12話 それぞれの事情
「ただいま」
「あ、おかえり」
ダンジョンを出て、街に着いたときは夜の7時を回ってた。
協会には明日行くことになり、宿に戻るとカナが長い金髪をポニーテールにしてエプロンを着け、配膳の手伝いをしていた。
「カナちゃん。ちょっといい?」
ダンジョンでギフトの話を聞いて、早速レンがカナに言い寄る。
「なに?」
カナが首を傾げて聞く。
「カナちゃん、ギフト持ってるのよね? 見て貰いたい物があるんだけど」
「ん、いいよ。今手伝っているから、ちょっと待ってて」
宿も今夕食時間で忙しいのだろう。
「分かった。俺達は部屋にいるよ」
「晩御飯は?」
「カナと一緒に食べるから終わったら来てくれ」
「ん」
「あと、カナのギフトをみんなに言うけど、いい?」
「べつにいいよ」
カナは手伝いに戻り、俺達は部屋に向かう。
「さて、説明してもらいましょうか」
俺とカナの部屋に全員集まり、レンに話をする事になった。
「カナちゃんのギフトだけど、どんなの?」
「カナのギフトは『千里眼』だ。遠くを見る事ができ、自分の見える範囲内なら何があり、どんなものか、危険なのかが分かるらしい」
俺は包み隠さずカナのギフトの詳細を言う。
「え、なにそのギフト」
聞いていたレン達は何故かドン引きしていた。
「何その反応」
「いや、そのギフト……どう考えてもおかしいじゃない!」
おかしいって……。
「その評価酷くない?」
「強すぎておかしいって意味よ!」
「ああ。パーティーの中で一番強いぞ」
「私は『鑑定』のギフトに近いものと思っていましたが……そこまでとは」
レンに続いてロゼとアウルムまで言ってくる。
「そんなに?」
強いといってもピンと来ない。
「あのねぇ…よく考えなさいよ。あの子1人で戦闘以外全部出来るわよ」
……え?
「ああ。情報収集、索敵、採取、罠解除、戦闘補助、すぐに出るのでもこれだけある。他にも考えれば色々出るだろう」
「相手の弱点も分りますね。ギフトも見られましたし」
……もしかして、ヤバイ?
「ヘタすれば、あの子1人を巡ってが争いが起きてもおかしくないぞ」
「そこまで!?」
「と言っても冒険者間でだけどね。それだけのギフトって事よ」
……聞かなきゃよかった。
「カナちゃんのギフトを知っているのは?」
「他にいないけど」
「なら他言無用で。みんないいわね」
「「「はい」」」
まさかここまで大事になるとは……。
「……そういえば、バンはどうやってカナちゃんと出会ったの? 兄妹じゃないでしょ?」
やっぱり兄妹じゃないってばれてたか。
「んー……森で出会った」
「はい?」
そういえば、個人的な事喋ったことなかったな。
「丁度いい機会だ。俺達の事を語るよ」
俺は『フォルト』に来るまでの出来事を話した。
記憶喪失で森にいた事。そこでカナに出会いバンと名づけられたこと。ダンジョンの話を聞きここまで旅をしてきた事等全部だ。
俺が異世界から来た件は頭を疑われそうなので黙っていたが。
「ちなみにカナの事はほとんど知らない。聞いて欲しくなさそうだし、本人が話したくなるまで待つ約束をしている。だけど放り出すつもりも勿論ないし、家族の様に思っている」
これで俺の話は終わった。
「そう……なんと言うか……大変だったのね」
「ここまでよくやってこれたな……」
「しかも、ここまでの出来事がたったの10日間であっていたなんて」
話を聞いた3人から、同情の視線が集まる。
別にそこまで苦労はしていないけど。
「それでダンジョンに潜る理由は……」
「俺の記憶を取り戻すためだ。ダンジョンを攻略したら願いが叶うって聞いたし」
