10話 結成
翌日。
俺とアウルムはダンジョンに入り、早速モンスターの襲撃を受けた。
「はああああっ!」
アウルムの鋭い一閃がモンスターを切り裂く。
モンスターは黒い霧になり、核石だけが残った。
「おー」
無駄のない動きに鮮やかな一撃。初心者とは思えない動きを見て思わず拍手した。
「ど、どうも……」
アウルムは照れて顔を赤くしていた。普段と戦闘中のギャップがすごいな。
「進もう」
核石を回収して、アウルムを促す。
陣形は昨日の話し合いで『鉄壁』のギフトを持つアウルムがタンクになって、後方で俺が倒す段取りになった。
バンッ! バンッ!
俺も負けじと前方に現れたモンスターを撃ち倒す。
「流石です」
「リボルバーが強いからな」
アウルムの褒め言葉に俺は言った。
俺自身強くないと自負している。ギフトはあっても腕力は無いし、ナイフ以外の他の武器も使えない。リボルバーがなければ唯の子供だ。
「それでも、その武器を使いこなせているのはバンの実力です。もっと自分に自信を持っていいのでは?」
「……そうかな?」
「そうですよ」
「……そうか。ありがと」
そう言われて納得することにした。
「ほら、また来ましたよ!」
「ああ!」
バンバンバンバンバンバンッ!
次々と現れるモンスター達に向けて撃つ。
しかしまだまだ現れ、こっちに群がってくる。
「リロード!」
「はい!」
俺の声に反応して俺の前にアウルムが出る。
「『鉄壁』!」
ギフトを使いモンスター達の攻撃を耐えるアウルムを盾にしてリロード。
これも事前に話し合って決めた事だ。
「完了!」
リロードを数秒で終わらせて報告。アウルムと攻勢にでる。
「はあああっ!」
アウルムはモンスターに盾でタックルして体勢を崩し、剣で刺す。
バンバンバンバンッ!
俺は後ろのモンスターに向けて撃ち続け、モンスターは次第に数を減らしていき、やがていなくなった。
「ふぅ、やっと終わったか」
「……みたいですね」
リロードしながら呟くと、周囲を警戒していたアウルムが返事した。
その声には疲労が滲みでている。俺も少し疲れた。
「核石拾ったら休憩しません?」
「賛成。再出現まで間があるだろうし」
アウルムの提案に賛成して、周囲に散らばった核石を回収して壁を背に座る。
「これ、どうぞ」
「ありがとう」
アウルムが背嚢から取り出した板チョコを貰う。
齧るとチョコの甘さが口に広がる。
「ああ〜、疲れた体に効く〜」
「おじさんみたいですよ。はい、お茶です」
「どうも」
笑いながらアウルムに突っ込まれるが、気にしない。
お茶をもらいを喉を潤す。
「この調子なら1層は楽勝だな」
「油断禁物です」
「はい」
なんだか、アウルムが保護者になってきた感じになってきたな。
「しかし今日はモンスターが多いな」
「大手のギルドは深層に行ったので、浅い階層はあまり人がいないのでしょう」
「そうなもんかね」
「殆どの冒険者はギルドに入って2層からの探索が基本ですから」
なるほどね。大人数だから2層でも怖くないってか。で、1層を探索しているのがギルドにも入ってない少人数か初心者という訳か。
「やっぱり2人で2層攻略は無理かな?」
「無理とは言いませんけど、困難でしょうね」
だよなぁ。
しかし俺の目的はダンジョンの攻略だ。1層でモタモタしている訳にはいかない。
「やっぱりギルドかなぁ……」
「とりあえず今を考えましょう……あっちから来ました」
アウルムに言われて振り向くと、俺も影からモンスターが這い出てくるのが見えた。
「休憩は終わりか」
俺は立ち上がり、リボルバーを抜いて銃口をモンスターに向けて構えた。
◇
「帰ってきたよ」
「おつかれ」
俺達は1層をあらかた探索し、地上に戻り協会で核石を換金して山分けした後に、宿に戻り手伝いをしていたカナの出迎えを受けた。
「どうだった?」
「ぼちぼちだな」
核石はそこそこにはなったが、そこまで高くはない。
今後の生活も考えると、やっぱり1層だけじゃ限界があるな。
「そうじゃなくて……パーティーのほう」
「…………あ」
そうだった。カナに言われるまで忘れてた。
アウルムの方を振り向くと不安そうにこっちを見ている。
「ええと……」
……そうだな。思ったことを口にしよう。
「今回の探索は連携は取れてたし、気が利くし、周囲の警戒も助かった。できるなら俺はこのままパーティーを組んでほしいけど……どうかな?」
「…………いいんですか?」
「うん」
「いいとおもう」
何故かカナからの許可も出た。
「――はい! これからよろしくお願いします! バン、カナちゃん!」
アウラムは見惚れそうな笑顔で俺達に挨拶した。
そして、パーティー結成と探索成功を記念して、カナも混じって3人で食堂で打ち上げをする事になった。
机には大量の料理と、俺とカナはジュースだか、アウルムは果実酒を頼んでいる。
「ゴクゴクゴク……ぷはーっ!」
カナ、一気飲みがおっさんくさいぞ。
「まったく……ほら、食べな」
俺は大皿に盛られた料理を取り分けてカナに渡す。
「ありがと」
「ふふふ、仲良いんですね」
俺とカナのやり取りを見て、アウルムが微笑む。
「ん。わたしたちは家族だから」
……家族か。カナが俺達の関係をそう思っていたなんて。なんかジーンときた。
俺がそんな風に感動していると、
「でも、わたしバンになにもできないし、迷惑かけてる」
カナが落ち込みながら心情を吐露する。
そんなこと思っていたなんて……。
「カナはまだ子供だし、十分助けてもらっているよ。あと、家族だから迷惑掛けてもいいんだ」
「でも…よく食べるし」
大食いの自覚はあったのね。
カナが不安げに俺を見る。何もせずにいるのに負い目を感じているみたいだ。気にしなくていいのに。
「カナちゃん。それならワーカーになりませんか?」
カナの感情を察したアウルムがカナに提案した。
ワーカー?
