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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
10/105

第9節 私だけの

 ルナは今、苦悩している。


 何に苦悩しているのかといえば、アゼン先輩にどうやって勝つかである。教室では嬉しさのあまり勢いで承諾してしまったが、私は入学試験ワースト10位の落ちこぼれ。アゼン先輩はアレでも白使いである。1対1で戦ったら確実に負ける。なので……


「アオちゃんお願いします!どうか私と一緒に戦ってください!」


 私はカフェのテーブルに思いっ切り頭を擦り付けながら懇願した。


「ルナって人に頼ってばかりだよねー」


「う……その通りでございます……」


 この子の名前はアオ。

 私の幼馴染で、今年一緒にビィビィア学園に入学した。成績優秀で階級は飛び級してクラウズに所属していて、透き通った青い髪をいつも後ろで束ねている。


「別に戦うのは構わないんだけどさ、それってシオンさんは許してくれるの?」


「多分大丈夫だよ。模擬訓練は基本的に何人で戦っても大丈夫だから」


「そういうルール的なことじゃなくて」


 アオは少し怒り気味にこう言った。


「それでシオンさんはルナを認めてくれるの?」


「……え」


「シオンさんは"ルナが"アゼンさんに勝つことを条件にしてるんでしょ?それってルナの実力を見るためなんだよきっと。それなのに私に頼って勝って、それはルナの実力だって

 胸張って言える?」


「……」


 ……確かに。そんな方法で勝っても、たとえそれでシオンさんが許してくれても、私は私に納得できない。

 どうしても、どうしてもシオンさんの弟子になりたい、その気持ちばかり先走って、私は本当に大切なことを見落とすところだった。


「……ルナが大変な思いをしているのはわかる。だけど——


「ありがとう!アオちゃん!」


 私はコップのジュースを一気に飲み干して言った。


「私、自分1人でアゼン先輩に挑む!!」


 そう言い放った私を見て、アオちゃんは少し驚きつつも、笑顔でこう言った。


「なら、早速作戦会議を開かなくちゃだね!」


「え、アオちゃん、手伝ってくれるの?」


「当たり前でしょ。試合には出ないけど、ルナの特訓には付き合ってあげられるからね」


「あ、あ、アオちゃん〜〜〜!!」


「ちょっと!急に抱き付かないでよ!!」








 翌日、私たちは放課後、寮近くの広場で特訓を始めることにした。


「ルナ、昨日言った通り、ルナがアゼンさんに勝つ可能性は低い。実力も経験も、確実に劣ってる」


「はい……」


「そこでルナは、相手が予想外の攻撃で倒す他ないんだよ」


「予想外?」


「そう、劣っていると言っても、ルナはあと一歩足りないって感じなの。アゼンさんの過去の戦いをみると、確かに立ち回りとかはしっかりしてるけど、攻撃手段がないから結局負けてるわ」


 アオちゃんはそう言いながら、黄色幻素パネルを私に見せてくる。そこにはアゼン先輩ともう1人のペアで試合に出ている姿があった。


(アゼン先輩と組んでる人、誰だろう?)


「まぁ今回は流石に攻撃手段は用意してくると思うけど、普段から武器を使ってこなかったアゼンさんなら、ルナがギリギリ負ける実力のはず。だからその少しの差を埋める方法が必要なの」


「な、なるほど……」


 アゼン先輩をぎゃふんと言わせられるような、予想外の技、そんなものは持っていない……。


「ルナは確か、緑使いだったよね?」


「うん、そうだよ」


「攻撃に使えそうな技は持ってる?」


「あるにはあるけど……あんまり強くないよ」


「ちょっと見せて」


 アオちゃんはそう言うと、私から離れた場所に移動した。


「いくよー!」


 そう言って私は持っていた杖を地面に突き刺す。

 緑幻素を地中に流し込み、それを何個かの粒に凝縮させる。


「えい!」


 地面から杖を引き抜くと、粒から先端の尖った植物が生えてきて、アオちゃんめがけて伸びていく。


「へぇ……なるほどね」


 アオちゃんは弓を構えて、青幻素で造られた矢を放った。


 するとその矢は分裂し、全ての植物を瞬く間に撃ち抜いた。


「いい攻撃だったけど、ちょっと火力が足りないね」


「うう……これで最高火力だよぉ」


「うーん……あ!そうだ!」


「うん?」


 アオちゃんは何か閃いたのか、目を輝かせながら私のそばまで来る。


「さっき出してた緑幻素の粒って、少しの間そのままの状態なんだよね?」


「う、うん。そうだよ」


「だったらこうすればいいんだよ!」


 アオちゃんは興奮気味になりながら私にアイデアを伝えた。


「わ、私にそんなことできるかな……」


「できるできないじゃなくて、やらなきゃ勝てないでしょ」


「……わかった!私頑張ってみるよ!」


 こうして私は、"私だけの技"を特訓した。




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