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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
3章 厄災と3大ギルド
33/97

7話 前夜

 それからは、瞬く間に日が過ぎていった。


 それぞれの役割を振られたので、そっちの対応に大忙しだ。俺達も顔を合わせることが少なくなった。


 俺も前衛でフォーメーションやら配置をを覚えたり、訓練に忙しい。……『明けの明星』のメンバーが嫌がらせの様に絡んでくるが。


 どうも、俺がレオンをおちょくったと話が伝わっており、レオンを慕っているメンバーから敵意を向けられているみたいだった。


 勿論、懇切丁寧に誤解は解いた……聞かない人には肉体言語で対応した。


 やがて、『飛脚』からの情報によると、巨獣はゆっくりとだが『フォルト』に向かってきており、計算では明日には着くらしい。


 今日は各々準備をして、英気を養うことになった。


 俺は何処も店が開いてない街を歩く。


 普段は沢山の自動車や人が往来しているのに、避難が完了した今は自動車どころか人っ子一人もいない。まさにゴーストタウンと言った景観だ。


 そんな中、俺は『ロガーティア武具店』の前に立つ。


 店の扉には「開店」の札が掛けられていた。


 ――カランカラン


 扉を開けると鐘が鳴り、奥からティアが顔を覗かせた。


「おや、意外じゃな」

「そっちこそ、避難しなくて良かったのか?」

「いいんじゃ。もう十分生きたし、この店にも愛着があるしのぉ」


 ティアがどこか遠い目で店を見回す。


「エルフの寿命ってどの位なの?」

「だいたい700年位じゃ。ある程度年を取ると老けもせん。それで何のようじゃ? ワシに会いに来たのか?」

「ああ……頼みがある」

「ほう、同衾なら大歓迎じゃが、そういう訳じゃなさそうじゃのぉ」


 相変わらず、俺を狙っているらしい。


「こんな状況でも変わんないな」

「こんな状況だからじゃ。心残りは無いに越したことはない」


 まあ、言いたい事は分かる。だが――。


「俺は死ぬつもりは無いし、ティアも死なせるつもりもない」

「……」


 ティアは驚いて目を見開いた。


「驚いたのぉ、お主からそんな言葉を聞かされるとは、下腹部がキュンキュンしたわい」

「やめれ」

「そっけないのぉ……それで、どんな頼みじゃ?」

「俺に……この店の核石を全部くれ」

「……はあ?」

「勿論全部支払う。だが、大切なことなんだ」


 そう、今の俺には核石の確保が戦いの生命線だ。


 しかし、避難勧告が出されてからダンジョンは閉鎖されてしまった。


 色々忙しかった所為で核石の確保が遅れたから、ティアの武具店が開いていると知った時、もうここに頼るしかなかったのだ。


「ティアは加工師なんだろ? 余っている屑核石でも、加工済のものでもいい。頼む!」


 俺はティアに、カウンターに頭をぶつける勢いで頭を下げる。


「……なるほど、その篭手じゃな。分かった。持っていけ」


 事情を知っているティアが察して、核石をありったけ持ってきてくれた。


 その量は持ってきていた鞄をパンパンにするほどだ。


「代金は?」

「戦いが終わったら請求するわい…だから生きて帰るんじゃぞ」


「分かった。ありがとう」


 俺は頭を下げて礼を言う。


「…そうじゃ、顔をワシに近づけい」

「あ、ああ」


 何をする気だとは思いながらみティアに顔を近づける。


 ――チュッ


「な!?」


 ティアが俺の額に口付けをした。


「おまじないじゃ。本当は口が良かったんじゃがのう。礼ならこっちに言って欲しいもんじゃ」


 ティアがからかいながら、なんともなしに言った。


「そうか…ありがとう」

「よいよい」

「じゃあ、そろそろ行くよ」

「うむ、生きて帰るんじゃぞ」


 俺はティアの店を出て、街を歩いた。


 ◇


「お、帰って来たか」


 家に帰ると、3人が食堂で俺を出迎えた。


「どうしたんだ?」

「飯作ってくれ」


 俺が聞くと、ロゼから料理の催促をされた。


「保存食食えばいいだろ? 栄養はあるし」

