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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
3章 厄災と3大ギルド
35/97

9話 巨獣①

「はああああ!」


 マリナが大槌を振るい、巨獣の大岩のような足にぶつける。


「『衝撃(インパクト)』!」


 武器の性能かギフトなのか、大槌から衝撃が放たれ、足の岩のような皮膚を少しだが削れる。


「このまま足を攻撃! 後方は反対の足を狙え!」

「「「おおおおー!!」」」


 全員が足に向かって攻撃を始める。


「おらぁ!」


 レオンが衝撃波を放ちながら大斧を振り、斧が巨獣の皮膚に食い込む。


「……ふん」


 ミリアはまるで踊るかの様に細剣を突き刺す。すると、突き刺した箇所から凍っていき、氷の花が咲いた。


「てりゃあああ!」


 ベアトリクスが俺と戦ったときと違う大剣――本来の武器なんだろう――で斬り付け剣圧が飛び、メルナは人の足では出せないほどのスピードで走り剣で突くが、ビクともしない。


 なるほど、これがギルドマスター2人の実力か。他と比べて飛びぬけている。


 ドォン!!


 俺も負けじと『貫通』で穴を開けていく。


 ――だが。


「ちっ、ピクリともしねぇ」


 レオンの言うとおり、巨獣にはダメージが無いのか、俺達を意に返さない。


 それどころか、


「ゴアアアアアアアアア!!」


 巨獣が吼えると、背中から火の玉を降り注いでくる。文字通り火の雨だ。


「ぎゃああああ!?」


 避け損ねたのが何人かいて、火達磨になってあっという間に死んだ。


 焼けた肉の臭いが鼻をついて思わず顔をしかめる。


 ドォン!! ドォン!! ドォン!! ドォン!! ドォン!! ドォン!! ドォン!!


 ありったけを足にぶち込んでリロード。ギフトの使い過ぎは消耗するが、今はそんな事言ってる場合じゃない。


「ゴアアアアアア!!」


 俺達の攻撃が多少は効いて煩わしかったのか、巨獣が足を上げた。


「――いかん! 退避!」


 俺達はその場から逃げ出すと、足が思いっきり振り下ろされ、足踏みを繰り返す。


 ――ズン!!!


 足踏みの振動の威力は、その場を立ってられない程だ。


 思わずしゃがみ、体制を維持していると、


「おらぁ!」

「……ふん」


 レオンとミリアが地鳴りのなか、攻撃を仕掛けていた。


 すごい、どんな体幹してんだよ。


 だが、あの2人でもたいしたダメージは出てない。


「……仕方ない」


 俺も温存だとか言っている場合じゃないな。


 俺は鞄に左腕――正確には篭手を突っ込み、核石を吸収させる。


 青白く光る篭手から粒子を出して、リボルバーに纏わせ長大な砲にして、飛ばされ無い様に粒子で作ったアンカーを地面に打ち込む。


「全員離れろ!」


 大声で叫び、それを聞いて全員離れた瞬間、『貫通』を使い引き金を引く。


 ドォォォォンッ!!


 赤い光弾に黒白の粒子を纏った弾丸が音速を超えて飛び、着弾、爆発した。


「ギャアアアアア!!?」

「どうだ!?」


 粒子は消え篭手の光が収まり、煙が消えたら、巨獣の足が半分以上削り飛んでいた。


 これで前足の一本は使えないはずだ。


 よし、これならいける!


「けど……きつい」


 『貫通』の使い過ぎと、さっきの攻撃でだいぶ消耗した。俺は雑嚢から回復薬を取り出し一気に飲み干す。


「少年! 今のは!?」

「俺のとっておきです。何度も使えません」


 攻撃部隊が近づき、聞いてくるマリナにそう答える。


「それに……今ので完全に巨獣の意識が俺に向きました」


 そう、今、巨獣の殺意を帯びた目線が俺達、いや俺に向かって放たれる。


 巨獣は今やっと、俺達を敵と認識したのだ。


「これで逃げ帰ってくれれば楽だったのに……」

「ゴアアアアアア!!」


 怒りからか、頭を俺達に向けて口を開ける。


「――いかん! 全員逃げろおおおお!!」


 俺達が走り出した瞬間、巨獣の口から炎が放たれた。


 炎は周囲を焼き尽くし、炎に飲まれた冒険者は骨も残さず消えた。


「全員撤退! 後方の部隊と合流する!」


 マリナの決断により、我先と逃げ出す冒険者達。


 そして俺達は後方の攻撃部隊と合流した。


 


