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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
5/105

第4節 これからよろしく

「……あの、先輩、ここ私の寮ですよ?」


「いや違うから!俺が先だから!」


 シオンは頭の上に幻素で?マークを作りながら首を傾げた。


「器用だな……じゃなくて!なんで君がここにいるんだ?」


「先生にもっと大きな部屋が欲しいって言ったらここになりました」


(あのバカ教師、俺がここにまだ住んでること忘れてるのか!?このままじゃシオンと二人きりで過ごすことになってしまう!!)


 俺としては問題ないのだが、シオンがどう思っているのか分からない。もし不快ならば俺がここを出ていくしかないだろう。なぜなら俺は紳士だから。


(しかし、ここ以外俺の居場所は皆無なので、できれば離れたくないんだが……)


「別に先輩がいても構いませんよ。先輩のことなんとも思っていませんし」


 シオンはまるで心を読んだかのように俺が欲しかった返答を返してくれた。


「ふぅ……分かった。じゃあとりあえずここを案内するよ」



 この館は2階建てで、1階階中央にある玄関ホールから2階に上がることができる。1階にはキッチンがあり、朝飯や夕食はここで作って食べている。

 部屋は1階に3部屋、2階に4部屋の計7部屋がある。


「俺は上の階の部屋を使う。君は自由に部屋を選んでくれ」


「じゃあ私は下を使います」


「分かった。トイレと風呂は1階と2階両方にあるから気にしなくていいぞ」


 粗方説明し終え、俺たちは玄関ホールに戻る。

 時計の針はすでに8時を指していた。


「そろそろ夕食にするか。俺が用意するから君はお風呂にでも入っておいで」


「それは先輩に悪いです。私が作ります」


「いいっていいって」


 俺はそう言って、半ば強引に会話を切り上げキッチンに向かった。キッチンに向かう途中、俺は昔のことを思い出していた。


 ——誰かに料理を振る舞うのは、あの頃以来だな


 そう思いながら、冷蔵庫から食材を取り出す。


「そういえば、彼女は大食いだったな」


 俺は閉めかけた冷蔵庫を再び開け、残りの食材を全部取り出した。

 食材をまな板に並べて今日作るメニューを考える。人に振る舞うのも久しぶりだし、これだけの量を使うのも久しぶりだ。


「まったく、腕が鳴るぜ」


 料理をするのが、久しぶりに、楽しいと感じた。




 出来上がった料理を共用リビングに運んでいると、風呂から出たシオンが扉から現れた。

 可愛らしいパジャマに身を包ませ、濡れた髪をタオルで拭きながら俺に話しかけてくる。


「すいません、先に入りました。……いい匂いですね」


「だろ?今日は腕によりをかけて作ったんだ」


 料理を並べ終え、俺たちは向かい合うように席に座る。


「それじゃあ、いただきます」


「いただきます」


 食事中は喋らないのが俺の流儀だが、人が目の前にいるのに会話がないというのはやはり気まずい。なによりシオンへのお礼がまだ済んでいないのだ。なんとかしてキッカケを作ろうと考えていると、またもやシオンの方から話しかけてくれた。


「先輩、今日は1日ありがとうございました。料理もとっても美味しいです」


「そうか、それは良かった。……俺も、今日はありがとな」


「なにがです?」


「……いろいろだ。シオン、まぁあと3年、ここで一緒に過ごすことになるんだが、本当に大丈夫か?」


「先輩のことは信用してますし、なによりこんな美味しい料理が食べられるのは、ここだけなので」


 シオンはそう言うと、うっすらと微笑んだ。

 俺は彼女が笑うところを今日初めて見た気がする。


「これからよろしくお願いします、先輩」


「ああ、よろしくな」









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