「不味いから嫌だ。今日くらい美味いものが食いたい」


 まあ、気持ちはわかるが、


「バンしか料理できないのお願い」

「お願いします」

「……はあ、分かったよ。ちょっと待ってろ」


 俺は調理場に行き、冷蔵庫を開ける。


 入っていたのは卵とハムだけ。後、探し回ったら米と葱に似た野菜があった。


「この材料なら作るのはアレだな」


 俺は葱とハムを小さく切り、フライパンに油を引き火をつける。そこに卵を割って入れて、すぐに米、ハム、葱を入れて炒めて塩、胡椒で味付けをする。


 皿に盛り付けてスプーンと一緒に食堂に持っていった。


「出来たぞ」

「これ、なんて料理?」

「チャーハン」


 俺が作った料理が何なのか知らなかったらしい。レンが聞いてくる。


「いい匂いだ。食おうぜ」

「ええ、頂きましょう」


 そうしてチャーハンを口に入れる。


「なかなか美味いな」

「だろ?」


 ロゼの感想に俺は当然とばかり言う。


 手軽だし、失敗しにくいのがチャーハンのいいところだ。


「美味かったです」

「ええ」

「お粗末さん」


 チャーハンを食べ終え、食後のお茶を準備する。


「こういうのは、いつもノアかカナがやってくれてたんだけどな」


 家事をやってくれていた2人には感謝だ。


「お茶もってきたぞ」

「ありがとう」


 レンは明日に備えて、資料をよみながら礼を言う。


「それは?」

「明日の輸送物資の資料よ。主に回復薬とかね」


 レンは補給担当で、『収納』で大量の物資を『飛脚』の人達と運ぶ役割を担っている。


 予備の武器や医薬品は明日の戦いには必要だ。レンもプレッシャーを感じているだろう。


「なんか、バンは落ちついているわね」

「そうか?」

「そうよ。後方支援の私だって、恐怖で緊張しているのに……ほら見て、手、震えている」


 そう言って、レンは小さく震えている自分の手をみせる。


「ロゼもアウルムもじっとできないんでしょうね、庭で体を動かしてるわ」


 言われれば、2人の姿が見えないな。


「俺だって緊張してるぞ」

「でも、恐怖している様には見えないわ」


 ……確かに、あまり恐怖が湧かないな。


「ねえ、バン……本当に何者?」

「そんなの、俺が知りたいよ」


 目下、そのために行動してるんだから。


「そうね…ごめんなさい」

「別にいいよ…ほら、今日は速く寝な。寝不足は明日に響くぞ」

「分かったわ。2人も呼んで来る」


 そう言ってレンは立ち上がり、庭に向かう。


「何者か?…か」


 本当になんだろうな俺は?


「まあ、いいか」


 今考えてもしょうがない。今は明日の事を考えよう。


 俺は部屋に戻り、眠ることにした。


 


「いつまでやってんの……」


 レンが2人に会いに行った時、2人はまだ訓練していた。


「これ以上は明日に響くわよ。もう寝なさい」

「分かっているんだがな」


 2人が動きを止め、レンと向き合う。


「どうも動いてないと落ち着かない」

「私もです」


 レンは、ロゼが本当のことを言ってないのにすぐ気づいた。


「……本音は?」

「気付いていたか」

「ふん、当たり前でしょ……幼馴染なんだし」


 レンは当然と言わんばかりに鼻息を鳴らして言う。


「やれるだけやっておきたいんだ。少しでもバンの負担を減らす為にな」


 ロゼは自分の信条を吐露する。


「今回もそうだ。あいつが一番危険な場所に行く。対してオレ達は都市の防衛と支援だ」

「……そうね。バンが1番年下なのにね」

「歳の割には達観しているがな」

「ロゼはバンに心配させまいとして、訓練しているんです」


 アウルムがロゼをフォローするように言う。


「分かってるわよ…ただ、それで明日に響いたらどうしようもないでしょ。もう休みましょう?」

「……そうだな」

「ですね」


 ロゼとアウルムは訓練をやめて家に戻る。


「……私だってこのままでいいと思ってないわよ」


 レンの独り言は、夜風に遮られて誰にも聞こえなかった。

次回「決戦」

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