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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
1学期テスト編
41/105

第38節 訓練中3

 ルナがアオの上に乗っている状態が続いている。ルナはアオが離れないよう必死に杖を押し付ける。逆にアオはなんとかこの膠着した状況を打破しようと弓を押し上げていく。 


 両者一歩も譲らないこの光景を俺とシオンは並んで見守っていた。


「先輩、どっちが勝つと思いますか?」


「アオの弓の技術は素晴らしいものだけど、今場を制しているのは間違いなくルナだ。この膠着状態が終わったとしても、周りの蔓をどうにかしない限りアオは負ける」


「確かにその通りですね。ですが、私はこの試合、アオが勝つと思います」


「……それはどうして?」


「アオはまだ、本気を出していません」


 アオとルナの状況に変化が起きた。アオが口で弓を引いて矢を放ったのだ。ルナは慌ててアオの上から離れて距離をとる。2人の幻素量は、俺の予想だと半分くらいになっているだろう。


「危なかった……アオちゃん、すごい顎の力だね」


「……ルナ」


「ん?なに?」


「ごめんルナ、私、ルナのこと舐めてた。いつものヒーラーとしてのルナしか知らなくて、まさかここまで強くなるなんて思ってもなかった」


「えへへ、褒めすぎだよアオちゃん」


「だから……私の嫌いな、私の"本気"をだすよ」


 さっきまで笑顔だったルナの顔が、一瞬にして凍りつく。


「あ、アオちゃん!?本気!?」


「うん、勝ちたいから」


「や、や、やばい!!」


 ルナは踏み込んでアオに急接近し、杖でアオに殴りかかる。しかし、その攻撃は1枚の氷壁に阻まれた。


 アオはルナの攻撃を止めると、全身から冷気が溢れ出していく。台の上の温度は急激に下がっていき、周りの柱や蔓が徐々に凍り始めた。


「ひ、久しぶりに見たよ……その姿……」


「ごめんねルナ、使う気はなかったんだけど、ちょっと熱くなっちゃって」


「あはは……冗談きついよアオちゃん……」


 アオから発せられていた冷気はやがて薄い衣のようになって彼女を包み込んでいき、まるで氷のドレスを着ているかのようになる。


 だがその美しさとは裏腹に、透明な壁すらも凍らす冷気が俺たちの方まで伝わってきた。中にいるルナの全身はとっくに凍って動かない。


 ただの的となったルナめがけてアオはゆっくりと弓を引く。



氷結の庭(アイス・ガーデン)



 矢は凍てついた空気を切り裂きながらルナの胸に勢いよく突き刺さる。ルナは後ろに吹き飛ばされ、凍りついた蔓をバラバラにしながら壁に激突する。


 《生徒、ルナの幻素完全放出を確認。勝者が生徒、アオに決定しました》


 透明な壁が消えて、風が強く吹く。


 キラキラと輝く緑色の氷粒が、冷たい少女を包み込んだ。



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