第30節 怪物
「タリア、お疲れ様」
「お兄ちゃんもね」
パレードが終わると客は解散していき、海に面したこの場所にいるのは彼らと俺たちだけになった。
「にしてもすごいな。まさか1年生でクラウズランキング第2位になるなんて」
「まあ、それほどでも〜〜?」
「先輩、そのランキングってなんですか?」
「シオン、ちゃんと先生の話を聴いとけよ。チームごとの順位とは別に、個人でのランキングが存在するんだよ。模擬戦闘訓練での結果だったり、来週のテストなんかで決められている。ちなみにシオンはワードの中では1位だ」
「それりゃそうでしょうとも!師匠は最強ですから!」
ルナが自分の事では無いのに自慢げに胸を張っている。シオンはそんなルナを見て呆れたようにため息を吐いた。
「それで、先輩は何位なんですか」
「俺か?俺は順位外だ。公平性に欠けるからな」
「流石!3年留年は伊達じゃない!!」
「……ちなみにルナはワードの半分以下だからな」
「にゅ、入学初めの頃よりは上がってますぅ」
「それより、アオはどこにいるんです?」
俺たちが話している間に、アオはどこかに行ってしまった。トルペンランドの方を見てみるが近くにはいないようだ。俺はチラリと海の方に目をやると、そこには海の上に立って何かを見つめているアオの姿があった。
「アオ、あそこで何をやってるんだ?」
「え?アオちゃんどこにいます?……あ!ホントだ!あんなところにいる!おーい!アオちゃーん!」
ルナはアオを見つけると大声でその名前を呼んだ。アオは振り返ると手招きしてこちらを呼んでいる。
「アオ〜何かあったの〜?」
俺たちはアオのもとに行くと、アオは剣幕な表情で海を眺めている。
「タリア、スカルシュは全部倒したよね」
「?そのはずだけど」
「何か見つけたのかい?」
「……サルサ兄さん、私、"声"を聞いたの」
「……声?」
「何を言ってるのかはわからなかったけど、その声はどこか儚くて、なのに深みのある……"愛"が、こもってるように感じた」
アオの言うことを聞いた瞬間、俺は全身の血の気が一瞬にして引いていった。
「今すぐこの場から離れるぞ!!はやく!!」
俺は、気づくのが遅かった。
気づけるわけが無かった。
だって"アレ"は、この海にはいないはず。
「せ、先輩……あれ……」
ルナが、海中に見える巨大な影を指差した。距離は近くないが、確実にこちらに近づいている。
「アゼンさん、あいつは一体……」
「サルサ、トルペンランドにいる客全員を非難させろ。できるならトルペン全域にまで避難勧告を出してくれ」
「先輩、流石に怯えすぎです。私たちが魔獣ごときにやられると思っているんですか」
「……いいかお前ら、よく聞け。これから先何があっても、"返事"をするな」
「……」
その場にいた全員が、俺の異様な危機感を感じ取ったのか、緊張した顔つきになった。
影が、近づいてくる。
それは底なしの深海。
海そのものを体現した、"深幻海域"の数いる幼体の1体。
魔獣を超えた"怪物"が今、現れる。




