15話 拠点
「家を買いましょう」
皆て朝食時、唐突にレンがそう切り出した。
「家? 宿じゃダメなのか?」
飯も出てくるし、部屋も定期的に掃除してくれるし文句無いんだが。
「言いたい事はわかるわ……でも、宿泊費が嵩むじゃない」
「まぁ、そうだけど」
確かに、宿泊費は馬鹿にならない。今は稼げているからいいけど、怪我等で探索出来なくなったら治療費とかで無くなるしな。
「でも家事はどうするんだ?」
「そんなの分担すればいいじゃない」
「……皆できんの?」
「「「……」」」
俺の言葉に全員目を逸らし、黙りこむ。
その反応だけで察した。
「あと、ダンジョン探索に行く時カナを1人にしたくないんだが」
「それならグレイがいるでしょ?」
まぁ、そうなんだけど、それでも心配だ。
「まぁそこらへんは後で考えるとして……家を買うのはいいとして物件はどうするんだ? 大人数だから大きい家を買わないと駄目だろう?」
「それについては目処をつけてるわ」
ロゼの言葉にレンが鞄から紙を出して広げる。
描かれていたのは街の地図で、2箇所赤い丸が付けられている。
「ここが買おうと思っている家よ。元々商人の別邸だったらしく大きいわ」
レンがすでに目星をつけていたらしい。
「何時の間に」
「昨日不動産の下見に行ってね。ダンジョン側の門に近いからいいと思うけど」
「でも、商店街から離れてないか?買出しとか不便だぞ。それに協会からも遠い」
ロゼは地図を見て反論する。
「じゃあ此処は? 協会や商店街からも近いし、買出しも楽よ。でも、家はさっきより小さいし、立地上値段も高いわ」
「ちなみに値段は?」
「最初のが金貨1000枚。今のが2000枚よ」
1軒目の2倍か……。
「お金は斧を売ったのと、ダンジョン探索での稼ぎで貯めるしかないけど」
それで大斧の売金の山分けは待ってと言ったのか。
「他の家はないの?」
「残念だけど用意されたのがこの2軒だけなのよ」
「うーん……」
安さをとるか、立地をとるかか……。
「……とりあえず、両方見てみません?」
「…そうね」
「…だな」
「ああ」
「ん」
アウルムの最もな意見に全員賛成する。
「そうね。皆がよかったら早速行きましょう」
こうして、新たな家を下見に全員で物件を見に行く事になった。
こうして訪れた1軒目。立地がいい方から見学に来たが……。
「なんか……思ったより小さいな」
家は周囲と変わらない、ありふれた2階建ての家だ。
5人と1匹で暮らせるだろうけど……流石に狭いだろ。
「小さそうに見えるけど、中は案外広くて2階は大部屋になってるの! キッチントイレ風呂付よ!」
レンが間取りを説明するが、全員微妙そうな顔をしている。
「なあ、個室はあんの?」
「う……」
突っ込まれて、レンがたじろぐ。
「2階を全員で使う? 俺も?」
「そ、それは……」
「女性だけで使うならいいけど、男の俺はどうしろと?」
「……おっしゃる通りです」
レンが項垂れながら認めた。
「と言う訳で、この家は却下。異論のある人」
聞いてみたが、全員沈黙。異論は無さそうだ。
「認めるわ……私も正直無理じゃないかなって思ったの。けど一応ね」
「おい」
行き当たりばったりじゃねえか。
「もう次見に行こぜ?」
「だな」
ロゼの提案に賛成して立地のいい家は諦めて次の物件を見に行くことにした。
そしてやってきました2軒目。
交通アクセスは悪いが、安くて広い家を見に来た。
「へー」
1軒目と比べるとアレだが、商人の別邸と言うだけあって確かにデカイ。家というより屋敷だな。
広場や談話室もあり、2階の部屋も4人で個室を割り振っても余りそうだ。
しかも庭付き。これならグレイも広々とできるだろう。
「こっちは見たとおり、全員個室が使えるし、設備も十分! ここならいいでしょ?」
「確かに良さそうだ」
ダンジョンの行き来も近いし、確かに協会と距離があるが、そこまで遠いわけじゃない。少し歩くと大通りにでてバスに乗れば問題ないしな。
「こっちが良さそうじゃん」
「そうですね」
「ん。よさそう」
