第28節 パレードの続き
「いやーすごかったですね!師匠!」
「そうね。綺麗だった」
今、俺たちはルナと合流してトルペン城にまで足を運んでいる。なぜかというと先程作られた道を歩く役者たちを追いかけて大勢の人がそこに向かっているからだ。人の波に押されて俺たちは強制的に足を動かしている。
俺はどこか抜ける場所はないかと辺りを見渡すと、人混みの中必死に客を誘導しているアオの姿があった。
シオンたちと別れて俺は人混みを掻き分けながらアオの所へと向かう。
「アオ、大丈夫か?」
「あ、先輩!」
「シオンたちはトルペン城に向かってるけど、アオはどうする?まだ仕事があるか?」
「いえ、もう人混みも無くなってきてるので私も行きます」
「わかった。じゃあ一緒に行くか」
俺はアオと一緒にトルペン城へと向かうことになった。そういえば、アオと2人きりになるのは初めてかもしれない。そう思うと、途端に緊張してきた。
「あーそういえば、パレードは見たか?」
「はい、少し見ました」
「すごかったよな。特に船長の2人は身体の使い方がうまかった。相当練習してるんだろうな」
「……彼らは私の妹と兄です」
「……え、まじか」
「はい、妹は私と同い年で兄は1歳歳上です」
確かに、考えてみればアオもあの2人も青い髪だった。それにルーの話だと全員クラウズらしいじゃないか。トンデモ兄妹だな……。
「なんか凄い家族だな」
「……私以外、全員凄いですから」
「……?アオも凄いだろ?同じクラウズなんだし」
「……」
俺がそう言うと、アオは俯いて黙りこんでしまった。
(なんかまずいこと言ったか……?)
俺はアオの様子が気になって自分の発言を頭の中で反芻した。そうしていると目の前の人混みが急に解散していった。どうやら役者たちがスタッフルームに戻っていったらしい。
「アオ、ルナたち見つけたか?」
「いや見当たらないです」
「スタッフルームに行ったのかな」
「団員専用の部屋はトルペン城の裏にあるのでそこに向かってみましょう」
俺たちはトルペン城をぐるりと回って裏にある施設に向かった。施設と言ってもそれはトルペン城の一部、つまり外壁の塔のことだ。施設の全てを世界観に合わせていて、トルペンランドのこだわりが感じられる。
関心しながら塔に向かうと、そこには例の船長2人とルナたちが塔の入口前で会話をしていた。
「あ、アオちゃん!」
ルナがこちらに気がついたようだ。
大きく手を振っている。
俺たちは早足でルナたちのところに向かった。
「こんにちは!トルペンランドを楽しめていますか?」
小柄な船長がニコニコ可愛いらしく笑いながら話しかけてきた。
「ああ、おかげさまで……えっと名前は……」
「私の名前はタリアっていいます。こちらは兄のサルサです」
「アオがいつもお世話になっています」
サルサはそう言って長身の頭を下げる。随分と礼儀正しい人だが、その様子を見たアオは不快そうな顔でサルサを見つめていた。
「アオ、久しぶりに会ったのにそんな顔はよしてくれよ」
「え!?アオちゃん同じクラウズなのにあんまり会わないの?」
「そうなんだよ〜アオったら滅多に顔見せてくれないんだよ〜」
「……チームが違うし」
アオはそう言うと、俺の背中に隠れてしまった。
「そういえば、さっきシオンさんの話をしていたんですよ。彼女の緑幻素は別格ですね。クラウズの緑使いでは歯がたたないかも」
「その肝心のシオンが見当たらないんだが」
「師匠なら塔の上にいますよ。ほら、あそこ」
ルナはそう言って塔のてっぺんを指差した。そこには塔の上に取り付けられた旗を掴みながらトルペンランドの外を眺めているシオンの姿があった。
「……何やってんだ?」
「多分、"海"を見てるんだと思いますよ」
「海?ここは湖だろ?」
「はい、そうなんですが、ここの湖はあまりにも大きすぎるのでまるで海みたいだってことでトルペンの住民は湖の半分のことを海って呼んでるんです」
「トルペンだけで湖が埋まってると思ってたよ」
「埋まってたら苦労しなかったんだけどねえ」
(……?どういう意味だ?)
「先輩!!」
俺が疑問に思っているとシオンが突然塔から飛び降りてきた。シオンは地面に葉っぱのクッションを作りその上に着地した。
「そんなに急いでどうした?」
「海の方から魔獣らしき魚の群れが近づいてきています!」
「うわ〜今日も来たのか〜」
「仕方ありませんね」
「今日も?」
タリアとサルサはさほど驚いていないようだ。それでも2人の顔にはさっきまでの笑顔はなく、真剣な顔つきになっている。
「アオも準備しといてね」
「うん」
「アオちゃん、今どういう状況なの?」
「最近トルペンには定期的に魔獣が出現するの。幻獣と違って魔獣は人に襲いかかってくる。トルペンランドはトルペンにおける対魔獣第一戦線でもあるの」
そうだったのか。どうりでトルペンランドには幻素使いが多いんだな。
「客を逃さなくていいのか?」
「トルペンランドが1番安全ですから」
「それじゃあ私たちも戦うよ!」
「大丈夫!みんなはお客さんなんだから危険な目には合わせられないよ。それにほら、あそこをみて」
タリアは魔獣が来ている方向を指差すと、そこには大勢の観客がトルペンランドの中から海を眺めていた。
「それでは皆さんもあちらに」
「これから何をするつもりだ?」
タリアは帽子を被りながらこう言った。
「パレードの続きですよ」




