6話 3大ギルド
カナ達を見送ったその夜。
俺達は協会に呼ばれ、顔合わせも兼ねた立食パーティに参加する。
「初めましての方は初めまして。私は冒険者協会『フォルト』支部の会長のマリナです」
壇上で挨拶したのは。見た目30代の、赤眼と長い金髪を後ろ半分三つ編みにし、露出の高い妖艶な衣装を着た美女だった。
ただ、身長が3m以上はありでかい。
「ここの会長は元冒険者で巨人族の血が入っているらしいわ」
「そうなんだ」
俺のマリナを見る視線に気付いたのだろう。レンが小声で教えてくれた。
「今宵は顔合わせも兼ねたパーティです。大いにお楽しみください」
楽しむって言っても……確かに食事は豪華だが、なんだか最後の晩餐みたいで手を付けにくい。
マリナが挨拶を終えて壇上から姿を消すと、俺達はそれぞれのギルドマスター達と顔合わせと挨拶を交わした。
その中でやはり目立ったのは、3大ギルドと呼ばれるギルドマスター達だ。
『飛脚』のギルドマスターは、眼鏡を掛けた銀髪で、下半身が馬の身体になっているケンタウロスの女性だ。見た目といい顔つきといい、まさにデキるキャリアウーマンと言った女傑だ。
その女傑の隣には腕が青い翼になって、足が鳥の鉤爪になっているハーピイの青髪の少女がいた。こちらは秘書的な感じだな。
「初めまして。『飛脚』のギルドマスターのレアです。こっちはマイ。我々は今回、斥候と連絡、支給等、後方支援を担当します」
「マイです。よろしく」
2人は俺とレンに挨拶をする。物腰の柔らかい人達だ。
聞くと『飛脚』はケンタウロスやハーピイといった獣人が多いギルドで、今回は足の速さを生かして後方支援に回るらしい。
「レンさんでしたか、貴女の『収納』は実に素晴らしい。今回はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「うちのリーダーがお世話になります」
レンは今回、『収納』を生かして後方支援に回る。
ロゼとアウルムは、それぞれのギフトの能力を鑑みて都市の防衛。こちらは他のギルドと行う。2人は他のギルドマスターと挨拶をしていた。
そして俺は――。
「おめぇが最近噂のバンか。俺は『明けの明星』のギルドマスターのレオンだ」
筋肉隆々の、褐色の肌と短めの赤髪の大斧を持った大男の青年に、
「ミリア。『白薔薇』のギルドマスター……よろしく」
レオンと対極で寡黙で、長い髪や肌、ゴスロリの服装に腰に差した細剣、眼、爪の先に至るまで、すべてが白い小柄なエルフの女性。
「……初めまして、バンです」
3大ギルドのうち、2人と一緒に前衛をする事になった。
……いや、なんで?
「まずは俺からだ……おめぇの事は聞いている。何でも男なのにギフトが使えるとか」
レオンの赤い眼には、羨望と嫉妬が見てとれる。
「……ええ、使えます」
「敬語なんて使うな気持ち悪い」
何故レオンは初対面なのに俺に強く当る? もうこいつに敬語なんざ使わん。
「ち、ギフトが使えるからって調子にのんなよ! 俺達には潤沢な資金で手に入れた遺物がある!」
レオンはおもむろに背中から大斧を取り出し見せ付ける。
「俺達の幹部より上は全員遺物使いだ! 舐めてかかんじゃねえぞ!」
なるほど、男性は女性よりギフト使いが圧倒的に少ないから、金に物を言わせて遺物、とりわけダンジョンウエポンを買い占めているのか。
でも、レオンが持っている大斧には見覚えがある。
「……あ、それ俺達が売ったやつだ」
「……あ?」
そう、2層の特殊モンスターとの戦闘で手に入れた、黒い大斧だ。
「そうか、あんたが買ったのか」
「てめぇ……俺を見下してんのか?」
レオンが怒りで身体をプルプル震わせる。
あ、これはまずい。
「このクソガキがぁ!!」
レオンが俺の胸倉を掴み、殴ろうとした時。
「ギルマス、止めて下さい」
殴りかかった右手を掴んで止める人がいた。
長い金髪に眼鏡を掛け、鈍く銀色に輝く甲冑を着て槍を背負ったインテリ風な人。
『飛脚』のレアがキャリアウーマンなら、この人はインテリヤクザと言った感じだ。
「今は顔合わせの場です。余計な騒動は控えてください」
「……ちっ」
レオンは掴まれた腕を振り払い、俺を放すとその場を立ち去った。
「まったく……強いし面倒見もいいですが、あの短気な性格はどうにかならないものか…」
インテリヤクザはやれやれと頭を振りながら手を額に当てて言った。
「……あの」
「あ、私は『明けの明星』のサブリーダーのガイです。うちのギルドマスターがすみません」
「バンです。こちらこそありがとうございました」
こちらは丁寧な態度で接してくる。レオンとは正反対な性格だな。
「なに、これから共に巨大な相手に対峙するのです。協力し合わないと」
「そうですね」
レオンとは出来そうにも無いが。
「本当は貴方をギルドに加入させようとした事もありましたが、まだ子供だという事でレオンが反対したので断念しました。残念です……まあ、大半は嫉妬か羨望ですが」
ギルドでそんな動きがあったのか。てか、最後なんて言ったんだ?
