第41節 第一テスト、開始です!!!
放送が開幕の宣言をしたと同時に、最初の生徒たちが次々と入場してくる。その瞬間、耳鳴りがするほどの歓声が訓練場を覆った。
それを聴いた入場する生徒たちの中には、高揚感を感じる人や、緊張で顔が青ざめている生徒もいる。それでは我らがシオン様はどうなのかというと、やっぱりというか、相変わらずというか、特に何も感じてなさそうな様子で入場して来た。
選手が全員入場し、それぞれの台の上に立つと再び放送が入る。
《さあ最初の生徒たちが全員位置に着きました!皆さんやる気十分のようです!それではまず最初に今回のテストで使われる魔獣を難易度ごとに紹介していこうと思います!解説のサーミちゃん!よろしくお願いします!!》
《はい、難易度は全部で3つに分かれており、1番簡単なイージー、次に難しいノーマル、最難関のハードに区分けされています。イージーに挑む生徒は今回、"バーヤン"と呼ばれる魔獣と闘うことになります》
《おお!"バーヤン"ですか!初めて聞きますね!一体どんな魔獣なんでしょうか?》
《バーヤンは猿型の魔獣で素早い動きと緑幻素による若干の回復が特徴的です。ですが、知能が低いので単純な攻撃しかしてきません。それでは次にノーマルの魔獣を紹介します。ノーマルの魔獣は"ライギルド"です》
《それなら僕も知ってます!中々強いんですよねあの狼》
《ちょっと先輩黙って……コホン、ライギルドはノーマルに設定されている魔獣の中でも上位種とされる魔獣です。黄色い立て髪から放たれる雷は地面を抉るほどの威力があります。そして最後、ハードに挑む生徒が闘う魔獣は……》
《……"サンドーム"です》
———ざわざわ
"サンドーム"その単語が出た瞬間、周囲が一斉にどよめいた。特に2、3年生の生徒が唖然とした表情で口々に驚きを呟いている。
「先輩、サンドームってそんなヤバいやつなんですか?」
「うーん、ヤバいというより……」
《サンドームは皆さんご存知の通り、"砂"の幻界領域に生息している蛇型魔獣です。砂漠の中を自在に動きまわり、捕食のとき以外滅多に姿を現さないので捕獲が困難でした。ですが最近、資源会社"オアシス"のサンプル提供により、サンドームを再現することに成功しました》
《ということはつまり、一時期"幻獣"とまで言われていたあのサンドームを今回間近で見られるということ!?》
《はい、その通りです》
サーミが淡々と喋ると、会場がワッと歓声に包まれた。皆興奮気味に友達などと話をしている。特別観覧室にいた企業の役員たちも部下と何やら話し合っているようだ。
「……まぁつまり、めちゃくちゃ珍しいってことだ」
「へぇ!そうなんですね!私も見てみたくなりました!」
「シオンはハードでテストを受けるはずだからそこで見れると思うぞ」
俺はそう言いながらシオンがいる台に目を向ける。周りの生徒が緊張している中、シオンは平然と空を見上げている。俺もつられて空を見ると、いつも通り、刺すような陽光が眼に当たる。
「流石は師匠です!サンドームが相手だと知っても堂々としています!」
「まあシオンが闘う相手のことをいちいち考えてるとは思えないからな」
自慢げなルナを横目に、俺は再び放送に耳を傾ける。
《魔獣の紹介はこれで以上となります。2回、3回目のテストの際の魔獣はその都度紹介していきます》
《それでは!いよいよテストを始めたいと思います!》
ガリエルは深呼吸をした後、どこかで聞いたことがあるような真面目な口調でマイクに話す。
《……ステージ設定、開始》
ガリエルがそう言うと、均一に並べられた台それぞれに透明な壁がそびえ立ち、各難易度ごとに森、荒野、砂漠へと壁の内側が変化していく。
《ステージの設定が完了しました。これより……第一テストを開始します!!!》
真面目な口調のままでいくのかと思いきや、結局元の明るい声に戻った。隣にいるサーミはやれやれといった表情で首を横に振っている。
またそれと同時にそれぞれの台に魔獣が数体姿を現した。
会場の熱気が最高潮に達したとき、魔獣たちが一斉に雄叫びをあげ、歓声が花火のように弾けた。




