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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
1章 始まりと出会い
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1話 記憶喪失

 発投稿です。拙い作品ですが暖かい眼で見てくれると助かります。

「……ここ、どこ?」


 気が付いたら、辺りが鬱蒼とした森の中で、日差しが差し込む開けた場所にいた。周囲を見回すがどこを見ても大きい葉っぱが生い茂った木々しか見当たらない。


 呆然としたまま空を仰ぎ見る。


 ……雲ひとつ無い青空には、うっすらと大きい月の周りを2つの小さい月が浮かんでいるのが見えた。


 地球ではありえない光景。どうやら、ここは異世界みたいだ。


「ええと……俺、なにしてたんだっけ?」


 此処に来る直前の事を思い出そうとするが、


「……思い出せない」


 何一つ思い出せなかった。それどころか――


「俺は誰だ?」


 記憶どころか、名前すら思い出せなかった。


 どうやら、記憶喪失というものらしい。


 記憶喪失と言っても、ここが異世界だということは分かる。知識というより、自身に関する事がすっぽりと頭から抜け落ちてるみたいだ。


 しかし異世界にいる事、記憶が無いのをすんなりと受け入れている冷静な状態の自分がいる。


「……よくわからん」


 とりあえず、何か思い出せることが無いかと自分の手を見たり体をぺたぺた触ってみた。


 目線や体つき、手の大きさや肌の感じからだと、10代半ば位か?


 服装は灰色の長袖シャツの上に深緑色の上半身を覆う長さのフード付き外套、黒色のズボン、頑丈そうな革製のブーツ。


 ズボンのポケットには巾着袋が入っており、開けてみると金や銀、胴色の硬貨らしきものが数十枚入っていた。

 

 足元には大きいズタ袋。中身は水が入った金属製の水筒に紙で包まれたビスケットに似た食べ物、食用油のロゴが書かれた(見たことない文字なのに何故か読める)瓶に塩が入った袋、小さなフライパンと飯盒に皿やフォークの食器類、替えの服と下着、タオル、毛布、ロープ、マッチ箱、ランタン、そしてナイフ。


 ナイフを抜いて見ると長さが20センチ程の刀身は鏡のように磨かれており、刀身にはまだ幼さが残った黒髪黒目の少年の顔が映っていた。


 自分の頬をペタペタと手で触ると、ナイフに映された顔も同じく頬をペタペタと触っていた。


 これは俺の顔か。自分の顔だがなんかピンとこないな。見た目は悪くないが。


 最後に、腰に巻かれた革製のベルトには小さな薬瓶(回復薬と書かれている)が5つ入った雑嚢とあと……拳銃が収められたホルスターと手のひらサイズの弾薬ポーチが着いていた。




 ホルスターから拳銃を抜いて見る。拳銃は薬室が回転式弾層になっているリボルバーと呼ばれるものだった。


 薄暗い森の中でも鈍く光る白銀の大型リボルバーはズッシリと重みがあり、どう見てもエアガンやモデルガンには見えない。


 特徴は銃身の位置がシリンダー上方前部と直列となる位置じゃなく下方前部と直列になる低位置に設けられてる構造をしている。


 この構造はバレルの軸線とグリップ時の手との高低差が少なくなり、射撃時のマズルジャンプを軽減させ、命中精度の向上が期待出来るらしい。


 口径は38口径で装弾数は8発。


 このリボルバーは壊れることは無いし、火薬の燃えカスによる汚れ等も付かない。更に無くしても手元に戻ってくる。

銃弾は先端が平らになっていて、スピードローダーに装填され弾薬ポーチに収められており、銃弾は使う度にどういう仕組みか、スピードローダーに装填された状態で弾薬ポーチに補充される。……なんでこんな事覚えているのかは知らないが。


 とりあえず、自分の状況は把握できた。


 ここが異世界だろうが移動しないと始まらない。とりあえず歩くか。


「……その前に」


 自分の身を守れる唯一の武器、手に持ったままのリボリバーを見る。


「試し撃ちしてみよう」


 リボルバーのシリンダーをスイングアウト。スピードローダーで銃弾を装填し、撃鉄を引き準備完了。

 近くの木に照準を定めて両手で構え、引き金を引く。


 バンッ!


 耳に響く破裂音と同時に撃った時の反動が腕にきて、撃った後には肘を曲げていて銃口が上を向いていた。


 どうやら無意識に肘を曲げて反動を逃がしていたらしい。


 撃った先を確認すると、狙い通りに木に小さな穴が開いていた。


 とりあえずは命中できた。次はダブルアクションで7連射。


 バンッ! バンッ !バンバンッ! バンバンバンッ!


