プロローグ
「ねぇ、アリスは知ってる?」
「何を?」
「この世界の外側のこと」
「外側?宇宙のこと?」
「違うよ。海の向こう側のことだよ」
「ティア、海に向こう側なんてないよ。だって地球は丸いんだから」
「丸くないもん!」
「どうしてそう思うの?」
「パパが教えてくれたの。海の外側には4つの世界があって、
1つ目は"地下水路の庭"
2つ目は"循環する戦争大陸"
3つ目は"暴食の食べ残し"
4つ目は……忘れちゃった」
「……ティア、あの人の言うことは信じちゃダメだよ」
「ねぇアリス、私ね、いつかこの施設から出たら、いっぱいいっぱい旅をしたいの!もちろんアリスとロムも一緒にね」
「私はともかく、ロムは行きたがらないと思うよ」
「大丈夫。いつも文句ばかり言うけれど、なんだかんだで私の意見に賛成してくれるから」
「だからねアリス……ぜったい、実験を成功させようね」
「……うん、そうだね」
私たちは真っ白な部屋の外に飛び出す。
外にはパパが待っていて、私たちの手を取り、ゆっくりと歩き始める。
私は、この後どこにいくのかを知っている。
そして、何をするのかも。
ロムがどうして戻らなくなったのか、私は、知っている。
「……ティア」
「なに?アリス?」
「……ティアは絶対、ティアのままでいてね」
「?、もちろん!」
ティアは元気な声で返事をしてくれた。
それと同時に、私たちは実験場にたどり着く。
「さぁ、ティアは中に。アリスは私と来てください」
「またねアリス!」
そう言って、ティアは実験場の扉を開けた。
パパは私の手を握ったまま、観察場への入り口に向かう。
パパの手は、大きくて冷たい。
私は、この手を生涯、忘れることはない。




