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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
13/105

第12節 それを見つめる者

「おいおい、アゼンがひさびさに出るっていうから来てみれば、とんだ化け物がいやがった」


「ナズナ、あの量の緑幻素を君は出せるかい?」


「うーん多分無理。緑幻素ってそもそも量より濃度が重要視されてるから、あまり多くしようと意識したことはなかったね」


「ふん!私だったらあんな木、一瞬で灰に変えてやるわ!!」


「それより皆さん見ましたか!?アゼンさんの勇姿を!ステージの幻素ですら消し去ってしまうなんて、流石は僕の憧れの人です!!」


「う、うん……すごかった……ね……」


 訓練場にある特別観覧室にて、"センテンス"の面々が模擬戦闘訓練の視察をしていた。彼らの目的はあの問題児アゼンの様子を見ることだったが、突如として現れたシオンという"ワード"の生徒に皆驚愕している。


「あの子、一体何者です?」


 葉でできたドレスを身に纏わせ、双眼鏡を覗きながらナズナが尋ねた。


「アゼンの話じゃあいつのクラスメイトで最近一緒の寮で過ごしてるらしいぜ」


 隣に立っていた盾持ちの屈強な男がそれに答える。


「ヨカ、その話本当?……てかなんでセンテンスを卒業したあんたがここにいんのよ!!」


 ユメコはそう言ってヨカめがけて大剣を突き出す。


「まぁいいじゃないですか、ユメコ。それよりも議論すべきことがあるでしょう?」


 そんなユメコを肌白い美男子が冷静にとりなした。


「それはなぜあの子が"ワード"なのかってことかしら、アルくん」


「ええ、そうです」


「確かに、量は規格外だし、濃度も悪くない……うーん変ですね」


 皆が首を傾げる中、ひとり恐る恐る手を挙げる少女がいた。


「……あ、あの……もしかしたらその子……回復系の技が使えない……とか?」


「なるほど、ヒーラーとしての役割を任される緑使いとしては致命的だね。さすがヨルちゃん!よく気がついた!」


 そう言って、ナズナはヨルの頭をくしゃくしゃになるまで撫で回した。


「う……激しいですぅ……」


 そんな2人を横目に見ながら、ヨカは疑問を口にする。


「だとしても、あの火力ならせめて"クラウズ"には所属しているべきじゃないか?」


 その問いに答えたのは、後から観覧室に入ってきた、

 "生徒会長"であった。


「全ては学園長が下した判断だ。それを我々が詮索する必要はない」


 彼の一言で、その場にいた全員が後ろを向いた。肩まで伸びた白髪をなびかせながら、彼はコツコツと彼らに歩み寄る。


「これはこれは生徒会長様、随分と遅い到着で」


 アルはそう言ってわざとらしく手を胸に当てお辞儀をした。


「……アル、次の遠征場所が決まった。アクール大陸のムガンダ国南西にある小さな村、そこで大規模な"魔獣"の群れが発生した。そこに明日から向かうことになる」


「正規部隊はどうしたのよ」


「きっとアトムスの活動を探るのに忙しいのでしょう。我々は会長の言う通りにするべきです」


「……ヨカ、あんたは全然忙しそうに見えないんだけど」


 ユメコはそう言ってヨカを怪訝な表情で見つめる。


「今日だけ特別さ。俺だって明日には仕事に戻らなくちゃならない」


「……要件は伝えた」


 そう言って、生徒会長はすぐさま出口の方に向かった。


 するとその背中にナズナが慌てて声をかけた。


「まって……ねぇ、あのシオンって子について、貴方は学園長から本当に何も聞かされていないの?」


 会長は振り返らずにこう答えた。


「……ああ、私は何も知らない」


 ——何も、知らされていない


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