11話 2層
パーティー結成から2日後。
昨日は協会でカナのワーカー登録をして、回復薬の材料の薬草採取の依頼を一緒に受けた。
ちなみに3人は二日酔いでグロッキーの為、宿に置いてきた。
街はずれの草原での薬草採取は流石と言うべきか、カナの『千里眼』によって大量に採取でき、職員を驚かせた。報酬も依頼以上だ。
カナの活躍は、今後定期的に採取系の依頼を頼まれた程だった。
1人は危ないからパーティーの誰かが付いて依頼を受けていこうとカナには言った。
そして今日。パーティーで初のダンジョン探索に行く。
「準備は良い?」
「待った」
レンの言葉に俺が待ったを掛けた。
「何? 忘れ物?」
「いや、みんな大切なことを決めてない」
「なにそれ?」
カナが怪訝そうに聞く。
「このパーティーのリーダーだ」
俺は胸を張って言った。
「え? バンじゃないの?」
「そうだ。オレ達は入れてもらった身だし」
「私もそう思っていましたが」
レン、ロゼ、アウルムがそれぞれ言うが……。
「え、無理」
オレは即座に否定した。
「だって考えたらさ、俺年下だし、冒険者歴1番浅いし、こんなガキがリーダーとか言われて他の冒険者達に舐められるぞ」
なにより、リーダーなんて大役やりたくない。
俺の言葉に一理あるのか、誰も反論しない。
「と言う訳で、俺とカナ以外でリーダーを決めて欲しい」
「「「……」」」
3人が押し黙る。
リーダーをやりたいのかそうでないのか、3人とも無言で視線を送りながら牽制し合っている。
「……オレはレンがいいと思う」
最初に声を発したのはロゼだった。
「ちょっとロゼ!?」
「レンがこの中で一番引っ張り役だし、リーダーシップもある」
「わ、私も賛成です」
ロゼに便乗してアウルムも賛成した。
「ちょっと!?」
「ならレンがリーダーで」
「「「賛成!」」」
レン以外が賛成を表明した。
「……あーもう分かったわよ! やればいいんでしょ! やれば!」
レンがヤケクソ気味に言った。
「さあ、行くわよ!」
「おう。カナ、留守番よろしく」
「ん。いってらっしゃい」
カナの見送りを受けながら俺達は宿を出た。
◇
「はああああ!」
「やあ!」
アウルムとロゼが先頭に立って、それぞれモンスターを倒す。
バンバンバンバンッ!
俺は後方のモンスターを撃ち倒す。
「ロゼ! 『石壁』で右側のモンスターの進行を押さえて! アウルムとバンは前方に攻撃!」
レンは後方で俺達に指示を出す。
それぞれの役割を決めて連携をとり、モンスターの群れを倒していく。
こうしてダンジョンを探索し、1層の最奥まで辿り着くのにそう掛からなかった。
「順調だったな」
「このパーティーなら当然だろ」
「こら、油断しない」
俺とロゼの軽口をレンが諌める。
「1層は攻略しましたし……2層に行きませんか?」
意外にも、アウルムが2層行きを提案する。
まあ、1層が順調だったから気持ちは分かるが。
「まぁ、物資も多めに持って来たし、行けなくはないけど……」
「オレはいいぞ」
俺とロゼも反対はしなかったが、ここはリーダーのレンに判断してもらおう。
「そうね……なら、行きましょうか」
こうして俺達は2層に続く横穴に足を踏み入れた。
「ここが2層……」
2層は1層と同じ洞窟だが遥かに広く、地面や壁から突き出た岩が所々光を発している。
「見た目1層と変わらないな」
「油断しないの……来たわよ」
レンがモンスターに気付き、前方にクロスボウを構える。
俺達もそれぞれ武器を構える。
前方の影から来たモンスターは、影法師の様な見た目に金色の文字の帯が全身に巻きついているのは変わらないが、身長は2mはあり、額の1本角は大きく前に突き出て、大斧を持っている。
なんだか、雰囲気が『死槍』に似ている。
…………それならやばい!
――ダッ!
モンスターがこっちを見た瞬間、大斧を持ち上げこちらにむかって跳躍した。
しかも速い!
「みなさん下がって! 『鉄壁』!」
アウルムも危機を感じ取り、前に出て盾でモンスターの攻撃を受け止める。
「ぐうううっ!」
モンスターの一撃はかなりのものだったらしく周囲に衝撃波が走り地面が砕け、アウルムの顔が苦痛に歪む。
『鉄壁』を使ってもここまでとはっ!
ドォン!! ドォン!!