「なにそれ?」
「簡単にいうなら便利屋です。ダンジョンに入るには冒険者になる必要がありますが、ワーカーなら協会に登録するだけでいいです」
便利屋ねぇ。
「具体的にはどんな事するんだ?」
子供のカナに危険な事はさせられない。
「協会に依頼される仕事をやるので様々ですが、町人の手伝いや薬草の採取等があります」
採取か……カナのギフトが役に立ちそうだ。
「カナ、やってみたら?」
「……いいの?」
「もちろん。ダンジョン探索しない時は俺も手伝うよ」
「――うん! やってみる!」
カナが元気よく言った。これでカナの不安も解消されるだろう。
「なら明日協会に行って登録しよう」
「ならこれで、パーティーが3人になりましたね」
そうか、カナも協会に登録するから同じパーティーになるな。
「それじゃあ、新しいパーティー結成を祝って――」
乾杯! と言おうとした時、
「ちょっと待ってー!」
食堂の入り口から、どこかで聞いた声で遮られた。
振り向くと、見慣れた2人。
「レンにロゼ?」
以前パーティーを組んだ2人だった。
「知り合い?」
「ああ。この前一緒に探索した」
カナの質問に答える。
なぜ2人がここに?
「あのーどのようなご用件で?」
「――お願い! 私達もパーティーに入れて!」
「…………はい?」
レンから、まさかのパーティー加入のお願いだった。
「……とりあえず、2人とも席に座って」
長話になりそうだし、席に勧める。
「失礼するわ……すみません! 果実酒を2つ!」
「はーい!」
従業員が果実酒を持ってきて、レンが一気に飲む。
「レン、ロゼ。カナとアウルムだ。3人でパーティーを組んだんだ」
レンとロゼに仲間を紹介する。
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします……」
アウルムがコミュ症を発動していたが、まあそのうち慣れるだろう。
「レンよ……よろしくね」
「ロゼだ」
「それでパーティーの話だけど、4人でパーティーを組んでるって言ってなかった?」
俺は会ってないけど、あと2人いるはずだが?
「ええと……それがね」
レンがなんか話にくそうに、人指し指をつんつんしている。
「オレから説明しよう」
レンが話すのを遮ってロゼが話をする。
内容はこうだ。
2人がレンをパーティー追放通告をしたらしい。
理由は戦いもせずに、後ろから指示ばかりしてうんざりしたからと、レン以外にギルドからスカウトが来たから。
それを聞いたロゼはブチキレて、ならオレも出て行くと言ってレンと一緒にパーティーを抜けた。
「レンとは幼馴染だからな。それにレンのギフトはダンジョン探索に役立つし、指示も的確だった。それを追放なんてムカついたんだ」
ロゼが憤然と果実酒を飲みながら話をする。
「ごめんね……ロゼもギルドに入ったらよかったのに」
「気にするな。話を続けるぞ」
2人を受け入れるギルドのコネもないし、他のパーティーの当てもない。
それで単独でやっていた俺に頼むことにして探し回ったらしい。
「で、今に至ると」
「そう。それで……お願い!」
「頼む!」
レンとロゼが頭を下げてお願いする。
2人とは一緒に探索した仲だし、戦力にもなる。連携もとれてたからパーティーに迎えたいが・・・。
「俺は賛成だけど、カナとアウルムは?」
「ん。いいよ」
「わ、私も……」
よかった。カナとアウルムは賛成してくれた。
「本当!? ありがとう!」
「助かる!」
2人も心底ホッとした様子で胸をなでおろした。
「それじゃあ、親交を深めながら宴会としゃれ込むか」
「さんせい」
「それじゃあ――乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
こうして、新たなパーティーを結成して夜が更けるまで宴会をした。
次回「2層」




