第19節 衝撃の告白
「……ヌッコ?」
「そう、それが私のなまえ」
「……何者だ」
「もうそんなに警戒しないでよ。今日はただ単にみんなと遊びたかっただけなんだから」
そう言いながら、ヌッコは道に降りて俺たちに近づいてくる。
「最近は暇で暇で仕方なくてさー。暇つぶしに食べ物漁ってたらそこの君と……君に出会ったんだよ」
そう言ってシオンと俺を順に指差していった。
「あ、あの!君は人間なの?」
ルナがシオンの後ろで隠れながらヌッコに質問する。
「ん?……うーん考えたこともなかったなー。今度"パパ"に聞いてみるよ」
「……パパ?」
「そう、パパ。私たちの"教祖様"だよ」
教祖か……。思わぬ単語が出てきたな……。もしそれが本当ならこいつは——
「あなた、もしかして"アトムス"の一員ですか?」
「うんそうだよ!」
「だとしたら、君を逃がすことはできないな。シオン、絶対目を離すなよ」
「分かってます」
そう言って、俺とシオンはヌッコを挟むようにして道の両脇に立つ。
その様子にルナは困惑した表情を浮かべている。
「え、ど、どうして捕まえる必要があるんですか?」
「授業で教わっただろ。アトムスの中には"過激派"がいる。多分こいつはソレだ」
「でも、まだ子どもですよ……?」
「だからこそだ。過激派の主要メンバーは全員、7歳から12歳の子どもだと言われている。こいつが主要メンバーである可能性は高い」
それに、こいつはあまりにも異質だ。身体の幻素を組み替えることなんて不可能だし、何よりあの時霧散した幻素は"全て紫色だった"。
人は全ての色の幻素で構成されていて、他の動物、ましてや幻獣ですら何色かで構成されている。単色なんて本来は絶対あり得ないはずだ。
「ルナ、私もこの子は危険な気がする」
「あ、アオちゃんまで……」
「あーまったまった。今日はそういう気分じゃないの。みんなと遊べて楽しかったけど、そろそろ帰らなくちゃ」
そう言うとヌッコは再び紫幻素を身体に纏い始める。
「逃がすか!」
俺は急いで彼女に近づき、手をかざす。
「シャット!」
これで紫幻素は塗り替えられる……はずだった。
「な……」
俺が放った白幻素は確かに紫幻素を塗り替えている。しかし塗り替える速さよりも彼女が紫幻素を放出する速さの方が圧倒的だった。
「ん?なんだか不思議な白幻素だね!けど残念。そんな"薄さ"じゃ私に勝てないよ」
紫幻素はみるみる多くなり、やがて俺の白幻素さえも呑み込むようにしてヌッコを包み込んでいく。
「く……!」
俺はやむを得ず手を離しヌッコから距離をとった。
「それじゃあみんな、バイバイ〜!」
そう言ったあと、彼女は一瞬にして姿を消した。
彼女がいた場所には、霧散した紫幻素だけが残されていた。
「……消えちゃいましたね」
「ちょっと嬉しそうだね、ルナ」
「だって、過激派といってもまだ子どもだし、手荒な真似はしたくないなって」
「いつからあなたはそんなこと言えるほど強くなったの」
「う……すいません師匠」
「……はぁ、まさか俺の白幻素があんな簡単に……」
「先輩前もユメコさんに押されてたじゃないですか」
「……ぐはぁ!」
俺は胸に手を当てて悶絶した。
最近シオンの指摘の鋭さが増してきた気がする。何も話せなかった最初の頃よりはマシだが、これはこれで心にくるものがある。
「そんなことより先輩、このことは学園に伝えた方がいいんじゃないですか?」
「ああ、そうだな。俺が"学園長"に伝えておくよ」
「学園長ですか……そういえば一度も会ったことないですね。アオちゃんはある?」
「ううんないよ。入学式の時もいなかったしね」
「まぁ、あの人は人前に出るの苦手だからな」
「先輩、なんだか知り合いみたいですね」
「そりゃ一応、俺の"父親"だし」
「「「……え?」」」




