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エピローグ

 その夜、ライモーが予想した通り、ロワーズ邸にアルバートは帰ってきた。サ・ジャラとグロッド、それにローセアも一緒であった。彼等は皆既にクリスタルがユーグに採用されたことを知っており、食堂で祝いの席を設けてくれた。

「何で広報」

 ローセアはそれだけが若干不満そうであった。皆、入隊後の配属先も既に決まっていることまで知っていた。こんなに知られていて大丈夫なのかと、ライモーが怒られるのではないかと、クリスタルは少しだけ心配になった。

 祝いの席の途中で、エリサとハンスもやって来た。そして、エリサはローセアからクリスタルを庇うように、

「引き抜き厳禁よ」

 と、小競り合いを繰り広げた。無論、本気ではない。ハンスは惑星アミナスのことに興味があるようで、グロッドから話を聞こうと頑張っていた。

「良い人達のおかげで、やっとスタート地点に立てることになりました」

 クリスタルが言うと。皆、

「そうだ、これからスタートだ」

 と、彼女の言う通りだと激励した。それでも、一つの通過地点は過ぎようとしていると、クリスタルは認識していた。それで、皆にそのことを告げることにした。

「実は今日、銀河間連盟評議会からも、通知がありました」

 と、打ち明けると、皆、しん、と静まり返り、クリスタルの言葉に耳を傾けた。

「ユーグへの入隊手続きが済んだ時点で、私を、正式に機械生命体であると、永久に認定するという連絡でした」

 彼女がその内容を皆に話すと。

「おめでとう」

 もう一度、皆は祝いの言葉を、クリスタルに掛けた。惑星アミナスのバークルの店で別れの挨拶をした時同様、クリスタルの目からは、涙があふれた。

「私は、ちょっと泣き虫なのかもしれません」

 泣きながら、彼女は笑った。

「泣きたくなるような無茶はさせませんから安心してください」

 と、心強い言葉が、ハンスから掛かった。祝いの席は盛り上がり、しかし、夜が更ける前に、アルバート以外の皆は帰って行った。クリスタルも自室に戻り、セリュレが入れてくれた紅茶を飲みながら、皆の温かさを噛みしめた。

 ふと、部屋の飾り棚にある花瓶を眺めた。挿されていたユリは既にない。とうの昔に萎れてしまった。

 その喪失が、今日のクリスタルには、あたかも、短い彼女の子供時代の終わりを告げているようだと、そんな風に、思えた。


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