「そんな話、聞かせてよかったのですか?」
「かまいません。貴方とは今後とも仲良くしたいですし」
ガイさんは眼鏡を掛けなおしながら言った。
仲良く、ねぇ……。
「では私はこれで、後ろの人も待っているみたいなので」
そう言ってガイさんは立ち去る。
「後ろの人?」
振り向くと、『白薔薇』のギルドマスターのミリアが立っていた。
もしかして、ずっといたのだろうか?
「よお、バン!」
「久しぶりね」
『白薔薇』のメンバーのベアトリクスとメルナがミリアを連れて俺に近づく。
知ってる人物がいるだけでも心強いな。
「全く、男の嫉妬は醜いな……所で、その左腕はどうした?」
俺の篭手を見て、ベアトリクスが聞いてくる。
「3層の特殊モンスターと戦ってな。その時吹き飛ばされた」
「そうか……お前程の奴がそうなったんだったら、よっぽどなモンスターだったんだろ」
「ああ…出来ればもう会いたくない」
「それほどか……戦闘は大丈夫か?」
「ああ。この篭手自由に動かせるんだ。今は前より強くなったぜ!」
詳細は言わないけどな。
「そうか! そいつはよかった!」
「ベアトリクス。挨拶はその辺に」
メルナがベアトリクスを嗜め、ミリアが前に出る。
「次は私」
「ああ悪い…ミリアはあんまり喋んないからよ、気を悪くしたらゴメンな」
「……そんな事はない」
ミリアは簡潔に否定するが、口数は少ない。
「……貴方の事はベアトリクスから聞いている……強いと」
「アレは、ベアトリクスが本気じゃなかったからです」
「謙遜すんなよバン! お前は強い! 誇れ!」
「ベアトリクス、もう少し声小さく」
「すまん」
ベアトリクスとメルナは、なんだかんだで仲がいいみたいだ。
「所で……貴方は見たことの無い武器を使うと聞いた……よかったら見せて欲しい」
「はあ、いいですけど…」
俺はリボルバーを取り出し、銃身を持ってミリアに渡す。勿論シリンダーに銃弾は入っていない。
「これが……」
ミリアはリボルバーをまじまじと見つめ、あちこち触りまくる。
「ミリアは武器集めが趣味でな…見たこと無いものに眼が無いんだ」
「へー」
見た目と違い、以外な趣味だった。
「どう使うの?」
「ミリア! 冒険者の能力を聞くのはマナー違反だ!」
ベアトリクスが上の立場であるミリアに注意する。
「……そうね。ごめんなさい」
「大丈夫です」
ミリアは俺にリボルバーを返して謝る。
「……条件を教えて?」
「へ?」
「……対価は払うから、その武器調べさせて欲しい」
ミリアは全然諦めていなかった。
「……まあ、そのうち」
「……分かった。待ってる」
じゃあ、といいその場を離れる。マイペースな人だった。
「……あんなに話すミリアは初めて見たぜ」
「え、そうなの?」
会話少なかった様な。
「ま、お前の事……というかその武器が気になったんだろ」
「……狙われたりしないよな?」
「流石に弁えているでしょう……多分」
多分なのかよ。
「まあ、私達のギルドマスターはいい奴だ。信用しろ!」
「ええ、変な人だけど悪い人じゃないわ!」
「まあ、ベアトリクス達がそう言うなら」
じゃ、とベアトリクスも離れていく。
キャラの濃い面子が多かったからか、なんか疲れたな。
俺は他の人の挨拶(殆どが勧誘の話だった)をそこそこに、椅子に座って一休みした。
次回「前夜」




