2話 篭手①
バンバンバンバンッ!
3層の特殊モンスターとの戦闘から暫く立ち、身体も完治したので俺達はダンジョンを探索していた。
今は2層を探索している。今回は3層には行かない。
そして今、モンスターの群れと戦闘していた。
「リロード!」
「おう!」
槍使いのロゼがモンスターを『石壁』で押さえている間、俺は左腕の篭手を使って弾薬ポーチからスピードローダーを取り出し、リロード。
「完了!」
バンバンバンッ!
石壁の向こうのモンスターに向けて発砲。モンスターは黒い霧になって消えた。
「バン! こっちもお願いします!」
戦士のアウルムが必死の形相でモンスターの群れと対峙している。
身体が光っているから『鉄壁』のギフトを使って防波堤になってくれている。
「ああ!」
バンバンバンバンバンッ!
モンスターの群れに掃射して数を減らす。
「後は私が!」
「分かった!」
「バン! 左から来るわ! そっちお願い!」
「了解!」
パーティーリーダー兼荷物持ちのレンからの指示で俺はリロードしながら言われた方に向かい発砲。
そうやってモンスターの群れを一掃していった。
「――ふう」
モンスターがいなくなったので一息つく。
「左腕は慣れた?」
レンが核石を回収しながら俺に尋ねた。
「ああ。もう俺の腕みたいだ」
今回2層にいるのは、久しぶりの探索と、俺の失った左腕の代わりになった篭手の動作確認にある。
地道にリハビリをしていった。前よりスムーズに動かすことが出来る。
「でもなぁ……」
「どうしたの?」
「いや、あの特殊モンスターの様な事が出来ないんだよな」
そう、この篭手は黒白の粒子を出して操ることが出来る。
3層の特殊モンスターは粒子を盾にしたり、推進力にしていた。
俺は動かすことは出来ても粒子がまだ出せない。
「何か条件があるんだろうか?」
「まあ、気長にやりましょう。動くだけ十分でしょ?」
「そうだけど……」
けど、この先行くなら、是非ともあの力は使いたい。
「さあ、先を行くわよ」
「ああ」
とりあえず、篭手を動かすことに専念しよう。
そう自分に言い聞かせ、仲間とともにダンジョンを探索する。
◇
「うーん」
ダンジョンから帰還後、レン達は核石の査定に行ったので、俺は拠点である家の庭で篭手の練習をする。
しかしいくら念じても、粒子が出ない。
「ワン?」
「悪い。起こしたか?」
庭で寝ていたシベリアンハスキー…じゃなかった。ブレイドガルのグレイが起きて俺に近づく。
「ワンワン!」
「え、気にしてないって?」
なんか気を使わせたな。
「ワン?」
「何してるのかって? 篭手の性能を引き出す練習だよ。粒子を出せることで、戦闘の幅が広がるからな」
「ウー」
「あ、嫌なことを思い出させたな」
グレイは3層の特殊モンスターに手も足も出なかったからな。
「あれは相手が悪かったから、気にするな」
「ウー、ワンワン!」
「負けっ放しは性に合わない? といってももういないしな」
あんなのがゴロゴロいてたまるか。
「ワンワン!」
「え、特訓したいって? でも俺じゃ相手にならないぞ」
この前の模擬戦で制限ありとはいえボコボコにされたからな。
「お前と戦えるのはノアくらいだろ?」
「――呼びました?」
「おわぁ!?」
気が付けば、自称メイドのノアが俺の後ろに立っていた。
「何時に間に……」
「ノアが洗濯物を干していたら声が聞こえたので」
にしても気配がなさ過ぎだろ。
「ワンワンワン!」
「え、ノアに訓練の相手をして欲しいって?」
ノアにも家事の仕事がある。流石にすぐには無理だろう。
「ノアはかまいませんが?」
「いいのか?」
「はい。丁度一段落ついたので」
「ワン!」
「「ならよろしく!」だってさ」
「かしこまりました」
そう言うとノアはおもむろにスカートの中から短剣を2本取り出した。
「真剣はダメだろ」
「ちゃんと刃引きはしてあります」
「ワフ!」
グレイは木剣を持ってきて構える。
「では行きます」
「ワウ!」
そうして1人と1匹は訓練を始める。
「やりすぎないようになー」
俺は邪魔にならないように庭から退散した。
「バン、どうしたの?」
「ちょっと頼みたいことがあってな」
俺が尋ねたのは『千里眼』のギフトを持つ万能幼女のカナだ。
「何?」
「この篭手の性能を引き出す方法を見てくれないか?」
「うーん…無理」
「無理か」
予想はしていたが。
「ん。私に分かるのはどんなものかだけ」
「だよなぁ」