驚くが、冷静にリボルバーの銃口をアウルムに攻撃を続けるモンスターに向けてギフトを使い撃つ。
「――シッ」
ロゼもモンスターの後ろに回りこみ槍を突き刺した。
光弾はモンスターの頭を吹き飛ばし、ロゼの槍は胸を貫く。
モンスターはピタリと動きが止まったと思ったら次の瞬間、黒い霧になって消え、黒い大斧と核石だけが残った。
「大丈夫か!?」
「ええ……なんとか……」
ロゼは倒れこんだアウルムに近づいて身体を見ている。遠め見た感じ大きな傷はなさそうだ。
「よかった……にしても、これが2層のモンスターか」
「ええ……しかも、特殊モンスターね」
レンが拳大の核石を持ち上げて言った。
「特殊モンスター?」
「バン、覚えてる? 1層で貴方が戦ったって言った『死槍』の話」
「ああ……アレと同じか」
アレと同じなら、この強さも納得だ。
「特殊モンスターと戦ってこの程度で済んだのは運が良かったわ」
だが、アウルムはギフトの反動の所為か動けず、俺も少しだが消耗している。
「2層で早々に特殊モンスターに出会って運が悪いの間違いじゃないか?」
「……なんとも言えないわね」
「どっちでもいいが、これからどうする?」
ロゼがこちらの会話を聞いていたのか、近づいて聞いてきた。
「アウルムは?」
「ギフトの過剰使用で倒れたみたいだ。回復薬を飲ませたからそのうち動けるようになるだろう」
「そう……」
レンが髪を指で触りながら考え込む。
「……今回はここまでね。引き返しましょう」
「分かった……バンもいいな」
「ああ」
アウルムはしばらく動けないだろうし、反対しない。
「ならアウルムが動ける様になるまで休憩。その後地上に帰るわよ」
その後、交代しながら見張りと休憩をしてアウルムが回復するのを待つ。
今は俺とレンが周囲を見張っている。
見張り途中、モンスターが襲ってきた。見た目は1層のモンスターが少し成長した姿だ。
「これが2層のモンスターか」
――ヒュン!
横から矢が射られて、モンスターの輪郭のない顔に刺さり、黒い霧になって消えた。
「ボーっとしないの」
レンが注意しながら矢を回収し、鏃を確認して矢筒に戻した。
レンが拾った核石は1層のより1回り大きい。
「ただ観察していただけだ」
「いや、倒しなさいよ」
一応反論したが一蹴された。
「……なあ、モンスターってなんだろう?」
ふと、疑問に思った事を口にする。
「はあ? モンスターはモンスターでしょ?」
「そうなんだけど、何処から来て、なんで人を襲うのかなって。モンスターを生み出しているダンジョンも何かなってふと思ったんだ」
考えたらモンスターの事もダンジョンの事も何も知らない。
「……そうね。言われたら私も知らないわ。研究している組織はあるけど」
「へえー」
レンもよく知らないなら、あまり研究は進んでないんだろうな。
「とある教会ではダンジョンは神が創った試練の場とか言ってるけど」
「教会?」
「知らない? 『ギフト教』って言うイカれた宗教よ」
イカれたって、どんな宗教だよ。
「なんでもギフトは神に選ばれた者が持ち、神の為に使うべきだとか、ダンジョンはギフト持ちを天使にする試練だって言ってんのよ」
「……なにそれ?」
天使って何? 言ってることがさっぱり解らん。
「さあ? だからイカれているって言ってんのよ。あいつら、ギフト持ち以外は見下してるし」
「うへー」
レンの蔑みの声と話を聞く限り、関わりたくない宗教だな。
「そんな宗教でも一定の支持があるんだ。困ったことにな」
会話が聞こえていたか。言いながらロゼがこちらに近づく。
「アウルムが回復した。歩く分は問題ないそうだ」
ロゼの後ろで、アウルムが立ち上がりこちらに歩いてくる。
「……すみません。私のせいで探索が出来なくて」
「謝ることはないわ。あなたがいなかったらもっと被害があったわよ」
「ああ。助かった」
「でも…」
レンとロゼの言葉でも、気になっているみたいだ。
「今回はしょうがないよ。それに思わぬ収穫もあったし万々歳だ」
大斧と核石が入っているレンの背嚢を見つめる。
「俺が『死槍』から出た槍を売った時は金貨500枚だったし、大斧もその位するんじゃない?」
「「「金貨500枚!?」」」
俺の話に全員驚いていた。
「あ、ああ。カナに見てもらった槍は性能もよかったし、大斧も見てもらおう」
「そういえば、カナちゃんはそういうギフト持ってましたね」
アウルムが思い出して呟く。
「え、なにそれ? 聞いてないけどどういう事?」
レンが詰め寄って俺に問いただしてくる。
あれ? 言ってなかったっけ?
「まあ、詳しくは帰ってからで」
「……それで良いわ。ただし、詳しく聞かせてもらうからね」
「はい……」
レンが一応納得してくれて、俺から離れた。
「おい、そろそろ行こうぜ!」
ロゼがワクワクしながら帰ろうする。金貨500枚の話が余程嬉しかった様だ。
「はいはい……帰りましょ」
2層の探索はできなかったが成果はあった。
今回はそんな結果でダンジョン探索を終えて地上に戻った。
次回「それぞれの事情」




