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6)贈り物

王太子宮に宝飾職人たちがやってきた。職人たちは、手によりをかけた逸品を手に謁見の間に現れた。

次々と豪華な品が現れ、一部には対価が支払われ、一部はそのまま職人の手に返された。きらびやかな品々にあちこちから歓声や嘆息が聞こえる中、警備の者や、ロバート達近習は周囲を警戒していた。全員身元は確認しているはずだが、何せ人が多い。

「あと、先日追加でご注文いただいた品はこちらにございます」

職人たちの頭領が箱を示した。

「あぁ、それは連絡したとおり、後でみせてもらう」

ローズのために、とアレキサンダーが注文したものだろう。ロバートは一瞬その箱を見たが、また警戒に戻った。


 謁見の間での時間が終わった。その後は例年どおりであれば、頭領を相手に茶会となり、次の品の相談をすることが多いが、今年は違った。

「こちらでございます」

頭領が広げた箱の中には、可愛らしい腕輪や首飾り、髪飾りが用意されていた。

「あまり豪華なものは好まない、お若いお嬢様に差し上げるとお伺いし、私共で創らせていただきました。華美は避けましたが、どれも一級品と自負いたしております。お気に召しますかどうか」

 頭領は深々と頭を下げた。自信がありそうな言葉であったが、伺うような頭領の視線に緊張感を感じた。


 頭領に負けず劣らずロバートも緊張していた。様々な装身具が、それぞれに個性を主張している。ローズに何が似合うか、どれを好むかなど分からない。

「どう思う?」

アレキサンダーに聞かれてロバートは困り果てた。

「どうも、女性のものはわからないので」

「お前が身につけてほしいものを選べばいいだろう」

「そうおっしゃられましても」

普段、グレースの身を飾る宝石は見慣れている。それが今度、ローズの身を飾るとなると、何を選んでいいのかなどわからなかった。

 

 頭領の勧めもあり、ローズをよんで、本人に選ばせることにした。一つ一つ手に取り眺めるローズは可愛らしかった。ローズが選んだ、細かい細工のブローチを服に留めてやると嬉しそうに笑った。首飾りは少し大きいようだが、白い首によく映えて、一瞬目のやり場に困った。子供から大人になろうとしているのだ。


 王太子宮に来たばかりの頃から比べたら、少しは背丈も伸びた。痩せて見すぼらしかった体型も、人並み程度にはなった。

 グレースに十七歳まで結婚は許さないと厳命されている。ライティーザでは十六歳からが大人だ。本当はローズが十六歳になったときに、結婚したい。


 国内は、アレキサンダーが、イサカの町とその周辺を、戦わずに掌握したことで、王太子として認める機運が高まった。反対派がまだいることは分かっている。西のリラツ王家から王子を迎え、傀儡にすると言う計画が頓挫した今、彼らが次にどんな手を打とうとして来るのかはいまだわからない。

 隣国との関係では、大河を挟んだ東のティタイト、身を隠すもの一つない草原地帯を挟んだ南のミハダルとの関係は、きな臭いままだ。


 いつ、何が起こるかわからない。今の安定が長く続く保証はないのだ。せっかく婚約したのだから、ロバートも結婚して、子供を、家庭をもってみたかった。夢見ているといっていい。子供は二人以上がいい。一族の枷は、一人で背負うのには、あまりに重くつらいものだ。


 内憂外患いずれが問題となっても、王太子の近習として、あるいはそのときにアレキサンダーが国王であれば国王の近習としてロバートは最も身近にいる。ロバートの身命を賭しても、ライティーザのため、ライティーザの民のため、アレキサンダーを守らねばならない。


 国内で表立っていがみ合うような政争が無く、隣国との戦のない今が長く続くことは困難だ。一年が惜しかった。

 濃い血縁関係がある西のリラツと、国境に万年雪をいただく山脈がそびえるウィルザとの戦を、ほぼ考えに入れなくてよいのは助かる。


 本人の意図と関係なく、アレキサンダーと王太子の座を争うことになりそうだったリラツの第三王子は、行方不明だ。もとから王宮を抜け出し、リラツの王都で、商人に化けたりしていた男だ。大問題だが、どこかで好きなように生きているだろう。駆け落ちしたという噂もあった。いずれにせよ、リラツ国内のことであり、ロバートは静観するしかない。

 一族の枷に縛られず、好きなように生きることを選んだのだろう。ロバートは少し、羨ましかった。


第二部お付き合いいただきありがとうございました。

幕間もありますが、第三部に続きます。


ロバートはローズが身に着けたらなんでも可愛いと思ってしまうので選べと言われても、困るだけです。宝石にも興味はないです。

装身具の構造には興味あります。毒針などの仕掛けが気になるだけです。

 本人が選ぶよう提案した、頭領はさすがの判断です。


6月27日10時 幕間更新予定です。

鉄仮面の微笑み(宝石職人の頭領) https://ncode.syosetu.com/n1897gy/

宝石職人の頭領視点のお話です。お楽しみいただけましたら幸いです。

(ロバート視点は、「ローズが可愛い」で終わっています)



6月28日7時から第三部投稿開始です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第二部もとても楽しく読ませていただきました! [一言] 平穏が少しでも長く続いてローズとロバートに幸せになってほしいと思いました。
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