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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
14/105

第13節 幼馴染

 アナウンスが入ったあと、ステージは元に戻り、シオンの大木は霧散した。

 霧散した緑幻素は大木の中にあった杖に集まり凝縮していき、やがて杖はまるで2つの木がねじり合ったかのような姿に変化した。


 シオンは地面に突き刺さっているそれを手に取り、急いでアオのもとへ駆け寄った。


「すいません、やりすぎました。……大丈夫ですか?」


「……はい」


 アオはゆっくりと立ち上がる。瓦礫での負傷はスーツが治療してくれているので、アオの身体には目立った外傷はない。


 俺たちも客席を出てすぐにアオたちのところに行った。


「あ、先輩——


「シオン!君すごいな!!あんなに大きな木を創り出すなんて」


「いえ、大したことじゃないですよ」


 そう言いながら、シオンは俺から顔を背けた。

 俺は不思議に思いながら、ふと彼女の杖が変わっていることに気がついた。


「その杖どうしたんだ?そんなカッコいい見た目してたか?」


「先輩も"新しい武器"を使ってたので、私のも少し変えてみたんです」


「名前とかは付けないのか?俺はつけたぞ。その方がかっこ……分かりやすいし」


「名前ですか、そうですね……」


 シオンは暫く考えたあと、呟くように言った。


「……ルジュナ」


「お、いいんじゃないか」


「はい、この名前にしようと思います」


 彼女はそう言って手に持つルジュナを眺める。


 彼女の顔からは、どこか哀愁を感じ取れた。


 一方、俺と一緒に来たルナは真っ先にアオのもとへ駆け寄っていた。


「アオちゃん!大丈夫?」


「……うん。ありがとう、ルナ」


 アオはそう言ってルナに笑いかけた。

 だがルナにはそれが苦し紛れに言っているように見えた。


「アオちゃん……」


「……シオンさん、とっても強かったよ。あの人だったらルナを任せられるかな」


「アオちゃん、私——


「——じゃ、私そろそろ帰るね。もう試合もないし」


 そう言って、アオは台から降りて出口に向かおうとする。


「待ってアオちゃん!!」


 ルナは必至に引き留めようとするが、彼女の足は止まらない。そのまま何も言わずに訓練場の外に出て行ってしまった。


「ルナ、アオはどうしたんだ?」


 俺はシオンと暫く話をしていたが、周りをみるとアオの姿がないことに気がついた。ルナは台の端で茫然と立ちすくんでいる。そんな彼女に俺は声をかけた。


「先輩、師匠……」


 彼女は今にも泣き出しそうな顔で俺たちを見つめてくる。アオがこの場にいないことからも、彼女との間で何かがあったことは間違いない。


「ルナ、どうしたんです?私が勝ったので、あなたは弟子になれますよ」


「それは嬉しいんですが、その、アオちゃんの様子が変なんです」


「私が話しかけたらすぐに帰っちゃったし、なによりとても苦しそうな顔をしていたんです……」


 どうやらルナ自身はアオの気持ちに気が付いていないらしい。ここは先輩として、しっかりと気が付かせてあげるべきだろう。


「ルナ、ルナは確かアオと幼馴染だったよな」


「はい、そうです」


「つまりは今までずっと一緒にいたわけだ」


「……はい」


「俺はそういう友達がいないから、ちょっと羨ましいぞ。きっとお互いに助け合ってきた仲なんだろな。もしそんな友達が自分の元から離れていってしまうのは、俺だったら耐えられないな」


「……あ」


 ルナはハッとした顔で何かを考えだした。


「私、アオちゃんのこと探してきます!!」


 そう言って彼女は出口の方へ走っていった。


「先輩は優しいですね」


「あーゆう友達は大切にした方がいいからな」


「先輩、このあとどうします?」


「そうだな……」


(ルナはこれで晴れてシオンの弟子になったわけだし、何かお祝いでもするか)


「シオンはあいつらを追いかけてくれ。俺は寮でやることがある」



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