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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
2章 ダンジョン都市と仲間
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7話 ロガーティア武具店

「ここか」


 ベアトリクスから貰った地図を見ながら進み、『ロガーティア武具店』に着いた。


 隣のキラキラしたデカイ建物に比べてこじんまりとして、外見はよく言えば風情があり、悪く言えばボロい。


 ……ベアトリクスの紹介とはいえ大丈夫だろうか?


「……とりあえず入ってみるか」


 扉を開けて入ると、剣等の武器類に防具、薬品など色々雑多に置いてある。


 雑貨店も兼ねた店みたいだ。


「おや、いらっしゃい」


 店の奥のカウンターに武具屋には不釣合いな少女がいた。


 歳はカナと同じか少し上。長い銀髪をうなじで赤いリボンでまとめ、大きな釣り目の翠眼。カナがかわいい形ならこっちは綺麗形の整った顔立ちだ。


 だが一番目を引いたのは先のとがった長い耳と……なぜかバニーガールに白衣を纏っていた。


「ふむ、どうしたんじゃ?」


 俺が少女の格好を見て固まっていると、鈴のような綺麗な声なのに年寄りの口調でしゃべりかけてきた。


「いや、なんでも……」

「そうか…紹介が遅れたのぅ。ワシはここの店主のロガーティアじゃ。ティアと呼んでくれ」

「え!?」


 この少女が店主!?


「驚いてるのぅ、見た目は幼いが見ての通りエルフじゃ。お主よりずーっと年上じゃよ」


 おお、ファンタジーで定番のエルフか! 


「なんさいなの?」

「カナ?」


 俺が驚いている間にカナがティアに質問した。この子たまに物怖じしないよな。


「ふうむ。500歳は超えとると思うんじゃが……正確な年齢は忘れたわい!」


 ティアはカナの質問に怒ることなく快活に笑い答えてくれた。


 まさかの500歳超え。さすがエルフ。


「それより、そろそろおぬし達の事を聞きたいのじゃが? あ、敬語はいらぬぞ」

「あ、ああ。俺はバン。この子はカナ。ベアトリクスの紹介で来た」

「ほお、あの娘がのぅ」


 ティアはカウンターから出て俺の前に立った。


「それで、何が欲しいんじゃ?」


 俺を見上げて楽しそうに笑って聞いてきた。


「その前に、質問いいか?」

「ん? なんじゃ?」


 ティアは首を傾げて聞く。


「なんでバニガールで白衣なの? ここ武具屋だよな」

「なんじゃ、そんなことか」


 ティアが一歩下がってくるりと一回転。


「どうじゃ? かわいいじゃろ?」

「まあかわいいけど」

「反応薄いのぅ……ほれ、隣に大きな建物があるじゃろ?」

「ああ、あのキラキラした」

「うむ。あそこはカジノでの。ワシの店はご覧の通り閑古鳥が鳴く状態じゃ。じゃからそこで働いておる。まあ、ワシが可愛い格好が好きなのも理由じゃが」


 ……大丈夫なのか? この店。


「で、白衣のほうじゃが、こう見えてもワシ、加工師なんじゃ」


 加工師?


「なにそれ?」

「ぬ、加工師を知らぬのか? 加工師は核石を加工する技術者の事じゃ」

「へー。どうやるんだ?」

「核石を用途に応じて彫るんじゃ。回路と呼ばれておる。常識なんじゃが」


 そうなんだ。


「核石は回路の刻み方で効果が変わる。ワシはその研究もしておるのじゃ」

「すごいじゃないか」

「お主もそう思うか!? なのに上はワシに研究をさせてくれん!」

「なんでまた?」


 まさか、政治絡みとか、技術の独占を恐れたとか?


「ふん、たかが建物を2、3軒吹き飛ばしただけで研究の中止じゃ!」


 あ、納得。……この人マッドサイエンティストの類だ。


 なんとなく、ベアトリクスの歯切れの悪い理由が分かった。


「おかげで核石を自前で調達。店もこの有様。常時金欠よ」


 それでカジノで働いてたのね。


「わたしもいい?」


 カナがまたティアに質問した。


「なんじゃ娘っ子」

「なんで男の人なのにバニーガールなの?」


 …………え?


「なんじゃ、ばれとったか」

「ん」

「おおお男なの!!?」


 見た目少女なのに!?


 ティアを頭からつま先まで何度も視線を往復する。


 すると一箇所、股間の膨らみに違和感が……マジで男?!


