第53節 先手必勝
《皆さまおはようございます!昨日の騒動から一夜明け、いよいよこの日がやって参りました!!一学期テストで最も盛り上がるといっても過言ではない、チーム戦のお時間です!サーミちゃん!チーム戦の説明よろしく!》
《チーム戦はその名の通り、多人数同士での試合を行います。人数に制限はありませんが、公平さを保つために人数が多ければ多いほど、一人あたりのスーツの幻素量は少なくなります。相手全員の幻素を完全に放出させるか、時間内に多く残っていたチームの勝利になります。また、試合を行う台は通常のものよりも大きいものを使用します》
《的確で簡潔な説明ありがとうサーミちゃん!最初に試合を行う両チームは、なんとどちらも今回のテスト最注目の生徒ばかりが揃っています!!それでは登場してもらいましょう!両チーム、入場してください!!》
ガリエルの放送を合図に、俺たちは会場に入場した。それと同時に大歓声が周りの空気を揺らす。久しぶりの試合だからか、会場の迫力に少し面食らった。
「結局、作戦らしい作戦は考えられなかったですね……」
「臨機応変に対応すればいいんです」
「まぁ、相手が相手だからな」
台を挟んだ向こう側から、三人の生徒が入場してくる。全員が青い髪であり、クラウズのランキング上位にいるあの"愉快"な奴らだ。
《チーム戦において無類の強さを誇る常夏の住人たち、トルペンチームが今姿を現しました!トルペン家の長男であり、冷静かつ仲間想いの頼れる存在である"サルサ"さんと、天真爛漫でトルペンにやってきた人達を必ず笑顔にする"ルー"さん、そしてトルペン家次期当主であり、一年生にしてクラウズランキング第二位の座に君臨する期待の新鋭、"タリア"さんの三名で構成されています!》
《対するは、最初の模擬戦闘訓練以来、学園で知らない人がいないほどの有名人となった緑使いの新たな可能性、シオンさんと、昨日の騒動で出場停止となってしまったアオさんの幼馴染であり、日々成長を続けているルナさん、最後に、我が学園で最も長く在籍しており、しばらく試合すらしていなかった謎だらけの白使い、アゼンさん率いる計三名のチームです!!》
白い台に登ると、タリアとサルサがこちらにやってきた。
「まさか皆さんと戦うことになるとは思ってもいませんでしたよ」
「本当ですよ!なんでワードの私たちとクラウズの皆さんが試合することになったんですか!」
「あはは、まあ気の毒だとは思うけど、私たちは手加減しないからね」
「臨むところです。私たちも、負ける気はありません」
「サルサ〜タリア〜そろそろ開始位置に移動するよ〜!」
ルーの呼びかけに応じて、タリアたちは俺たちの反対側にまで移動する。すると、透明な壁が台の周りを囲み、その中を幻素で満たしていく。やがて幻素は古びた煉瓦の街を形成していった。
「今回の設定は"無人となった街"だね、タリア」
「私、この設定あまり好きじゃないんだよね。なんか、トルペンの未来を見ているみたいでさ」
「タリア、あんまり縁起でもないこと言わないでね。私たちがいる限り、トルペンが廃れることはない、そうでしょ?」
「……そうだね、ルーお姉ちゃん」
《ステージ設定が完了しました!それではこれより、一学期テストの、チーム戦を開始します!!》
今回のステージは建物などの障害物が多く、相手の位置が最初はわからない。そのため一方的に見つけた方が、不意打ちなどで有利に試合を進めることができるだろう。
「よし、まずはタリアたちがどこにいるかを把握し———
——————ドン!!!
俺が横を向いた瞬間、そこにいたシオンの胸に青く輝く矢が突き刺さった。
「———」
「!!」
シオンは身を守ることすらできずに後方へ飛ばされて建物の壁に激突した。
「師匠!!」
シオンの胸から大量の幻素が放出する。ルナは杖を傷口に当てて回復しようとするが、放出は止まらずにとうとう全ての幻素が出てしまった。
それと同時に、気を失ったシオンが紫幻素に包まれて、台の上から姿を消した。
《な、な、な、なんと!信じられないことが起こりました!!開始から約30秒で、あのシオンさんが幻素完全放出により脱落してしまいました!!》
俺は何もできずにその場で立ち尽くしていた。決して油断したわけではない。タリアたちがどこから攻撃してきても対応できるように集中していたはずなのに、俺は一歩も動くことが出来なかった。
矢が放たれた方向の建物には、全て大きな穴が開けられており、その先に青い弓を構えたタリアの姿があった。
「"先手必勝"、これがトルペンのやり方だよ」




