3話 冒険者
「ははは! いやー負けた負けた!!」
試験が終了した後、傷が塞がって見る見る治りベアトリクスは立ち上がった。
「すごいギフトですね」
「ああ。この『再生』のおかげで何度も生き延びたよ。……しかし剣を砕いたアレ、ギフトだろ? バンがギフト持ちだったとはな。男のギフト持ちに会うのは初めてだ!」
やっぱり俺、そんなに珍しいのか。
「さて、試験は合格だが……これから冒険者になるお前に先輩として、いくつかアドバイスしたいことがある」
「なんですか?」
「殺す時は躊躇するなよ」
「え?」
「ためらいはお前を殺すことになる。モンスターでも、人でもな。覚えておけ」
「……はい」
「あと、地形を把握してうまく立ち回れ。それさえ意識できれば、お前ならやっていけるさ」
「分かりました。ありがとうございます」
「最後に私に敬語はいらないよ」
「……いいんですか?」
「ああ。私より強いからな」
そんな理由?
「分かり……分かった」
「私からは以上だ。さてと……おーい! カルラ!」
「はい!」
受付嬢――名前はカルラと言うらしい――がベアトリクスに呼ばれて近づいた。
「合格だ。バンに登録手続きをしてやってくれ」
「分かりました。バンさん、歩けますか?」
「はい。大丈夫です」
「それじゃあ、私に付いて来てください」
「はい、わか――」
「バン!」
「ぐへぇ!」
ベアトリクスと別れて、カルラに案内される時、疲れて油断していた俺は走ってきたカナに飛び付かれてカナ共々転倒した。
「バン! 大丈夫!? 怪我ない!?」
「だ、大丈夫……」
「よかった! ……試験は?」
「合格したよ……そろそろどいてくれないか?」
「あ……ごめん」
「ふふふ。仲のいい兄妹ですね。さあ、こちらへどうぞ」
カナが謝って俺の上から退のをカルラは笑って見た後、受付に案内した。
「少々長くなりますが、ご時間は大丈夫ですか?」
「はい……カナ、時間掛かりそうだから先に宿に帰ってるか? もう昼だけど」
「いい。まってる」
――ぐうぅぅぅぅと、カナのお腹の鳴る音が聞こえた。
「……まってる」
「そうか。……あそこの酒場で食事できますか?」
「はい。あそこは食堂も兼ねているのできますよ」
「カナ。……このお金で昼飯食べてくる?」
俺は財布から大銅貨を5枚出してカナに渡した。
「いいの!? 行ってくる!」
そう言ってカナは勢いよく走って昼飯を食べに行った。
……自分で言っといてなんだけど、俺より飯なのね。なんか悲しい。
「それじゃあ、説明お願いします」
「はい。では改めて、合格おめでとうございます。私は貴方の担当をするカルラといいます」
「バンです。よろしくお願いします」
「では、この書類に記入をお願いします。書けないなら代筆しますが」
「大丈夫です」
カルラに渡された書類に記入していく。書く文字は異世界の文字になって意味が分かる。便利だ。
名前はバン。年齢は15でいいか。出身地はわからんので未記入。あとギフトの有り無しは有に丸を書いてっと。
「はい。これでいいですか?」
「拝見します……大丈夫です。本当にギフト持ちなんですね」
……やっぱりギフト持ちに突っ込まれた。
「男のギフト持ちは珍しいですか?」
「そうですね。私が知る限り誰もいません」
「でも、男の冒険者の人もいますよね」
「ギフトが無くても冒険者にはなれますよ。ただ、ダンジョンは危険なので自然とギフト持ちの方が多くなった感じで……あと、これに親指を置いてください」
カルラは親指大の銅色の金属板を俺に差し出されたので、言われた通りに親指を置く。
「はい、結構です。少々お待ちください」
カルラは俺が書いた書類と金属板をタイプライターの様な機械にセットして何かを打ち込んでいく。
打ち込みが終わると、機械から銀色の金属板が出てきた。
金属板は鎖で繋がれて、見た目ドッグタグに近い。
「これが会員証です。これがあればダンジョンに入れます」
渡された会員証には俺の名前が記入されていた。
「会員証は紛失したら再発行で銀貨3枚頂きます。あと、偽装したり他人の会員証を使ったら犯罪になります」
「そうですか……見た目簡単に偽装できそうですけど」
「特殊な処理が施されていますので、簡単にわかりますよ」
「そうなんですね」
見た目はただの金属板なのにな。
「次は協会のご利用についてご説明いたします。協会で行えるのは施設の利用、依頼、財宝や遺物、核石の査定、換金を行います」
遺物? 核石?
