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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
15/105

第14節 君と一緒に

 ——はぁ、はぁ、はぁ、


 私は走った。

 試合の疲れなど忘れて、ただがむしゃらに学園中を走った。廊下にアオちゃんの姿はない。教室の中を一つ一つ見て周り、とある教室の前で、私は足を止めた。


(ここって確か……階級分けの時に使った教室だ……)


 入学が決まった日、新入生は自分の階級が何個かの空き教室に貼り出される。私とアオちゃんは一緒にそれを見に行き、偶然にも同じ教室で両方の階級が張り出されていた。


 教室を覗くと、アオちゃんがいた。

 1番前の席で真っ白なホワイトボードを黙って見つめている。

 アオちゃんは私に気が付いてこちらを向いた。


「……どうしたの?早くシオンさん達のところに——


「アオちゃん!!……私の話、聴いてくれる?」


「———!……うん」


 私は気持ちが先走ってしまい、思わず叫んでしまった。アオちゃんはそれに驚いたが、私が何かを言うのを黙って待ってくれている。


「アオちゃん、この3日間、私のために付き合ってくれて本当にありがとう。アオちゃんに色々教えてもらったお陰で、なんとかギリギリ勝てたよ」


「……良かったね」


「……それでね、私、気付いたことがあるんだ。私はいっつもアオちゃんに助けてもらってたなって」


 私はホワイトボードを見つめながら話を続ける。


「アオちゃん覚えてる?私がアオちゃんと同じ階級じゃなくて、トイレで泣いてたのを、扉越しに慰めてくれたよね。すごく、すごく嬉しかった」


「……」


「私はアオちゃんに助けられてばかりで、アオちゃんの役に立ったことなんて一つもないし、アオちゃんのことを分かったつもりで、全然分かってなかった」


「だからね、今度は私がアオちゃんのことを助けるよ!アオちゃんが困ってたらいつでも側にいるし、もっともっと強くなって、いつかアオちゃんの隣で戦えるようになる!……だから」



「これからもずっと一緒だよ、アオちゃん」



 私は振り返り、アオちゃんの眼を真っ直ぐ見ながら、精一杯の笑顔で言葉を紡いだ。


「う、うう」


 アオちゃんは目に涙を溜め、嗚咽を漏らす。

 私は座っているアオちゃんに近づき、そっと抱きしめた。アオちゃんは私の胸の中で涙を流した。


 しばらくして、アオちゃんは顔を離し、鼻をすすりながら私に話しかけた。


「ごめんね、ルナ。さっきはひどいこと言って」


「ううん、私こそアオちゃんの気持ちをもっと考えるべきだった」


「違うよ。私が悪いんだよ」


「いやいや私だよ」


 そこからは互いに謝罪の繰り返しになってしまい、終わりが見えなくなってきたとき、教室の入り口から突然声が聞こえた。


「こんな所にいたんですね。……何やってるんです?」


「師匠!!どうしてここに?」


「あなた達を探してたんですよ。まったく、この学園は広すぎです。見つけるのに苦労しましたよ」


「……あ、あの、シオンさん……すいませんでした!」


 アオちゃんはそう言って師匠に頭を下げた。


「私、あなたに対してとても失礼なことを……」


「大丈夫、気にしてないです。私も少しカッとなってしまい申し訳なかったです」


「じゃあ、仲直りの握手ですね!」


「あ、握手?」


「そうです師匠!お互いに謝れたら、握手をして友達になるんです!私の生まれた国ではそうしてました」


「……わかりました」


 そう言って、師匠は手をアオちゃんの前に出した。アオちゃんもその手をしっかり握って握手をした。


「さて皆さん、これから私たちの寮に来てください」


「どうしてですか師匠?」


 師匠は少し微笑みながら言った。




「あなたのお祝いですよ。1番弟子さん」



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