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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
ファームピボット編
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第65節 個性的な戦い方

 俺たちの前に立った4人の内、まず最初に動いたのはベンティアだった。ベンティアは足の裏を地面にめり込ませながら大きく跳躍し、落下の勢いに任せて、ロボットの大群めがけて柄のついた岩を振り下ろした。


 すると爆音と共に岩の下にいたロボットは粉々になり、周りにいた奴らも攻撃の衝撃波で吹き飛んでいった。地面はベンティアを中心として放射状にひび割れている。これだけの威力でも、彼女が持っている岩は傷一つついていなかった。


 ベンティアが先行して攻撃を仕掛けると、続いてメルが縄の先端を輪の形に結び、ロボットめがけて投げ放つ。しかしメルの持っている縄では届かない。……そう思った次の瞬間、メルが緑幻素を縄に纏わせると、縄が勢いよく伸び始め、見事一台のロボットを捕縛した。


 そしてさらにメルは縄を持ったまま走り出し、その勢いで前に飛ぶと、今度は縄が素早く収縮していき、ロボットを引き寄せて鋭い蹴りを喰らわせた。ロボットは頭が吹っ飛ばされて機能停止となった。


 その後もベンティアとメルは縦横無尽に駆け回りながらロボットを次々と薙ぎ倒していく。


「……さすが、ビィビィア学園の生徒なだけはあるな」


「私はあんな風に動けないですよ……」


「それが普通ですよ。彼女たちが脳筋なだけです」


 ドリムはそう言いながら、ケースからシャー芯を1本取り出して、茶色の幻素を纏わせると、こちらに向かって来ていた一台のロボットにそれを投げ飛ばした。シャー芯はロボットの装甲に突き刺さると、ロボットはその場でぴたりと動かなくなった。


「……何をしたんだ?」


「弱点にシャー芯を刺しただけです。あのロボットは装甲は分厚いですが、隙間の下に重要な配線を引いていたのでそこを狙いました」


「隙間?隙間なんてありますか?」


「ありますよ」


「それより、どうしてそこが弱点だって分かったんだ?」


「見えたんです。私、視力だけはいいですから」


 そう言いながらドリムは遠距離から次々とシャー芯を投げてロボットを停止させていく。視力がいいってレベルの話じゃないような気がしたが、そのことを聞く前に、ロボットが後退しているのでドリムもそれを追いかけて行ってしまった。


「アゼン先輩、私たちはここに残ってて良いんでしょうか……。私たちにも手伝えることが……」


「まぁ、彼女たちだけでなんとかなりそうだし、下手に参戦して連携が崩れても良くないからな。それより、ベルはここにいていいのか?ずっとコントローラを握ったままだけど」


「は、はい。そろそろ"来る"ので」


「?」


 不思議に思っていると、交差点の角からベンティアとメル、それにドリムが慌てた様子でこちらに向かってきた。


「なんだ?なんか言ってる?」


 前にいるドリムが何かを叫んでいるが、遠くにいるせいで聞こえない。辛うじて口の動きだけは認識することが出来た。



「に・げ・ろ?」



 どーーーーーん!!!



 すると次の瞬間、道路の脇のビルを突き破って、巨大な履帯付きロボットが俺たちの前に現れた。


「ぬあ!?」


「ベ、ベルさん!あれがベルさんが言っていた"来る"の正体ですか!?」


「……ち、ちがいます」


「…………………にげろーーーー!!!」


 俺たちは回れ右をして駅に転がり込んだ。そこにロボットは容赦なく突っ込んで行き駅の入り口を破壊しながら俺たちを追ってきた。


 俺たちは駅を出てそのまま線路の上を全力で走って逃げる。


「お、追いかけてくるぞ!」


「あのロボット、よく見たらフロントラインの整備用ロボットです!警備用じゃないのにどうして私たちを襲ってるんですかーー!」


「そんなの俺に言われても困る!!」


 走るうちに段々とロボットとの距離が近づいていく。このまま走り続けたら確実に追いつかれる。


「はぁ、はぁ、やばいって!踏み潰される!」


「先輩!幻素でなんとかならないんですか!?」


「無理!さすがに大きすぎるよ!」


「………き、"来ます"!」


「「何が!?」」


 ベルはそう言うと走りながら空を見上げた。するとそこにはいつの間にか3機の巨大な輸送機が俺たちの上空を飛んでいた。輸送機にはそれぞれワイヤーが取り付けられており、それらは"巨大な人型のロボット"を吊るしていた。


 パン、パン、パン


 するとワイヤーが次々と外されてロボットが俺たちの目の前に落下する。



 どーーーーーん!!!



 本日2度目の爆音と共にそのロボットは地面に着地した。前を走っていたベルがそのロボットの前で立ち止まり、俺たちの方に振り向く。彼女の手には、コントローラがしっかりと握られていた。


「み、皆さん、離れていてください………」


 彼女が手元のコントローラの電源を入れる。するとロボットの目元が光り、背中の排出口らしきものから大量の幻素が放出された。


「あはは、ひ、久々に"コレ"使うので、ちょっと苦戦するかもしれません」


 彼女は遠慮がちに笑いながらこちらを見る。それと同時にコントローラを高速で動かしたかと思うと、ベルの後ろにいたロボットが俺たちを飛び越えてそのまま敵ロボットにまるで人間かのような蹴りを喰らわせた。


 ロボット同士がぶつかった風圧で土煙が舞い上がる。それはロボットらを完全に覆い隠してしまった。それでも尚、彼女は手元のコントローラをカチャカチャと操作してロボットを動かせているようだ。その証拠に地響と共に鈍い金属音が連続で鳴り響いている。


 何十秒か経つと、ベルは操作をぴたりと止めた。それと同時に鈍い音も無くなり、土煙も徐々に晴れていく。


「…………いや」


 土煙が完全に晴れて、その全貌が明らかとなる。


「圧勝でしょ………」


 彼女の操作していたロボットの足の下に、ボコボコに潰れた哀れな整備用ロボットの姿が、そこにはあった。


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