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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
7/105

第6節 憧れ

 それからもシオンは容赦なく俺に攻撃を仕掛けてきた。

 シオンはどうやら植物系の技が得意らしい。蔓を鞭のようにしならせて攻撃をしてきたり、切れ味の高い葉っぱを飛ばしてきたりする。


(緑幻素でここまで戦闘ができるなんて……これならアタッカーでも充分通用するぞ)


 と、一見先輩風を吹かしている余裕な俺に見えるかもしれないが、今それらの攻撃から逃げるのに必死である。


「うぉぉーーー!!!シャット!!シャッット!!」


 周りの生徒はすっかり俺たちの戦いに魅入られている。もちろん注目されているのはシオンだけだが。


「シオン!!待った!降参だ!!」


 俺の体力の限界が来たので、地面に手をついて降参の意を見せた。


「なぜか途中から勝負みたいになってましたね」


「まぁ俺は逃げてた、だけ、だけどな」


 息も絶え絶えに俺は立ち上がる。

 時計を見ると、もう15時を回っていた。


「よーし、今日の訓練はこれで終わりとする。明日からは基礎的な体力作りもしていくから覚悟しとけよ。それじゃあセンテンスのおニ方、今日はありがとうな」


「いえいえ、こちらこそ」


「ユミル、早く帰るわよ」


 ユメコはそう言いながらも、ユミルを置いてさっさと帰ってしまった。


「姉さんちょっとまってよ!……もう」


 ユミルもそのまま帰るのかと思いきや、何やらこちらをジロジロと見てくる。


「なんか見られてません?先輩」


「いや、俺じゃなくて君だろ」


 しかし俺たちの予想に反して、ユミルは別の人物に声をかけた。


「ちょっとそこの君、あそこに立っててもらえないかな?」


「わ、私ですか?」


 声をかけられたのは、眼鏡をかけた小柄な女子だった。薄緑色の短髪が特徴的で、たしか同じクラスの生徒だったはずだ。


「そう、君」


「わ、わかりました!」


 彼女はそう言うとユミルから少し離れた場所に立つ。ユミルはそれを確認すると、本を開いてこう言った。



「オープン」



 その単語を聞いた瞬間、俺の脚は瞬時に動き出した。


 開かれた本から高濃度の赤幻素が放出され、それは巨大な火球となって彼女に放たれた。


 ——え


 彼女は驚きのあまり身体が動かなくなっている。俺は彼女の前に立ち、火球めがけて本を開いた。


「シャット!!」


 白幻素と火球がぶつかり合う。

 それは互いに少し拮抗したが、すぐに火球が白幻素の包囲を破りこちらに飛んでくる。


(まずい!!)


 そう思った次の瞬間、横からシオンの声が聞こえてきた。


「先輩!!」


 シオンは大木を火球にぶつけ、なんとか相殺させた。

 守られた彼女は驚きすぎて腰が抜けてしまっている。


「絶対助けると思ってましたよ、"アゼン先輩"」


「……どういうつもりだ」


 ユミルは詫びる様子も見せずにただ拍手をしている。


「先輩、僕は先輩に憧れているんです。先輩の白幻素は"特別"ですから」


「どういうことですか先輩」


 シオンが横目で俺を見つめてくる。俺は無意識に目を逸らしてしまった。


「白幻素は他の全ての幻素を"包括"することができます。ですから僕がさっきやったみたいに幻素を一時的に保存して、それを放つことができるのです」


 ユミルは右に左に歩きながら楽しそうに話している。


「ですが先輩の白幻素は違います。先輩は他の幻素を白幻素に"塗り替えている"。本来こんな特性幻素にはないんですよ!!」


「先輩は特別なんです!僕はそんな先輩が大好きなんです!」


 ユミルは一言喋るごとに息が荒くなっていく。こいつとは初めて会ったはずなのに、どうしてこんな好かれてるんだ……?


「俺のことをどう思うかは勝手だが、なぜこの子に攻撃をした?この子は関係ないだろ」


「先輩の実力を測るためですよ。先輩は人助けをするときに実力が発揮されると"生徒会長"がおっしゃっていたので」


「……」


「それでは先輩、また会いましょう」


「おい待て!!」


 ユミルは本を開き、現れた紫幻素に包まれる。

 すると一瞬にして姿を消してしまった。



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