3話 篭手②
翌日。
篭手について色々憶測が出てから、俺は早速ダンジョンに行った。
篭手の性能実験の為、1層の浅い所しか行かず、日帰りの予定だ。
今回は探索するのは俺1人だけ。
仲間達は危険だといっていたが、俺も冒険者の端くれ。前は1人で探索していたからと説得して、ようやく折れてくれた。
久しぶりに背嚢を背負い、ダンジョンを歩く。
背嚢の重みを感じるとレンのありがたさが身に沁みるな。
そして少し歩くと、ようやく目当ての者…モンスターを見つけた。
バンッ!
間髪いれずに撃ち、モンスターが消えて核石だけを残した。
俺は核石を拾い、早速篭手に使ってみる。
……どう使うんだ?
「とりあえず、握ってみるか」
核石を篭手で握り締めてみる。
「――おお!?」
すると、篭手がモンスターの時の様に青白く光り出して、黒白の粒子がまるで鱗粉の様に出てきた。
手を広げれば核石は消えていた。なんとも不思議だ。
「……よし、ここからだ」
俺は粒子に意識を集中する。
粒子は確かに俺の意思で操作できてる。
試しに粒子を密集させて弾丸の様にして、近くの岩に発射してみた。
着弾した瞬間粒子は四散し、岩には傷一つ付かなかった。
次は粒子を剣のように鋭く硬くして篭手から出して、岩に斬りつける。
だが――。
「……だめか」
粒子の剣は岩に当った瞬間砕け散り、元の粒子に戻った。勿論岩に傷一つ付いてない。
やはり粒子には攻撃力が皆無か。
「……あれ?」
段々と光っていた篭手の光が弱くなっていき、そして……元の状態に戻った。篭手の周囲に集まっていた粒子も消えている。
「エネルギー切れか」
1層モンスターの核石では持続時間は精々1分か。
しかしまだ試したいことがある。
「またモンスターを倒すか」
俺はモンスターを探しにダンジョンを歩き回った。
モンスターを倒しまくり、核石を回収して使っていき、篭手について分かったことがある。
まず、核石の吸収は1度に何個でも使える。1層の核石でしか試せてないが、粒子の拡散は1個に付き約1分。2層等の核石の質が高いと持続力も上がるかもしれないが。あと、手からではなく、篭手なら何処からでも吸収できた。
次に粒子は攻撃力はなく毒性もなく、密集させるとある程度形にはなる。
使い道はおそらく特殊モンスターがやっていたような推進剤の役目と盾。後は――。
ドオンッ!!
「……すげえ」
リボルバーの攻撃力の底上げだった。
最初はリボルバーの射程を延ばそうと考えて、リボルバーに粒子を纏わせたらなぜか長大な砲になり、試しに撃ったら弾丸が粒子を纏い、着弾した後、爆発。岩を粉微塵にした。
『貫通』を使わずともこの威力だ。併用したら恐ろしい威力になるだろう。
「だけど1発だけだな」
核石を10個使って、ようやく砲の様になり、1発撃ったらエネルギー切れを起こす。
使い所を見極めなければ。
とりあえず色々分かった。定期的にモンスター狩りを行い核石の補給をしよう。
篭手の検証を終えて、次はこれだ。
ティアの店で買った消音の腕輪。
腕輪に付いている核石は篭手に触れると吸収されるかもしれないから注意して右腕に着ける。
「ティアが言うには、着けるだけで起動するらしいが」
試してみるか。
俺はリボルバーを構えて近くの岩に目掛けて撃つ。
――パシュ
空気が抜けるような小さな音だけが聞こえた。
最初本当に撃ったのかと思ったが、手に伝わる反動と岩に付いた小さな穴が、確かに撃ったのだと物語った。
「使えるな……でも使用時間がなぁ」
消音の腕輪の効果時間は核石が小さい為10分が限界らしい。
これも使い所を見極めないとな。
腕輪を外して、時間ギリギリまでモンスターを狩ってダンジョンを出た。
◇
「ただいま」
「おかえり」
カナが出迎えて、俺に近づく。
「皆は?」
「レンが協会に呼ばれて行ってる。他は家にいるよ」
協会に呼ばれた? なんだろう。
「レンが協会に呼ばれた理由は?」
「知らない」
カナが首を横に振り伝える。
そうか。まぁ何かあったらレンが報告するか。
俺とカナは談話室に行くと、ロゼ、アウルムがお茶を飲んでまったりしてた。
「帰ってきたか」
「ああ、ただいま……ノアは?」
「今夕食の準備をしている」
そうか。自称とはいえ、メイドを冠するだけある。料理も上手なので夕食に期待だ。
……俺の中で自称が抜けないのは、俺の知っているメイドじゃないから。
メイドは尋問や拷問が得意なんて言わない。
「手伝ってくる」
「いってらっしゃい」
カナがノアの手伝いに行ったが、大人2人は動こうとしない。
少しは料理を覚えようとしろよ。
「コホン…篭手の方はどうでした?」
「1層だけだったけど、大体篭手のコツは掴んだ」
俺の視線に気付いたのか、誤魔化すように質問するアウルムに意気揚々と答える。
「では…アレもできるんですね」
アウルムが複雑そうな表情を浮かべる。
特殊モンスターの一撃で戦闘不能になった時の事を思い出してるんだろう。
「いや、出来たけどコントロールは無理だ。他の手を考えないと」
あのモンスターがやった様に篭手から粒子を噴射させてやってみたが、バランスを崩してあわや大事故になりそうになった。
流石特殊モンスターと言った所か、アレをコントロールできていたのが異常だったのだ。
「あと核石の消費が半端ない。定期的に核石集めにダンジョンに行こうと思っている」
「それは……危なくないですか?」
アウルムの指摘は最もだが、3層の件がある。戦力強化は必須だ。
「まあ1層だけしか行かないから、そこまで危なくないよ」
「……そうですか」
アウルムは納得してなさそうな顔をしたが、受け入れてくれた。
「ま、何かあったらオレ達に言えよ」
「分かった」
ロゼは止めようとせず、俺を尊重してくれた。
「ただいま……」
話が終わったタイミングで、レンが帰ってきて談話室に入ってくる。
その目はどんよりと曇って、絶望感を滲み出している様に見えた。
「なにかあったのか?」
流石幼馴染。レンの状態を察して聞いてくる。
「ええ……実は」
レンが事情を言いかけた時――。
「ご飯できたよ」
カナが夕食を伝えに来た。
「……夕食食べてから話すわ」
「……分かった。グレイを呼んでくる」
レンのテンションの低さに何も言えず、詳細は食後に聞くことになった。
とりあえず、厄介事なのは確かなんだろうなぁ……。




