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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
トルペン編
27/105

第26節 どこから回る?

 なんと驚いたことに、ルナは今日、トルペンランドにアルバイトに来ていたらしい。


「いやーまさか会えるとは思ってませんでしたよ。師匠たちもこういう所来るんですね!」


「まぁ俺はシオンに誘われたからだけどな」


「それよりもルナ、早く手に持っている物をください」


「あ、すいません師匠!」


 ルナは慌てた様子でフライをテーブルに並べる。


(にしても全部同じ料理だと異様な雰囲気が醸し出されているな。栄養的にあまりよろしくない。サラダも頼むべきだったか……)


 そんなことを考えていると、もう1人の店員が飲み物を持ってやってきた。


「お待たせ致しました。ドリンクで……す?」


「あ、アオちゃん!」


「なんだ、アオもここで働いていたのか」


「シオンさんにアゼンさん、どうしてここに?」


 アオは驚いた表情でこちらを見つめている。


「偶然俺たちもここに遊びに来てたんだよ」


「なるほど。そうだったんですね」


 アオはそう言って飲み物を並べる。


「それで、アオとルナはいつまで働いてるんだ?」


「1時くらいまでですかね。そのあとはフリーです」


「——なら、午後一緒に回りませんか?」


 シオンは早速来たフライを頬張りながら言った。


「いいですね!私も師匠たちと遊びたいです!」


「私もいいですよ」


「俺もだ」


「じゃあ1時までまだ時間があるので、師匠たちは昼食を食べて待っててください!」


「あいよ。がんばってな」


 その後、俺はフライを普通に食べ終え、アオとルナの働きぶりを観察していた。

 ルナは朝から働き続けているのにも関わらず元気に笑顔を振り撒きながら接客している。アオは前からバイトをしていた分、動きが的確で他の店員のサポートもこなしている。


「ちゃんと働けてるな」


「そうですね」


「……もう食べ終えたのか?」


「はい。美味しかったです」


「そ、そうか」


 シオンはフライ10個をぺろりと食べてしまった。その細い身体にどうやって収まるのか毎日不思議に思っている。


(カロリーとか気にしないタイプなのか……?)


 そう思いながら、俺はシオンの前に積み上がった油まみれのバケットを眺めていた。


 1時になり、アオとルナが私服に着替えて俺たちのテーブルに集まった。


「それじゃあ、どこから回りますか?」


「ジェットコースターは……食べた後はキツイな」


「時間もまだあるので、限定的なものから回った方がいいかもしれません」


「限定的?」


「例えば……」


 アオは俺が広げたパンフレットの裏表紙を見て、ある一点を指差した。


「"水のパレード"とかどうです?パレードはやる時間帯が決まってるので、今から見れるやつならこれがオススメです」


「よし、じゃあ最初はここにしよう。何か異論があるやつはいるか?」


「異論ナシ!」


「ないです」


「よし!それじゃあ出発!」


 そう言って、俺たちはレストランを後にした。



 ▲▽▲▽▲



「ア、アオちゃん見て!私今水の上に浮いてるよ!」


 ルナが例の水に浮く靴を履いて俺たちの周りをぐるぐると歩いている。


「なんだ?入るときに履かなかったのか?」


「あ、はい。私たちレストランにそのまま落ちてきたんです」


「……?イマイチ状況が想像できんな」


「凄かったんですよアゼン先輩!」


 ルナはそう言って俺の前で後ろ歩きになりながら興奮気味に話す。


「まずアオちゃんが青幻素を出して——


「——!ルナ!」


 するとルナは横からスキップをしながら歩いて来た金髪の少女にぶつかりそうになる。


 ——ぶつかった!


 そう思ったが、少女はルナの横を過ぎていた。


「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」


 ルナはその少女に話しかけた。


「ん?私何か用?」


 少女は振り返って不思議そうに首を傾げる。

 少女はトルペンランドのグッズをこれでもかと身に付けていた。特に魚型のサングラスが1番に目につく。


(めっちゃ満喫してるんだな)


「その、もしかしたらぶつかっちゃったかも……」


「あー大丈夫だよ♪ほら」


 少女はそう言うと身体をくるりと一回転させた。

 長い髪が太陽の光を反射してキラキラと輝いている。


「よ、よかったー」


「それよりも、今とっても面白いパレードがあっちでやってるから見にいってみたら?きっと楽しめると思うよ!」


 少女は、そう言い残し、またスキップをしながら去っていった。


「ルナ、ちゃんと周りをみて歩きなさい」


「は、はい!」


「あの皆さん、さっきの子が言ってたパレード、私たちが見ようとしていたやつかもしれません」


 アオがパンフレットを見ながら呟いた。


「まじか!急ぐぞ!!」


 俺たちはこうして水のパレードが行われている場所へと走って向かった。



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