たとえその話が。か細い糸の様に望み薄だとしても俺にはそれに縋るしかない。
「なるほどね……事情は分かったわ」
一通りの話を終えてレンは納得し、俺も一息つく。
「ならオレ達もダンジョンに挑む理由を言おう」
唐突にロゼが自分の話しを語ろうした。
「ロゼ?」
「バンとカナの話だけ聞くのも不公平だろう?」
「……そうね」
レンが考え込み、悩んだ末にロゼに同意した。
そしてレンが話し始める。
「私とロゼは幼馴染って前に言ったけど、実は同じ孤児院で育ったのよ。それで孤児院を出て経営を助ける為に冒険者になるのが1番稼げるから冒険者になったのよ」
「孤児院はオレ達がいた頃からいつも貧乏だ。だから少しでもマシになる様に仕送りをしている……幸いギフトもあったしな」
レンとロゼは故郷の孤児院の為か……苦労してるんだな。
「次は私ですね」
今度はアウルムが口にだす。
「私は村を追い出されて、生きて行く為に冒険者になりました」
……こっちもかなり重い話になってきた。
「私の村は『フォルト』近くの小さな村ですが、両親が事故で亡くなり、親戚に家を盗られてしまった挙句、ギフトが使えない役立たずと言われ追い出されました」
「ちょっと待って、ギフトが使えるのは10人に1人の確率だろ? それを使えないからって……」
「……その親戚が『ギフト教』の信者だったんです」
ギフト教か。聞いた通り、やっぱりロクでない宗教だな。
「それで冒険者か」
「ええ、農家だった私が他にできそうな事もなかったですし……」
アウルムが話を終えて、一同シーンと静まり返る。
「なんと言うか……全員苦労してんだな」
「そうね……」
うんうんと全員して頷く。
「で、事情を聞いてどうするんだ?」
「どうするって?」
ロゼの質問にレンが聞き返す。
「聞くとバンと俺達はダンジョンを探索する理由が違う。バンはダンジョンを攻略する為、オレ達は稼ぐためだ」
「……それが?」
「察しが悪いな……バンはオレ達との目的が違う」
「……ああ、私達の今後の目標ね」
「そうだ。オレ達は稼げればいいから深層に挑む理由がないが、バンは違う」
「そうね……みんなはどうしたい?」
レンが皆に今後の指針を聞く。
「バンはダンジョンの攻略を目指すのよね」
「ああ」
そこを譲る気はない。
「それなら、私はバンに付き合うわ」
レンは俺につくと決めた。
「……いいのか?」
「ええ。深層の方が稼ぎもいいし、私を見下して追放した奴らに一泡吹かせたいしね……それに、このパーティーなら攻略出来ると信じてるわ」
出会って日は浅いが、実にレンらしい理由だな。
「ならオレもバンと行こう」
レンに続き、ロゼも俺と行くと決めた。
「ここまで一緒に来たんだ。一蓮托生ってやつだ……それに、バンの事は気に入っているからな」
最後の方が小さくて聞こえなかったが、ロゼの事だ。レンを気にかけてくれたんだろう。
「あと、アウルムだけど……」
3人の視線がアウルムに集まる。
「わ、私は……着いて行きます! お願いします!」
そう言ってアウルムは頭を下げた。
「私も攻略して、稼いで有名になって、故郷の家を取り戻したい! 親戚に一泡吹かせたいです!」
これで全員の意思が決まった。
「決まりね。それじゃあ私達の目標はダンジョンの攻略を目指すわよ!」
「「「おおー!」」」
こうして、俺達のダンジョン攻略について話し合おうとした時ーー。
「みんな、ご飯」
カナが扉を開けてご飯の連絡に来た。
「……ご飯食べに行きましょうか」
「……だな」
「?」
なんでもないよ。と、カナの頭を撫でながら俺達は食堂に向かった。
なんとも締まらないなぁ。
次回「犬?」




