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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
トルペン編
24/105

第23節 愉快なトルペン

「「おーー」」


 駅を降りた俺たちは目の前に広がる青々とした風景に思わず声を上げた。


 東街トルペンは街全体が巨大な湖の上に浮かんでおり、移動手段は主に船を使うことが多い。定住している人こそ少ないが、観光スポットとして人気があり、この空になってからは湖の水温も上がり、プールなどのアミューズメント施設も多く作られている。

 ただ少し張り切り過ぎているのか、もはや街全体が遊園地のような風貌となっている。


「凄いですね、先輩。特にあれ」


 シオンはそう言って空を指差した。

 そこには透明の巨大な筒が街のそこかしこに伸びていた。筒の中は水が敷かれており、その上を小型の船が高速で移動している。


「なんだあれ、スライダーか?」


「あっちで乗れるらしいですよ」


 俺たちはスライダーらしきものが乗れる場所にまでやってきた。そこには多くの人がそれに乗ろうと列を作っている。


「はーい皆さん押さないでねー!まだ席は余ってるよー!」


 あれは案内をする人だろうか、シオンと同い年ぐらいの女の子が元気はつらつな声で客に呼びかけている。

 これが一体どんなものなのか興味が湧いた俺たちはその列に並び、順番を待つことにしたのだが……


「あーすいませんお兄さんお姉さん、今席埋まってしまって……次の便が来たらすぐに乗れるので少々お待ちください」


「あ、はい。わかりました」


 彼女は俺たちにぺこりと頭を下げたあと、スライダーの方への向かった。


「それでは皆さまお待たせしましたー!行き先は"トルペンランド"となっております!少々揺れますので席をお立ちにならないようにしてください!それでは——


 彼女は突然両手を船尾にかざす。


「いってらっしゃーーい!!」


 その瞬間、彼女の手から大量の青幻素が放出される。それは水に変わり、船を物凄い勢いで押し出した。


 それだけではなく、彼女は船が遠くにいった後も水を出し続けていた。


(あれだけの幻素を出せるとは……もしや……)


 しばらくして、別の船がやってきた。


「すみません、お待たせしまし——


「あの、もしかしてあなた、ビィビィア学園の生徒ですか?」


「は、はい!そうですけど」


「やっぱりそうか……実は俺たちもそうなんです」


「え!それは奇遇ですね!」


「学園の生徒がここで何をしているんです?」


「バイトですよ!休日はここに来て"水上空輸"のお手伝いをしているんです。このシステムは幻素が使える人じゃないと成り立たないので」


 なるほど。

 トルペンには幻素を使った施設が多くあると聞いていたが、これもその内の1つなのだろう。


「すいません。自己紹介がまだでしたね!私の名前はルーって言います!歳は16で、階級はクラウズです!」


「俺の名前はアゼン。こっちはシオン。どっちもワードだが俺は3年留年してる」


「シオンです」


「え!?あのアゼンさんとシオンさんですか!?」


 互いに自己紹介をすると、ルーは驚いた様子で俺たちを見つめる。


「知ってたんですか?」


「知ってるも何も、学園内でお二人のことを知らない人はいませんよ!アゼンさんは元から有名でしたし、シオンさんは模擬訓練で観客全員の度肝を抜いたとか!私はその時いなかったので見れませんでした……」


「シオン、お前そんなに有名になってたんだな」


「先輩こそ」


「一度お会いしてみたかったんです!ほら、学園ってめちゃくちゃ広い——


 言いかけて、ルーは俺たちの後ろに大勢の客がいることに気がついた。


「や、やばい!お二人とも、この便の行き先はトルペンランドですが、行き先はそこで構いませんか?」


「俺はいいぞ」


「私もです」


「かしこまりました!あ、そういえば私の兄妹がそこで働いているのでもし見かけたら是非声をかけてみてください!青い髪とクラウズのバッチが目印です!」


 そう言って、彼女は俺たちを船の1番前に案内したあと、他の客の誘導に向かった。


「なんだか元気な人ですね」


「そうだな。兄妹もどうやらビィビィア学園の生徒らしいし、言われた通り会ったら声かけてみるか」


 俺たち以外にも続々と客が船に乗り込み、あっという間に満席になった。

 するとルーの大きな声が後方で聞こえてくる。


「それでは皆さま、お待たせしました!行き先はトルペンランド!水が織りなす不思議で楽しい世界に皆さまをご招待いたします!」



「それでは、いってらっしゃーーい!!」




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