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幻素が漂う世界で生きる  作者: 川口黒子
新学期編
1/105

プロローグ

 



「ねぇ、アリスは知ってる?」


「何を?」


「この世界の外側のこと」


「外側?宇宙のこと?」


「違うよ。海の向こう側のことだよ」


「ティア、海に向こう側なんてないよ。だって地球は丸いんだから」


「丸くないもん!」


「どうしてそう思うの?」


「パパが教えてくれたの。海の外側には4つの世界があって、

 1つ目は"地下水路の庭"


 2つ目は"循環する戦争大陸"


 3つ目は"暴食の食べ残し"


 4つ目は……忘れちゃった」


「……ティア、あの人の言うことは信じちゃダメだよ」


「ねぇアリス、私ね、いつかこの施設から出たら、いっぱいいっぱい旅をしたいの!もちろんアリスとロムも一緒にね」


「私はともかく、ロムは行きたがらないと思うよ」


「大丈夫。いつも文句ばかり言うけれど、なんだかんだで私の意見に賛成してくれるから」


「だからねアリス……ぜったい、実験を成功させようね」


「……うん、そうだね」


 私たちは真っ白な部屋の外に飛び出す。


 外にはパパが待っていて、私たちの手を取り、ゆっくりと歩き始める。


 私は、この後どこにいくのかを知っている。


 そして、何をするのかも。


 ロムがどうして戻らなくなったのか、私は、知っている。


「……ティア」


「なに?アリス?」


「……ティアは絶対、ティアのままでいてね」


「?、もちろん!」


 ティアは元気な声で返事をしてくれた。

 それと同時に、私たちは実験場にたどり着く。


「さぁ、ティアは中に。アリスは私と来てください」


「またねアリス!」


 そう言って、ティアは実験場の扉を開けた。

 パパは私の手を握ったまま、観察場への入り口に向かう。


 パパの手は、大きくて冷たい。


 私は、この手を生涯、忘れることはない。

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