18話 3層②
バンバンバンッ!
「GYAAAA!?」
さっきの戦闘を終えてから少しして、俺達は大型モンスターの集団に襲われた。
数は20体を超えている。
大型モンスターは武器を持たず、2本の角で突進してくる。
しかも体格に似合わず素早く、突進力も強い。
そこで考えたのは…。
「ロゼ、アウルム、リロード!」
「おう!」
「はい!」
ロゼが複数の石壁を出して、進路を塞ぎ、アウルムは『鉄壁』で触った石壁を更に硬くする。
2人の連携で鉄壁の壁の完成だ。
モンスターは鉄壁の壁を壊さずに阻まれる。
俺とグレイは攻撃に専念し、ロゼとアウルムが防御、レンがサポートといった役割が3層の戦闘で自然と決まった。
「完了!」
バンバンバンバンッ!
俺はモンスターの群れに撃ちまくり、
「ワウー!」
グレイが素早さを生かしてモンスターを翻弄する。
幸いモンスターの防御力は高くなく、『貫通』を使わずに済んでいる。
「ふう……」
こうして、モンスターの群れを掃討して、周りは核石だらけになっていた。
「みんなご苦労様。少し休憩していて。私は核石を回収するから」
1番疲労の少ないレンが核石の回収に向かい、俺達は言葉に甘えてその場に座り込み休憩する。
「ほら」
「ありがとう」
ロゼから水筒を貰い、喉を潤す。
「グレイ」
「ワフ」
グレイ用の皿に水を入れて渡し、グレイはピチャピチャと水を飲んだ。
「にしても疲れたな」
「はい……しばらく動きたくありません」
2人の疲労が強い。1番ギフトを使ったから当然か。
「あの群れでまた来るのか?」
「分からん…」
毎回あの数が来るならたまらんぞ。
「皆おまたせ」
レンが核石を回収し終えて戻ってきた。
「レン、しばらく此処で休憩しよう」
俺とグレイはともかく、レンとアウルムの疲労は相当だ。
「ええ。分かっているわ。あそこの大木が3本並んでいる所に窪地があったの。そこなら見つかりづらいでしょうし、そこで休憩しましょう」
「わかった…2人とも、動けるか?」
「ああ…」
「ええ…」
「なら行きましょう。何時モンスターに見つかるか分からないから」
こうして移動した場所は、3方が木で囲んで、その間が窪地になっており、確かにぱっと身見つからない。
「今何時だ?」
時計を見ると8時を差していた。
いつの間にか外は夜になっていたらしい。3層はずっと日中で時間間隔が分からなくなる。
「今日はここで野営しましょう」
「賛成」
「食事を出すから待ってて」
俺達は食事を済ませて寝袋を出して交代で睡眠をとる。
ロゼとアウルム、グレイが睡眠を先にとり、後半が俺とレンだ。
理由は2人と1匹が疲労が大きいから先に休ませる為だ。
「こうやって2人で話すのは初めてかもね」
ロゼ達が眠りにつく中、俺とレンで見張りをしていると、レンが話しかけてきた。
「そうか?」
「そうよ……1つ聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「あなた、記憶が戻ったらダンジョン探索をやめるの?」
「……え?」
突然の問いに、俺は思考がフリーズした。
「だって記憶を戻すためにダンジョンを攻略してるんでしょ? もし、攻略前に記憶が戻ったら止めるのかなって」
「それは……」
……考えたことがなかった。
なぜなら、俺はダンジョンを攻略しないと記憶が戻らないと思い込んでいたからだ。
「…………なんで?」
そうだ。なんで他の手を考えなかったんだ。病院に行くとか、他にもあった筈だ。
「なんでだ……?」
「……バン?」
「そうだよ……なんでだよ」
何で俺はダンジョン攻略しかないと思ったんだ?
