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1)子供たちへの提案

 孤児院の一室に子供たちがあつめられた。全員、ローズが横領について調べるときに協力を頼んだ子供達だ。スリ、物乞い、空き巣、ひったくりに関わっていた。物乞いはともかく、他は全て間違いなく犯罪だ。

 処罰したいわけじゃない。横領をどうやって解決したか調べるだけだ。王族の特権を使い、過去の軽犯罪歴は不問にしてやると、アレキサンダーはローズを説得し、子供たちの名前を聞き出した。総勢二十人弱、想像以上に人数が多かった。   


 ローズが計画を立て、双子の少年が実際の指揮をしていたとローズは語った。その双子の一人は既に亡いとローズは言った。


 互いのことを知る子供達は、処罰におびえ、警戒し、アレキサンダーとロバートを見ていた。

「お前たち、以前に、悪い大人をやっつけようと、リゼと協力したな。悪い大人はたくさんいる。悪い貴族もたくさんいる。悪い大人を、もっとたくさんやっつけたくないか」

 アレキサンダーは、ここ数日をかけて用意した言葉を語った。聡いローズを基準に考えては、子供達には伝わらないという子供のいる家臣の意見を参考にした。


 唖然とする子供たちにアレキサンダーは続けた。

「リゼは今、ローズという名前になって私のところにいる。成長したら、私と一緒にこの国のために働くことになっている。悪いことをする大人はたくさんいる。隠れて悪いことをする奴のほうが多い。町にもいるし、村にもいる、当然、王都にもだ。身分など関係ない。平民にも、貴族にもいる。私やリゼはそういう悪いことをする者を、捕まえて、裁き、この国をよくしたい」

 落ち着きのなかった子供達が、真剣にアレキサンダーの話を聞きはじめた。

「隠している悪事を裁くのは大変だ。誰が悪いことをしているかを、つきとめて、どこかにある証拠をとってこないと、悪いことをしている者を裁けない。そういう仕事をしないか。悪いことをしている大人を裁く手伝いをする者を私は集めている。お前たちの仲間で、私とリゼが悪いやつを捕まえる手伝いをしたい奴がいたら連れてきてくれ。1週間後に私はまたくる。私が悪いことをする大人を捕まえる手伝いをしてくれるというなら、1週間後にこの部屋に集まってくれたらいい」


 身を乗り出し、今にも返事をしそうな子供もいた。だが、最大の問題点は命の危険だ。

「簡単に決めるな。命の危険がある。殺されるかもしれない。私も、何度も私を殺そうとするものに襲われた。私に仕える者が、一度に5人も毒殺されたこともある」

子供たちの間に緊張が走った。

「リゼもここにくるが、いつも近衛兵が一緒だ。なぜ、リゼが近衛兵とくるかわかるか。近衛兵は強い。リゼはとても弱い。悪いことをしている貴族は、リゼが大きくなって私の元で仕事を始める前に、リゼを殺したいんだ。そういう貴族を捕まえるにも証拠がいる。悪いことをしている証拠は、そう簡単にはみつからないところに、隠してあるから、探すのも大変だ」

子供たちは騒がずにこちらを見ていた。


「リゼじゃ、忍び込めないから、俺たちが忍び込むの」

子供の一人が言った。

「そうだ。と言ってもすぐじゃない。そういうことをしている大人がいるから、そういう大人に教えてもらって、一人前になってからだ。沢山練習がいるから大変だが、教えてくれる大人はいる」

「リゼは大丈夫なんでしょうね」

腕組みした少女がこちらを睨みつけていた。

「正直に言えば、危ない。だから、王太子宮の外には一人では絶対に出かけない。必ず護衛が一緒だ。ここに一人で来たことはないだろう」

「俺たちがもし、そういう仕事をして、死んじゃったら、リゼに言うの。リゼ、泣き虫だから」

「今、そういう仕事をしている大人がいるといったな。彼らは私や私の父が命令している。だから、私や父は、彼らが死んだとき、ちゃんとわかるようにしている。命令した者の責任だ。とても遠くで死んでしまうことが多いから、葬式をしようにも遺体がない。それでもちゃんと弔うために、誰が死んだかわかるようにしている。それは、私や父のけじめだ」

 影と呼ばれる彼らの存在を知るものは少ない。王族と、ごく一部の側近だけに限られている。

「俺、俺が死んじゃっても、リゼに内緒にしてくれるんだったら、俺、やる。リゼは泣き虫だから俺が死んだって言っちゃダメ。悪いやつは、弱くて泣き虫のリゼだけじゃ、やっつけられないもんな」

あっけらかんといった少年に、一部が賛同し始めた。


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