 後方まで引き下がり、巨獣を見ていると、足の怪我の所為か動きが遅い。少しは時間稼ぎできるだろう。


「何人生き残った?」

「前方の攻撃部隊は残り40人。10人は負傷しています。後方は距離があったので被害はありませんが、消耗が激しいです」

「そう……支援部隊に物資と回復薬の手配。あと、負傷者を運ぶように言って」

「は!」


 マリナが指示をだし、早速作業に取り掛かる。


「会長! どうします!?」


 攻撃部隊はマリナに支持を仰ぐ。


「……少年、さっきのは後何回出来る?」


 俺は鞄を開けて中の核石を見る。


 鞄一杯入っていた核石は3分の1近く減っていた。


「……良くて後2発です」

「そうか……全員聞け!」


 マリナは冒険者達の注目を集めた後、口を開いた。


「少年は巨獣に近づき、頭を落とせ。我々は少年の援護を!」

「はい!?」


 部隊の1人が声を出して驚く。


 まあ、ダメージを与えられた俺にお鉢が回ってくるわな。


「ちょっと待てよ会長さんよぉ」

「なんだ?」


 レオンがマリナに食って掛かる。


「援護って言ったって、俺らの攻撃は効いちゃいねえ。どうするんだ?」


 レオンが比較的まともな事を言った。


「……それに、バンをどうやって近づけるの?」


 ミリアもレオンに続き聞いた。


「確かに、あの巨体に、硬い皮膚、火の雨を降らせて、仕舞いにはブレスだ。どうするんです?」

「それに、アイツはバンに意識を向けた。易々近づけさせるとは思えねーぜ」


 ガイとベアトリクスも問題点を挙げていく。


「……」


 マリナも流石に言い返せず、考え込む。


「いっそよー、動けなくさせればいいんじゃね」


 すると、レオンがマリナに提案をした。


「クソガキを単身突っ込ませれば、案外気付かれないかもしれないぜ、そしてさっきのヤツで頭は届かなくても足は当るだろ? 足を吹き飛ばせば動けなくなるはずだ。後は国軍を待って討伐してもらえれば万事解決だ!」


 レオンはまるでいいアイデアと言わんばかりに言い放った。


「……俺に死ねってか?」


 今の作戦に、俺の生還が含まれてない。


「おー死ね。俺達の為に命を捧げられるんだ。光栄だろ?」


 笑顔で言うが、その目は笑ってない。純粋な悪意が込められていた。


 こいつ……ここまでクズだったとは。


「……馬鹿?」


 するとミリアがレオンを罵倒する。


「……あ?」

「巨獣の足は6本。さっきのとあんたが言った作戦で合計2本無くしても止まらない」

「そうだ! むしろ怒りで確実に『フォルト』に向かう。更に被害が出るぞ!」

「むしろ、バンしかダメージを与えられないから、優先して生き残るのはバンの方よ!」


 『白薔薇』のメンバーが俺をかばい反論してくれた。


「みんな……」

「レオン、彼女達の言うことの方が正論ですよ」

「ガイ……てめえ」


 ガイまでレオンに反論するとは。


「――ちっ、ならどうするんだ? 会長さんよ!? このままだんまりか?」


 レオンはマリナを煽って追求する。


「ケンタウロスに乗っていくとかどうだ?」

「無理ね。バンが乗ると速度が落ちるし、容易に視認されるわ」

「ならハーピィに空から運んでもらうとか!」

「それも無理。確かに上空なら気付かれないでしょうけど、ハーピィ達にそんな力は無いし、速度も出ない」


 ベアトリクスが案を出すが、メルナに悉く却下される。


 空、ねえ……。


 空を見上げると、鳥かハーピィか分からないが、翼を広げて空を飛んでいた。


 それを見て、俺は一つのアイデアが浮かんだ。


「……近づく方法を考えたんだけど、聞く?」




「……正気なの?」


 説明を終えた後、メルナからの第一声がそれだった。


「正気だよ……賭けになるけど」

「というか、本当に出来んのか?」


 ベアトリクスからも追求を受ける。


「だから賭けだって。練習する時間も、物資も無い。出たとこ勝負だけど、ギリギリイケるはずだ」


 多分。


「……荒唐無稽ね。でも本当ならあとで調べさせて、後死んだら頂戴」


 ミリアの好奇心に触れたのか、とんでもない事を言われた。


「……けっ」

「……」


 レオンとガイは沈黙する。レオンは出来ないと思っているみたいだが。


「決めるのは会長だ……どうする?」

「……分かった。少年を信じよう」


 考え込んだマリナがようやく決心し、顔を上げた。


「総員、注目! これより作戦を連絡する!」


 こうして、巨獣との決着をつけるべく、作戦が実行された。

次回「巨獣②」

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