「……」
俺とアウルム、カナはこの屋敷を気に入ったが、ロゼは難しい顔をしていた。
「なあレン。何か隠してないか?」
「ギク!」
ロゼの疑問に明らかに動揺するレン。
「確かに立地は良くないが、いうならそれだけだ。交通にそこまで不便じゃない。なのに、この大きさの屋敷が金貨1000枚? 明らかに安すぎだろ?」
「か、隠し事なんてないわよ!」
レンが一指し指を交互にくるくる回しながら否定するが。
「その指を回す癖、お前が嘘ついている時にするやつだ。幼馴染なめんな」
「う……」
ロゼに論破されてレンがたじろぐ。
「……分かったわよ! 話します!」
観念したのか、レンが話し出す。
「この屋敷…所謂事故物件てやつでね…この家で人が死んでるの」
「うへー」
聞きたくなかった。
「何でもこの屋敷の持ち主の旦那が浮気して奥さんに浮気相手共々滅多刺しにされたって話よ。それで…旦那と浮気相手のうめき声が夜な夜な聞こえるんだって。幽霊を見たって話もちらほら・・・」
「お前な…そんなことを隠すな!」
「ごめんなさい!」
怒鳴るロゼにレンが速攻で頭を下げる。
「じゃあ…屋敷はどうするんですか?」
アウルムが不安そうに聞いてくる。
「今回は諦めるしかないだろ」
「賛成」
ロゼの言葉に俺も賛同する。
「そんな~」
レンが残念そうにするが、流石に無理だろ。
「んー」
そんな中、カナが何か考え事をしていた。
「カナ、どうした?」
「…見ようか? いるか」
「「「「え?」」」」
唐突のカナの提案に全員驚く。
「……見れるの?」
「ん。幽霊いるか分かると思うよ」
カナの『千里眼』。そこまで出来るとは。
「カナちゃんお願い! 私、広い屋敷が欲しいの!」
レンが欲望駄々漏れの本音を言いながらカナにお願いする。
「カナ。怖くないのか? 嫌ならいいんだぞ」
カナを案じて言ってみるが……。
「? 何で怖いの?」
「あ…そうですか」
カナはオカルトに強かったみたいだ。
「じゃあ早速、カナちゃんお願い! 鍵はこれね」
「ん」
レンがカナに屋敷の鍵を渡す。用意がいいな。
「俺も付いていくよ」
カナを1人にできないしな。
「ん! ありがと」
「他はどうする?」
「「「ごめんなさい勘弁してください」」」
3人は幽霊が苦手な様だ。
てかレン、幽霊苦手なのによくこの屋敷買おうと思ったな。
「はぁー…とりあえず、行くか。」
「ん」
カナが俺の手を握ってきたので、一緒に家の扉を潜った。
◇
結論から言おう。
幽霊はいた。
しかも殺された恨みで怨嗟の声を上げながら襲ってたらしい。
らしいって言うのは。俺は全く知覚できなかったからだ。
だが、カナの『千里眼』は幽霊を捉えて、成仏…と言うか退治する為に俺の持つ短剣で、カナに言われるがまま何もない空間を滅多刺しにした。
皮肉にも幽霊は生前と同じ様に滅多刺しされて退治されたわけだ。
家を一回りして、他には何もないのを確認した後、家を出て結果を報告。
「ありがどうー!」
レンからはめっちゃ感謝されたが。結局家を買うかは決まってない。
「どうすんの?」
「カナちゃんに退治してもらったし、この家でもいいんじゃないか?」
「そうね」
「安全が確認されているなら私もいいです」
「なら決まりだな」
こうして元幽霊屋敷を買うことを決めて、不動産に前金で大斧の売金、金貨800枚を払い、残りはローン払いに決まった。
屋敷は長年人が住んでなかった所為か、荒れておりリフォームと、コンロや冷蔵庫、洗濯機(核石で動くらしい)といったが家財も必要だが、そこは俺の貯金で何とかなった。
金貨約100枚したが。これで俺の貯金は金貨約150枚になった。
「ごめんね、ちゃんと返すから」
レン達は俺に負担をかけたのが申し訳無さそうだったが、別に気にしてないし、俺も住むんだから気にしなくていいのに。
まぁ、リフォームが終わるまで屋敷には住めないので、その間に残りの問題を解決しよう。
ある意味、最大の難関だ。
あの3人の家事力をどうにかしなければ!!
次回「メイド?」




