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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
19/105

第18節 ヌッコは神出鬼没

「先輩、今日はあのネコいますかね?」


「分からん。まぁいたとしても今日は捕まえられるだろ。人員も増やしたことだし」


「はい!任せてください!」


「ルナ、ちゃんと前見て」


 あれから数日間、被害情報をもとにネコの居場所を突き止めては逃げられる過程を何回も繰り返している。

 これでは埒が開かないので、不本意ではあるがアオとルナに協力を依頼した。


「にしても師匠でも捕まえられないなんて、そのネコほんとにネコですか?」


「うーん怪しいところだな。ネコの姿をした幻獣かもしれない」


「野生の幻獣……初めて見るかも」


「お、アオちゃんが珍しく興味津々……て、あ、あれ!」


 そう言ってルナが突然アオの向こう側を指差した。

 俺たちは直ぐにそちらを向くと、そこには例のネコが道の真ん中で凛とした姿をこちらに見せている。それはまるでこちらを嘲笑うかのように堂々としている。


「わざわざ姿を現すとは、いい度胸だな」


「どうします先輩、普通に追いかけても捕まりませんよ」


「ひとまず4人で囲むように追い詰めるぞ。シオンがまずネコを追いかけ、逃げるネコの退路を俺たちが潰していく。それを繰り返せばいつかは囲めるはずだ」


「了解です」


 そう言って、シオンは勢いよくネコに突進していく。ネコは当然シオンから逃げていく。


「俺たちも行くぞ!」


「「はい!」」


 ネコは民家の屋根、路地裏、時には家の中にまで侵入して俺たちの追随を許さない。それでもネコが十字路に出た瞬間、俺たちはその4つの道を塞ぐことができた。


「はぁ、はぁ、みんな油断するなよ」


 俺たちはじわじわとネコに近づいていく。ネコはその場から離れようとしない。


「——今だ!」


 俺の合図と共に一斉にネコに飛び掛かった。

 その瞬間、ネコは"紫色の幻素"に包まれる。


「んな!?」


 気付いたら俺たちは互いに頭をぶつけ合っていた。


「いたた……ネコはどこに!?」


 俺たちは急いで周りを確認する。

 ネコは月明かりに照らされながら街灯の上で佇んでいる。


「先輩、今あのネコ……」


「……紫幻素を使ってたな」


(幻素を使える動物は人間か幻獣だけだ。だとしたらあのネコやはり幻獣か?)


 《いやー楽しかった!楽しかった!久しぶりに面白い人たちに出会えたよ》


 すると突然、俺たち以外の声がどこからか聞こえてきた。


「どこだ!何者だ!」


 《ここだよ、ここ》


 声のする方向を向いてみると、そこにはやはりあのネコしかいない。


「……ネコが喋るか!!」


 《喋るんだなぁこれが》


 なんと信じられないことにあのネコから人間の言葉が発せられている。


「アゼンさん、幻獣には喋る個体もいるんですね!」


「いやいないだろ……多分」


 《私は幻獣じゃないよー》


 するとそのネコは再び紫幻素を放出した。それは凄まじい量で、周りが一瞬にして紫色に染まっていく。


(な、なんだこれ、幻獣が出せる量じゃないぞ!?)


 やがて紫幻素は街灯の上に凝縮し、それは小さな人型の形を形成していく。


「うーんじゃじゃーん!!」


 そして紫色に輝く髪から猫耳が生えている、小柄な少女が姿を現した。



「私の名前はヌッコ!とっても可愛いヌッコだよ!」



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