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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
1学期テスト編
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第35節 休日は訓練場で

 筆記テストが終わり、いよいよ本命の実技テストが迫ってきている。実技テストでは個人戦、チーム戦の2つがあり、1日目が個人戦、2日目にチーム戦が行われる。


 個人戦では、1人4回の試合があり、その内の3回が擬似魔獣と、残りがランキングの同じレベルの人との試合になる。擬似魔獣はイージー、ノーマル、ハードの3個体がおり、それらに勝つとそれぞれ1、2、3ポイント獲得できる。3試合のうちどの個体と戦っても良い。獲得したポイントが高いほど成績は良くなるが、個人ランキングに影響はない。反対に対人戦では成績に影響はないが、ランキングの変動は起こる。


 チーム戦では、各チーム3回の試合が行われる。対戦チームは基本ランダムだが、チームランキング、個人ランキングの順位を参考に多少調整はされる。これらの試合では勝った方のチームにポイントが入る。勝ち負けは相手が全員幻素を完全放出するか、戦闘不能になった時点で決まる。ポイントは勝ったチームのメンバーにそれぞれ3ポイント与えられるが、負けたチームでも負け方によってはポイントを獲得できる場合がある。

 例えば、一対一の末に惜しくも敗北したときなど、審査員が好試合と判断すれば、負けたチームのメンバーにそれぞれ1ポイント与えられる。

 チーム戦は個人ランキング、チームランキング両方に影響を与える。


「これが実技テストの大まかな説明だ」


 休日の学園、俺たち以外誰もいない教室の中で、俺は黒板に実技テストについて分かりやすい図を書きながら、1番前の席に座るシオンとルナ、アオに説明している。


 俺がひと通り説明し終えると、ルナが勢いよく手を挙げた。


「はい!質問です!」


「なんだ。言ってみろ」


「1番ポイントが取れる場合はどういったときでしょうか!」


「個人戦の擬似魔獣のレベルを全てハードにして勝ち、尚且つチーム戦で全勝したときだな。まあ中々できないからあまり考えなくていいぞ」


「では私たちが取れるポイントを考えましょう」


 そう言うと、アオがノートに何やら表らしきものを書き始める。俺たちはアオの机の周りに集まってノートを見下ろした。


「それじゃあまずは私から。私は擬似魔獣の難易度は全てノーマルでいきます。ハードは少し不安があるので」


「次は私です!私は2回はイージー、1回はノーマルにしようかなぁ。ノーマルは訓練で数回しか勝ったことないけど、何事も挑戦だって師匠も言ってたので頑張ろうと思います!」


「良い心構えです。私は全てハードいきます。先輩はどうしますか?」


「俺はノーマル2つ、ハードが1つでやるよ。それじゃあ合計は……」


「26ポイントです」


「流石アオちゃん!計算が速い!」


「26か、過去の4人組でセンテンスになったチームの合計と比べると、やっぱり少ないな」


「過去の結果と比べても意味はありませんよ。それより早く訓練場に行って訓練をした方がいいです」


 シオンはそう言うと立ち上がり、机の横にかけてあったスーツの入った袋を手に持つ。


「師匠、1年生の訓練場が使える時間はまだ先ですよ?」


「……そうなんですか?」


「ああ、今は2年生が使っているはずだ。まあでも先輩の動きを見ておくことはいい勉強になるから、訓練場に行ってみてもいいかもな」


「確かに。私も見ておきたいです。ルナはどう?」


「私もだよ!」


「よし、じゃあ行くか」



 こうして俺たちは訓練場に向かうことになった。



 ▲▽▲▽▲



 訓練場には多くの生徒が正方形の台の上で幻素を交えて戦っている。赤、青、黄色……様々な色が訓練場を彩っている。


 流石は2年生といったところだろうか。ほとんどの生徒が幻素の扱いに慣れている。特に目を惹くのは中心の台で激闘を繰り広げている2人だ。


 1人は俺が苦手とするユメコ、もう1人はたしかセンテンスにいた緑使いの……ナズナ、だろうか。



 2人は高濃度の幻素をぶつけ合いながら台の上を駆け回っている。ユメコが隙を見てナズナに斬りかかる。ナズナはそれをひらりと避けるが、ユメコが大剣を素早く振り上げた。


 ナズナは杖でそれを受け止めると、杖から丈夫そうな根を出して大剣に巻きつける。恐らく動きを止めるためだったのだろうが、ユメコに対しては通用しない。ユメコは大剣に炎を纏わせ根を燃やし、一旦距離をとる。


 するとナズナが何やら文句をユメコに言っているようだ。ユメコも負けじと唾を飛ばす。少ししたあと、2人は再び構えをとる。


 ユメコの大剣から巨大な火柱が立ち昇る。そして大剣を振ると火柱がナズナめがけて倒れていった。ナズナは避けようするが間に合わず、身体の半分が炎に直撃してしまった。ナズナのスーツから大量の幻素が放出していく。


 しかし、ナズナが動じている様子はない。ナズナが杖を両手で持つと、ナズナの足元に巨大なピンク色の花が出現した。それを見たユメコは素早くナズナに斬りかかるが、それよりも速く花弁がナズナを包み込みユメコの攻撃は弾かれてしまった。


 ユメコは攻撃を続けるが花弁を切り裂くことはできない。ユメコが大剣を突き刺そうとした瞬間、花が勢いよく開いてユメコを風圧で吹き飛ばす。中にいたナズナのスーツは元に戻っており、どうやら放出した幻素も全回復しているようだ。


「す、凄い、これがセンテンス同士の試合……」


 ルナが唖然とした様子で2人の試合を観ている。


「同じ緑幻素使いとして、見習うべきところがありますね」


 他人の試合にあまり興味がないシオンも今回は真剣にナズナの動きを見つめている。


「あのユメコって人、なんであんなに大きな剣を振り回すことができるんだろう……」


 アオが口に指を当てて考えるように呟いた。


 結局、2人は2年生の訓練場が使える時間が終わるまで試合を続けていた。試合が終わった2人はいがみ合いながら訓練場を出ていく。


 俺たちはスーツに着替えて他の1年生と共に訓練場の入り口を抜ける。ふと、横の3人の顔を見てみると、みんな各々決意を固めたような顔で台へと向かっていく。


 それを見た俺は頬を両手で叩いて気合いを入れ直し、台の上に登る。最初は俺とシオンの1対1だ。


「シオン、よろしくな」


「はい」


 一対一の実技テストのときは、公平性を保つためにステージ設定は行なわれない。真っ白な正方形の台に、俺たちは立っている。


 《ステージ設定、選択無し》


 アナウンスがそう言うと、透明な壁が台を囲う。そして、聞き慣れた戦いの合図が囲いの中に響きわたる。



 《これより、模擬戦闘訓練を開始します》



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