まるで誰かに思考を誘導された様な気持ち悪さを感じる。
「俺は……」
「――ン! バンっ!」
「はっ」
気付けば、レンがおれの肩を揺らして顔を覗き込んでいた。
「ちょっと大丈夫!? 顔色悪いわよ?」
「あ……ああ」
気が付けば、今までの疑問がどうでもよくなった。
「またかこの感覚か……」
……俺は、いったいなんなんだ?
「バン?」
「ああ…もう大丈夫だ…あと、近い」
レンの顔が、唇が触れそうなほど近く、レンの青い眼が俺の顔を映していた。
「え? ……あ、ごめん!」
レンがすぐに離れて照れた。
「でも、どうしたの? さっき様子が変だったわよ?」
レンが照れ隠しに俺の様子を伺う。
「……いや、なんでもない。もう大丈夫だ」
この感覚は説明しづらいし、多分分かってもらえない。
「そう……」
レンは納得してなそうだったが、それ以上追求するのをやめた。
「さっきの答えだけど……やめないよ」
「え?」
「だって生きてかなきゃいけないし、カナが大人になるまでは面倒見なきゃ。保護者としてな」
結局、俺はダンジョン探索を止めるわけにはいかないんだ。
例え他の何かの思惑があったとしてもだ。
「…なにいってんの。バンも子供でしょ?」
「俺は大人だ」
「はいはい……そうね、もう大人ね」
レンが暖かい目で俺を見てくる。
「そんな目で見んな」
「生意気よ。年下の癖に」
「それは悪うござんした」
「「……ぷ、ははははは!」」
どちらかともなく2人して笑いあった。
「うるさい!」
そしてロゼに怒られた。締まんないなぁー。
◇
3層の攻略を始めて2日目。
昨日のような群れは遭遇せず、精々2、3体のモンスターの戦闘が数回あったが、それ以外は順調に進んだ。
道中、モンスターにやられて死んだであろう冒険者の遺体を見つけたが、遺品として会員証だけ回収した。これは協会に知らせると同時に、遺体代わりに会員証を共同墓地に埋葬する為だ。
遺体を見ると実感する。これがダンジョンの恐怖なのだと。
死んだらそこで終わりか……だけど俺にはカナが帰りを待っているんだ。こんな所で死ねない。
1人決意を新たにパーティーと探索する。
そうしてモンスターと戦闘を行いながら進み。
「なあ、あれ見ろよ」
ロゼが反りだった崖に横穴をあるのを見つけた。
「まさかあれって…」
「ええ……マッピングしている感じ、多分4層の入り口ね」
やっぱりか。
「どうする? 先に進むか?」
「そうね……とりあえず入ってみましょう。4層がどんな感じか知りたいし」
「そうだな」
そうして俺達が先に進もうとした時――。
「ガウ!」
グレイが後方を振り返り唸り声をあげた。
「――全員武器を!」
グレイの様子に察したレンが指示する。
すると上空から、何かが地面に落ちて土煙を上げた。
そして出てきたのは、3層のモンスターと違い、小柄で体格は俺と同じ位。
額にも角はなく、代わりに左腕に青白く光る篭手が付けられていた。
だが、他のモンスターと違い、圧倒的な存在感を放ち、モンスターの周囲が空気が重く感じられた。
間違いない。こいつは――。
「特殊モンスター!」
レンが言うように特殊モンスターだった。
「レンは離れてろ!」
「気をつけて!」
レンがその場を離れ、全員がそれぞれ武器を構える。
それを見たモンスターの篭手から、黒と白が混じった粒子が出て来る。
――あれはヤバイ!
「ロゼ、アウルム! 『石壁』と『鉄壁』を!」
瞬間、モンスターの姿が消えた。
「――え?」
気付けば、アウルムが後方に吹き飛び、崖に衝突していた。
「アウルム!」
「ロゼはアウルムを見てくれ! 俺とグレイで引き付ける!」
バンバンバンバンバンバンバンバンッ!
