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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
3章 厄災と3大ギルド
31/97

5話 避難

 翌朝。


 ダンジョン都市『フォルト』に巨獣襲来、避難勧告がなされた。


 今も避難を呼びかける拡声器を付けた蒸気自動車が街中を走り回っている。


 ノア達も避難準備を始めていたが……。


「いや! いかない!」

「カナ……」


 カナが行かないと駄々をこねた。


 泣き喚きながら嫌々と首を振り、ポニーテールの金髪が揺らめく。


 こんなカナの姿は初めてみた。


 他のメンバーも俺が説得しろと眼で訴えてくる。


「バンといっしょにいる!」

「カナ…分かってくれ」

「いや!」


 カナを説得するが、一向に聞いてくれない。


 困ったが、不謹慎にもカナが俺と一緒にいたいと言ってくれた事は正直嬉しかった。


「カナ、ダンジョン探索で何日かいなくなった事があっただろ? 少し長いだけでそれと同じだ」

「いや!」


 何かを予感しているのか、応じてくれない。


 何かいい方法はないか?


「――カナさん」

「ノア?」


 見かねたノアが、カナを説得してくれるみたいだ。


 目で「まかせろ」と言ってくる。心強い。


「次にバンさんに会った時、何でも願いを聞いてくれるらしいですよ」

「……え?」


 なにやら、雲行きが怪しくなってきた。


「……なんでも?」

「はい。ですよね、バンさん?」

「……はい」


 ノアの眼が、「はいと言え」と強く訴えて、俺は頷くしかなかった。


「だから、少しの間だけ我慢しましょう?」

「……わかった」


 どうやら、カナの心情より欲望の方が勝ったようだ。渋々とだが受け入れた。


 一体何を要求されるのやら。


「ちなみに、バンさんに何をしてもらいますか?」

「おい!?」


 ノア! 余計なことを言うな!


「ええとね……バンと結婚して、お嫁さんになる」

「…………え?」


 カナがもじもじしながら言った言葉に、俺の思考がフリーズする。


「すばらしいです! バンさんもいいですよね!」

「え、いや、その……」

「い い で す よ ね?」

「…………はい」


 ノアの迫力に、俺は、頷くことしか出来なかった。


「わーい!」

「よかったですね。再会した時に結婚パーティをやりましょう!」

「うん!」

「では、避難の準備をしましょうか」


 ノアは、笑顔になったカナと一緒に部屋に行って準備を始めた。


「……」


 残された俺は呆然とその場に立ち尽くすしかなかった。


「バン」


 呼ばれて振り向くと――。


「幼女嗜好」


 レンの目の笑ってない笑顔でロリコン扱いされ、


「変態が」


 ロゼから蔑まれた目で罵倒され、


「そ、そういうのはまだ早いと思います!」


 アウルムから注意された。


 …………俺にどうしろと?


 ◇


 なんだかんだ一悶着あったが、避難の準備は無事終わり、2日後、今列車が停まった避難で人がごった返した駅のホームにいる。


 列車は避難先の大きい街に行くことになっており、協会の温情か、巨獣退治の依頼を受けた冒険者の身内が優先的に移動してもらえた。


 まあ、その優先権を金で買おうとしている人もちらほらいるが。


 運行ダイヤルは決められており、ちゃんと全員が避難できる予定だ。何を急いでいるのやら?


 俺達は列車の前で、カナとノア、グレイの見送りに来ていた。


「……バン」

「大丈夫。また会えるから」

「ん、やくそく」

「ああ」


 列車の前で、今にも泣きそうなカナに目線を合わせながら約束した。


「カナさん。そろそろ」

「ん」

「元気でね」

「達者でな」

「身体には気をつけて」


 一緒に見送りに来たレン達は、まるで今生の挨拶をするみたいだ。


「ノア、カナを頼む」

「ワン!」


 ノアにカナを頼むと、グレイが「俺を忘れるな!」と一吼え。


「そうだな、グレイも頼む」

「ワン!」


 「まかせろ!」か……ほんと頼りになるヤツだ。


 俺はしゃがみ、グレイの頭をわしゃわしゃ撫でると、


「バン」

「ん?」


 ――チュッ


 頬に、柔らかい感触。 


 すぐそばに、頬を赤らめたカナの顔が視界に入る。


 その時、カナに、頬にキスされた事に気付いた。


 ――ポーッ!


 汽笛の鳴く音に、ようやく我に返った。


「カ、カナ――」


 俺が何かを言おうとした時、カナは列車内に走って行った。


「では、またお会いしましょう」

「ワン!」


 ノアとグレイも一礼した後列車に乗り込む。


 列車のドアが閉まり、動き出す。


「バンー!」


 カナが窓から身を乗り出し、手を振る。


「ふっ」


 俺は笑みがこぼれて、手を振り返す。


 俺は列車が見えなくなるまで手を振り返した。


「……また会えるわよね?」

「ああ、きっとな」

「がんばりましょう」

「ああ」


 残された俺達は、決意を新たにホームから出る。


「――さて」


 ここからが大変だ。




「うー」


 列車の中、カナは恥ずかしさにも耐えていた。


「恥ずかしかったならしなければよかったのに」

「わぅ」


 ノアとグレイが暖かい眼で見る中、カナは手で顔を覆い、下を向く。


「ちゅーしたのには後悔してないもん!」


 カナが力を込めて言う。


「なら、恥ずかしがらずに堂々としてればいいのですよ」

「……ん。バンたち。大丈夫かな?」


 カナは不安そうにノアに聞く。


「皆さん強いですから、大丈夫ですよ」


 実際ノアの目から見ても、支援担当のレンはともかく残りの3人は強い。


 模擬戦をして、3人ともモンスターとの戦いを前提とした戦いをする為ノアに分があるが、ギフトも使うので弱いわけないのだ。


 ギフトなしのハンデで勝たせてもらっているのは、どちらかと言えばノアの方である。


 それに――。


(バンさんは、特に強かった)


 元々バンはギフトなしに加えて、本来の武器の禁止のハンデまであっても尚、ノアと戦えてる。


 本人は「手も足も出なかった」と悔しがってたが、ノアとしては紙一重だった。


 しかし気になることもある。


(バンさんのナイフ捌きは明らかに対人戦の動きでした。しかも戦い慣れている)


 バンの記憶が無いのは知っていたが、体が動きを覚えていたのだろう。的確に、最少の動きでナイフを繰り出す様には、ヒヤッとした事もあった。


(本当にバンさんは何者なのでしょうか?)


「ノアお姉ちゃん?」


 バンの正体について考え事をしていた所為で、カナに話しかけるまで黙っていたらしい。


「何でもありません……ほら、弁当を作ってきましたから食べましょう」

「ワン!」

「……ん。バンもちゃんと食べてるかな?」


 カナの頭の中はバンの事でいっぱいだった。


(やれやれ、恋心とはなんと厄介なことです。ノアも、そんな日が来るのでしょうか?)


 ノアはそんな事を考えながら、弁当を取り出す。


 2人と1匹は、これからの事に不安を覚えながらも列車は進む。

次回「3大ギルド」

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