか?」

「ああ。長期の依頼だ。受けるかは自由にしていい」

「仲間と相談します……では、失礼します」


 俺は部屋を出て、受付に寄った後、リィスに家まで送ってもらった。

次回「依頼」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