「初見でワシが男だと見破ったのは娘が初めてじゃ! ……どれ、特別にサービスしてやろう。何が欲しいんじゃ?」


 呆気に取られていた俺にティアが尋ねて、やっと我に返った。


「あ、ああ。防具が欲しいんだが、できれば軽いやつで」

「ふむ…待っとれ」


 そう言ってティアは防具が置いてある棚に向かった。


「んーこれかのぅ……いや、こっちが売りつけやすいか?」


 ティアの独り言が聞こえて、なんか不安になってきた。


「待たせたの」


 ティアが持ってきたのは鎧の様な防具ではなく、黒い服と赤いジャケットだった。


 服は長袖Tシャツとズボン。ジャケットはフード付きで首が襟で隠れるようになっている。


「服じゃん」

「いやいや、一見ただの服じゃが、服は対衝撃に防刃、ジャケットは防火、防寒性が高く、両方ヘタな鎧より丈夫じゃよ」

「本当?」

「本当じゃよ。なんとこの服はブラックスパイダーの糸、ジャケットはレッドウルフの毛皮が使われているのじゃ」


 いや、ブラックスパイダーもレッドウルフも知らない。


「バン、ほんとう」


 俺の裾を引っ張って、カナがギフトを使ったのか教えてくれた。


 カナのお墨付きなら鎧より動きやすそうだし、これでいいかな。


「分かった。これ幾ら?」

「金貨200枚じゃ」


 高っ!


「これでもサービスしておるんじゃ。これ以上は下げれんぞ」

「うーん……」


 欲しい欲しくないといったら……欲しい。でもなぁ。


「分かった分かった。ついでにこれも付けてやるわい」


 俺の心情を察してか、ティアが持ってきたのは手袋だった。


 手袋は指ぬきの革製で、手の甲に金属板が付いている。


「このグローブも頑丈さは折り紙つきで、冒険者から愛用されとるぞ」


 カナのほうをちらりと見ると、俺を見てコクンと頷いた。本当らしい。


「分かった。買うよ」

「おお毎度!」

「金は今から協会に行って来るから待ってくれ」

「それなら、こっちに来るのじゃ」


 ティアはカウンターに連れて行き、小切手みたいのに金額を記入し、こちらに差し出す。


「ここにサインと、親指を押すのじゃ」


 言われた通りにサインと母印を押す。


「確かに。金は後でワシが協会で受け取るわい」

「分かった」

「ほれ、商品じゃ……あっちに試着室があるから着てみぃ」


 試着室に入って、受け取った服とジャケットを着てみる。


 少しブカブカだが着心地は良く、動きやすい。


 グローブも見た目より軽く手にフィットして、指を開閉しても動きの邪魔にはならなかった。


「にあってるよ」


 試着室から出た俺を見てカナが感想を言ってくれた。


「ありがとう」

「それにしても金貨200枚をポンと出すとはの……冒険者になって日が浅いじゃろうに」

「たまたま遺物を見つけて高値で売れただけだ」


 探るような目で見られるが、やましいことも無いので正直に答えた。


「なるほど。ダンジョン探索において実力もじゃが運も重要じゃ。おぬしには才能がある証拠じゃ」

「どうも」

「そんなお主にお勧めがあるんじゃが、これなんかどうじゃ?」


 褒めてきたと思ったら次は売り込みを始めた。上客と思われたみたいだ。


 その後、足の甲に金属が入った革製ブーツに回復薬、保存食を追加で購入した。


 財布が軽くなったが、悪くない買い物だった。


「今後も『ロガーティア武具店』をご贔屓に」

「贔屓って言うけど、カジノで働いてるんだろ? 店開いてんの?」

「営業時間は朝9時から昼3時までじゃ。用があるなら夜カジノに来れば会えるぞ」

「ふーん」

「別に用が無くても来てもいいぞ? お主は気に入った。さすがベアトリクスが寄越しただけある」


 そう言って舌なめずりして俺に言い寄ってくる。


 その瞬間、背中に悪寒が走った。


「なんなら今夜でも来るか? 大人のサービスもするぞ?」

「遠慮する! アンタそっちの気があるのか?!」

「ワシ、両方いけるのじゃ!」


 余計たちが悪い。


「ま、気が向いたら来るがいい。待っとるぞ」

「……そのうちな」


 最低限来ない様にしよう。俺の貞操が危ない。


 そう誓い店を出た。

次回「パーティー」

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