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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
1学期テスト編
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第57節 チームワーク

《さぁとうとうトルペンチームが得意とするタリアさんの水上ショーが始まろうとしています!ルーさんが作り出した海を使って、タリアさんは非常に高火力、高質量の攻撃を放ち、今まで数々の敵を海の藻屑にしてきました!はたしてアゼンチームもなす術なくやられてしまうのでしょうか!?》


 状況は非常に良くない。タリアの幻素操作範囲は広大で、たとえどこに逃げようとも、水がある限り攻撃の危険は常にある。だが現状この水没した街をどうこうできる力は俺たちにはない。 


 シオンがいたら"種"で状況を一変できたかもしれないが、彼女がいない以上、打開策を見出せない……。


(……俺たちの最終目的は、あくまでセンテンスへの昇格だ。このテストはそのための通過点に過ぎない。幸い個人戦でのポイント獲得数は及第点を超えている。だったら……)


「ルナ、残りの試合時間はあと僅かだ。このままいけば引き分けで終わらせることができる。ポイントを少しでも稼ぐために今からは守りに徹しよう」


「けど、それじゃあ負けを認めたようなものじゃないですか!私は最後まで勝つつもりで戦いたいです!」


 彼女は食いかかるようにしてそう言った。


「……じゃあ、その勝つ方法を教えてくれ」


 俺はルナの気持ちばかりでなんの具体性もない考えに少し、ほんの少しイラッとした。


「……そ、それは……」


「……ルナ、君は人に頼りすぎだ。アオと約束したんだろ?頼るだけじゃなくて、頼られる友達になるって。だったら、現状を自分で把握して、自分で考えられるようにしろ」


「……はい」


 ………少し強い口調で話してしまった。俺は逃げるようにルナから視線を逸らし、タリアの方を見る。タリアは俺たちのことを呆れた顔で眺めていた。


「……タリア、なんだその顔は」


「いえ、ただ"チーム"とは何かを考えていただけですよ〜」


「……」


「そんな怖い顔しないでくださいよ。これからとびきり素晴らしいショーが開幕するというのに」


 タリアはそう言うと、手を2回パン、パンと叩く。すると空にいた無数の水の魚たちが、俺たちに向かって急降下し始めた。俺はすぐさま上空に白幻素の壁を展開し、ルナはその壁の下に潜り込んだ。


 魚の群れのほとんどが壁によって霧散したが、何匹かが壁の横を通り過ぎて俺たちの側面から迫ってきた。


 それをルナが杖に緑幻素を纏わせて、それで思いっきりぶっ叩いて霧散させた。その打撃には少し憤りが込められていたように感じたが、俺はあえて口に出すようなことはしなかった。


「ルナ、タリアはいつどこからでも攻撃ができる。2人で互いをカバーして耐え抜くぞ」


「……はい」


 俺たちは移動してタリアの攻撃を避けつつ、当たりそうな攻撃は壁で防いだり、蔓ではたき落としたりして対処していた。タリアはこちらの意図に気づいたのか、水の魚だけでは無く、水の鞭や棘を用いて、連続して密に攻撃を仕掛けはじめた。


《タリアさんの猛攻を必死に耐えているアゼンチーム!これでは防戦一歩です!いや、もしかしたらそれが狙いなのでしょうか!?残り試合時間も殆ど無くなってきているので、このまま耐えて引き分けにするつもりのようです!ですが、アゼンチームは知らないのでしょうか?この状況は、トルペンチームの"いつもの勝ち方"だということを!》


《アゼンチームは決定的なことを見逃していますね》


 タリアの壮絶な攻撃の数々は俺たちの集中力を徐々に削っていった。そして、そのことが最後の最後にあだとなった。


《試合終了のカウントダウンを開始します。15、14、13……》


「ルナ!試合終了のカウントダウンが始まったぞ!あと少しだ!」


「……はい!」


 希望の光が見え始めたその瞬間、背中で感じていたルナの気配が消えた。


 俺が後ろに振り向いたその時には、すでに俺の視界は、希望の光とは程遠い、残酷な青い閃光に包まれていた。


 ———え


 胸に強い衝撃を感じた後、俺は屋根の瓦を削りながら吹っ飛ばされ、最終的に海へと投げ出された。


 俺は沈みながら、泡と共に昇っていくスーツの幻素をただ眺めることしか出来なかった。


《生徒、アゼンの幻素完全放出を確認。同時に試合時間の終了となりました。よって一対ニで、勝者はトルペンチームに決定しました》



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