「遺物と核石ってなんですか?」
「遺物はダンジョンで稀に見つかる物です。遺物は現在の技術では再現不可能なものが多く、遺物によっては高額で取引される事もあります。有名なのは『ダンジョンウエポン』と呼ばれる武器類ですね」
ダンジョンウエポン……見つけたら役立ちそうだな。
「核石はダンジョンのモンスターを討伐すると出てくる物です。一応他でも採れますが、モンスターから出た核石は質がいいんです。核石が大きいほど強力なモンスターになりますが、査定額は大きくなります」
モンスターの事はカナから聞いていたが、体内にそんなのがあるんだ。
「核石はなぜ換金を?」
「核石は加工すると様々な物質に反応する性質があります。例えば水をかけると氷になったり、熱を持ったりします。核石は今は生活に欠かせない物なんです」
なるほど、核石は電気やガスみたいなものか。それで蒸気機関が導入されているんだな。
「依頼は護衛や採取等、様々な依頼が協会を通してきます。依頼ボードに張り出されていますので、受ける際は依頼書を持ってきてください」
ここら辺は冒険者らしい内容だな。
「最後にギルドについてです」
ギルド? 協会となにか違うのか?
「ギルドは冒険者同士が組んで作られる組織です。ダンジョンは危険ですから1人で潜ることはお勧めしません。最初はパーティだったのが段々増えてやがてギルドと呼ばれるものになりました。ギルド加入は個人の自由ですが、結成時は申請をお願いします。ギルド結成は10人以上から出来ます」
「申請が要るんですか?」
「はい、冒険者の管理も協会の仕事なので」
管理……森で会った野盗はもしかしたら元は冒険者だったのかも。やっぱ、ならず者とかがいるんかね。
「説明は以上になります。何かご質問はありますか?」
「ひとつだけ……ダンジョンは何処から入れますか?」
「ダンジョンは東の城門を出て道なりに歩くと大きな建造物があります。その中にありますよ」
「分かりました」
「最後に一つだけ、冒険者は命が第一です。無理をしない様にして下さいね。まだ子供なんですから」
「……肝に銘じます」
カルラの説明を終えて席を立ち、俺も昼飯を食おうとカナの元に向かう。
……カナのテーブルには何枚も皿が重ねられていて、今も分厚いステーキを頬張っていた。
この子、最近大食いキャラになって来たな。
「カナ」
「モグ?」
「……食べ終わってからでいいよ」
「モグモグモグ…終わった?」
「ああ。それで俺も昼飯を食べようと思ったけど…何が美味しかった?」
「んー、このピラフとハンバーグとパスタとグラタン」
カナはメニュー表を指差して教えてくれた。
……そう。色々いっぱい食べたのね。
「なら、ピラフとハンバーグ頼もうかな」
「ん、わたしもおかわり」
「あ、はい」
まだ食べるのね。
俺とカナはこうして昼飯を食べて、協会を出た。
さあて、ダンジョンに潜って稼ぐぞ。俺の記憶とカナの食費の為にも。
こうして俺は冒険者としての第一歩を踏み出したのだった。
次回「ダンジョン」