ここまで来たら手詰まり感が出て来た。
「こうなったら最終手段か…」
「最終手段?」
「ああ。……ぶっちゃけ行きたくないけどな」
「どうしたんじゃその腕は!?」
久しぶりに来た『ロガーティア武具店』で500歳超えのバニーガール白衣のエルフ、ティアの元に来た。
男なのに俺の貞操を狙っている、見た目少女のやばいジジイだから、出来れば来たくなかったが。
「左腕はモンスターとの戦いで無くなった」
「そうか……大変じゃったのう」
ティアは同情の目線で俺の無くなった左腕を見た。
「しかしお主が生きててよかったわい。ワシの気持ちは腕が無くなろうと変わらぬぞ」
「……気持ちだけ受け取っておく」
ティアは相変わらずだな。
「ところで頼みがあるんだが」
「なんじゃ?」
「まずはこれ」
俺が出したのは俺が着ていた防具だ。
黒い長袖Tシャツと赤いジャケットの左腕部分は、腕とともに無くなった。
「修理できそうか?」
さっきのダンジョン探索では籠手を付けてたから別に気にしてなかったが、破れたままは流石に気になる。
「これは…無理じゃな。せいぜい破れた部分を綺麗に縫い直すくらいじゃ」
「それで頼む。どうせ左腕ないし」
俺は左肘の先をぶらぶら振りながら言った。
「それなら少し待っとれ。すぐ直す」
「それからもうひとつ」
俺は鞄から籠手をだしてカウンターに置く。
「この籠手がどうしたんじゃ?」
「実はこれ遺物でな」
「なんじゃと!?」
ティアが身を乗り出して籠手をみる。
「ああ。付けたら左腕の代わりに出来るんだが……こんなふうに」
俺は籠手を左腕に付けて手を動かす。
「おお! それなら日常生活に支障もきたさぬな。それで?」
「実は籠手から粒子が出て自由に操れるんだが、どうも上手くいかなくて…調べて欲しいんだ」
「なるほどのう…触っても?」
「ああ」
俺は籠手をティアに渡す。
「ふーむ、見た目は普通の籠手じゃが……んん?」
ティアが怪訝そうな顔をして、内側のある一点をみつめる。
「どうした?」
「籠手に核石に彫る回路に似たものがあるのぉ。ここ見てみぃ」
籠手を見てみると、内側に幾何学模様が刻まれていた。
「解析できる?」
「待っとれ……うーん、これは……分かったぞ!」
「本当か!?」
それが本当なら希望が出て来た。
「うむ。これは単にエネルギー不足じゃ」
「エネルギー?」
答えは意外と単純なものだった。
「おそらく、動かすだけならお主の生命力だけでいいのじゃろうが、それ以上となると、外部からのエネルギー供給が必要となるの」
「外部からのエネルギー……」
あの特殊モンスターはどうやってエネルギー供給をしていたんだ?
……モンスター?
ーーまさか!
「核石か!?」
「じゃろうなあ」
あのモンスター、自分の核石を使って性能を引き出していたのか!
「道理で分からん訳だ」
「しかし核石か。まさか売り物を燃料にするとはのぅ」
「全くだ」
しかしどの程度の核石が必要になるんだ?
「今度ダンジョンで確かめてみよう」
「そうするとよいーーでは、ワシは防具の修復をしてくる」
「ああ。頼む」
暫く店をぶらついておれと言われて、奥に引っ込む。
俺は店の商品を見ながら時間を潰す。
雑多に置かれた武具類はどれも性能はいいがやはり値が張るな。
そうやって眺めている間、気になる物があった。
それは腕輪で、幾何学模様の回路が彫られた小さい核石が付いていた。
なんてことない腕輪の筈なのに、何となく気になる。
「待たせたの。修繕は終わりじゃ」
丁度、ティアが修繕を終わらせてカウンターに来た。
「ティアこれってなんだ?」
俺は棚から持って来た腕輪をティアに見せる
「ああそれか、それは消音の回路が刻まれた腕輪じゃ…失敗作じゃがな」
「失敗作?」
「出力が低くての、腕輪を中心にちょっとの範囲しか音が消せん。精々腕輪の範囲1mくらいじゃ。あと、持続時間が短い」
音が消せる……リボルバーの消音器になるぞ!
「これくれ!」
「お、おお……修繕費込みで金貨1枚と銀貨3枚じゃ」
俺は財布から金を出す。
「毎度! お主は金払いもいいから気に入っとるぞ」
「それはどうも」
「これで夜の相手もしてくれるなら最高じゃが」
「勘弁して下さい」
「分かっとるわい、残念じゃがな」
「……また来るよ」
「うむ。待っとるぞ」
籠手の謎も解明出来たし、準備が出来次第ダンジョンで確認しよう。
俺は足取り軽く家に帰宅した。
次回「篭手②」