「ワウ!」
俺はありったけ撃ち、グレイは素早く動いて斬撃を放つ。
だが――。
「ちっ」
弾丸は篭手から出た粒子に阻まれ、グレイの攻撃をたやすく躱す。
俺はリロードをしながら前に出る。こうなったら近距離で『貫通』を使ってやる!
「キャイン!」
モンスターは俺に脅威を感じ取ったのか、グレイを足蹴にして、俺に標準を定めた。
モンスターが構え、再び篭手に粒子が集まる。
瞬間、石壁が現れてモンスターの視線を遮った。
俺は咄嗟に横に跳ぶ。
――ドガン!
石壁が砕け、モンスターが明後日の方に飛んでいった。
「バン!」
ロゼが近づき、モンスターに槍を向けて構える。
「アウルムは!?」
「ギリギリで『鉄壁』を使ってたらしい。生きてるが戦闘は無理だ!」
そうか、良かった。
「で、アイツはどうする!?」
モンスターが悠々と歩いてこちらに向かってくる。
まるで余裕と言わんばかりだ。
ドォン!!
試しに『貫通』で撃ったが、簡単に躱された。
「やっぱり避けたか」
防がずに避けた。
なら、俺の『貫通』は通用する!
「近距離で『貫通』を撃ち込む。援護してくれ!」
「おい!?」
俺はリロードして、銃を構えながらモンスターに向かって走る。
あの篭手の仕組みは大体分かった。
粒子を貯めてロケットのように噴射し、粒子を密集させて盾に出来る。
動きを見た感じ、多分粒子は複雑な動きが出来ないはずだ。なら隙はある!
ドォン!! ドォン!!
俺は『貫通』を撃ちながら接近する。
案の定避けられたが、想定内。
この隙にモンスターとの距離を詰められた。
遠距離ならともかく、近距離で弾丸を避けれるやつなんていない。
だが、この戦闘でリロードはもう出来ない。あと6発で決める!
だが、それに感づいたのか、モンスターが距離をとる。
「くそ!」
ドォン!!
撃つが、やはり避けられる。
近づくのを止めて立ち止まるが、モンスターは近づこうとしない。
こいつ! 俺が隙を見せるのを待つ気か!?
モンスターは俺との距離を20m程で保っている。
俺の攻撃を避け、一瞬で間を詰められる距離だ。
だが、俺には近づくしかない。
再びモンスターに向かって走り出す。
勿論モンスターは俺から離れようとするが。
「GA!?」
突如後ろから出てきた石壁に遮られた。
ロゼがモンスターの動きを邪魔したのだ。
「サンキュー!」
ドォン!! ドォン!!
「GYAAAA!!」
走りながら撃った所為か上手く当たらず、モンスターの右足と右腕を吹き飛ばしただけだった。
だが、モンスターもただでやられるつもりもないらしい。
篭手に粒子を貯めて俺に突っ込むつもりだ。
粒子が噴き出す瞬間。
ドォン!!
撃つが、モンスターは止まらず、俺に突っ込んでくる。避ける時間がない!
――顔の輪郭がないモンスターが、笑った気がした。
「クソッタレ!」
俺は賭けに出ることにする。
腕をクロスしてモンスターの突進を受け止める。
その結果。
「――捕まえた」
左腕の手から前腕が半分吹き飛び血が吹き出るが、そのおかげでモンスターの狙いがわずかに逸れ、モンスターの攻撃が空振りに終わった。
俺は残りの左腕、前腕と肘で首に抱きつき、モンスターのこめかみに銃口を当てる。
「GYAAAAA!!」
モンスターの悲鳴が耳に劈くが、気にしない。
ドォン!!
最後の1発がモンスターの頭を吹き飛ばし――反動で右手首が逝ったが、モンスターは黒い霧になって篭手と黒いサッカーボール大の核石を残して消えた。
「――あ、やべ」
それを見た後、俺の意識も遠のく。
「バン!? しっかりしろ!」
ロゼの叫び声を最後に、おれの意識は途切れた。
次回「居場所」