 弾丸は最初に撃たれた弾痕のすぐ近くに全弾命中した。


 うん、これなら扱えそうだ。


 シリンダーを再びスイングアウト。シリンダーの軸に付いているエジェクターロッドで空薬莢を排莢。空薬莢はカランカランと音を立てて地面を数度バウンドして転がっていった後、光の粒子になって消えた。


 それを横目に見つつ弾薬ポーチからスピードローダーを取り出してリロード。スピードローダーも装填後に空薬莢と同じように光の粒子になって手から消えたのを見た後、リボルバーをホルスターに収めた。


「さて、どの方向にいくか」


 地図はおろか、コンパスもない状況でどの方向に進めばいいかわかる筈もない。所謂遭難状態だ。


 どうしようかと思案していると……近くに木の棒を見つけた。


「こういう時は運任せだ」


 木の棒を拾い、地面に立てて手を離すと、木の棒はあさっての方向に向かって倒れた。


「こっちだな」


 俺は木の棒が倒れた方向に向かって歩き始めた。


 ◇


 それから俺は森の中を2時間位歩いただろうか。


 俺はズタ袋から水筒を取り出し、喉を潤す。


 うん、ぬるいがうまい。


 しかし休み無く歩いているが、疲れはあまりない。


 体力は見た目以上にあるようだ。


 そうして歩いていると、遠くから水が流れる音が聞こえてきた。


「お、川か?」


 音が流れる方に向かうと木々が開け、その先に思った通り石と岩がゴロゴロある川辺があった。


 水を手で掬うとけっこう冷たく、飲めそうな位に綺麗だ。


 空を見上げると日が傾き始めている。もうすぐ夕方になるだろう。今日はここで野宿だ。


 そうと決めたら野営の準備だ。


 川から少し離れた場所に丁度いい平地があったのでそこに手ごろな石を持って行き円状に並べ、森から枯れ木を拾って入れ、数本はナイフで薄く削り重ねて羽毛の様にしていく。こうすれば着火剤になり燃えやすくなる。あとはマッチで火を着けて焚き火の完成だ。


 次に飯盒に水を汲んで焚き火で沸騰させて煮沸消毒してから水筒に移す。


「にしても、こんなサバイバル知識なんで知ってんだろう?」


 まぁ、助かってるからいいけど。


 火と飲み水ができたら後は食事だ。


 ズタ袋から食べ物を取り出そうとした時、森の方からがさがさと音が聞こえた。しかも音はだんだんと大きくなっていく。


 ――近づいてきている。


「――っ!」


 とっさにホルスターからリボルバーを抜き、音のする方に両手で構える。


 その瞬間、俺の10m程離れた木々からウサギが飛び出してきた。


 ウサギといっても俺が知っているウサギじゃない。


 だって大型犬並みにデカイし、凶暴そうな顔つきだし、何より長い牙なんて生えていない。


 本当に異世界なんだなぁ、なんて事場違いな事を考えながらも、体の方は勝手に動いており突進してくるウサギに照準を合わせ3発発砲。


 バンバンバンッ!


 弾丸はウサギの頭、右目、前脚に当たり、貫通して弾丸が体から出た。


「ギッ!」


 ウサギが呻き声を出して、突進してくる勢いがだんだん落ちていき、俺の2~3m手前で倒れた。


「――ふぅ」


 どうやら、無事にしとめた様だ。


 しかし生き物を殺しても何も感じないな。こういうことに慣れていたのだろうか? サバイバル知識といい、記憶喪失前の俺は何をしていたんだろうか。


 そんなことを考えながらリボルバーを構えて銃口をウサギに向けながら、ゆっくりと近づく。


 近づいてもウサギはピクリとも動かない。ちゃんと絶命しているな。


「さて、どうしようか」


 食えるかな? このウサギ。


 そう思案している時、ウサギが来た方向からがさがさっと音が聞こえた。


 振り向きながらリボルバーを構えると、木の陰に隠れるように人――子供がいた。


 まだ10歳位だろうか。腰まで伸びた金髪、小さな体にスラリとした手足、小さな顔にぱっちり開いた翠色の瞳の可愛い顔をした少女だ。


 しかし可愛い顔や髪はあちこち汚れ、服と靴はかろうじて着れている程ボロボロだ。まさに遭難してあちこち彷徨っているみたいだった。


 木の陰から少女の瞳はじっと俺……いや仕留めたばかりのウサギをガン見ていた。


 ――ぐうぅぅぅぅ


 少女の方からか、お腹が鳴るような音が聞こえた。


「ええと……食べれる? てか、言葉わかるか?」

「……うん」


 俺は銃口を下げてウサギを指差して呼びかけたら、少女はかすかな声で返事をした。


 よかった。言葉は通じるようだ。

次回「少女」

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