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1)色町の犯罪

残酷描写あります。苦手な方は、次話へお進みください

 アレキサンダーが、苦々しい思いで、前をいくロバートの背を睨んでいるときだった。

「あの、偉いほうのお兄様。色町って何歳からいいのかしら」

振り返ると、耳にした声のとおり、少女がこちらを見ていた。リックもこちらをうかがっている。


「なぜ、そんなことを聞く」

そもそも、色町で春を売るのか買うのかあいまいな質問だ。なぜ、そんな質問をするのかもわからない。

「十二歳って色町で客取ったらだめよね」

「十六歳からだな」

この小汚い娘も、色町で春を売るというのか。


「火つけられて死んだミリーさ、色町で客取らされそうになって、嫌がって逃げて、客に火つけられたんだ」

「娘として引き取るって言ったのに、色町に売りやがったのさ」

「十二歳くらいだったのよ。ミリーって。ちょっと育ってたけど」

最初に声をかけてきた少女が、胸の前で手を動かした。子供だが、体をくねらせ妙に色気のある手つきだった。小汚いが色気のある少女と、あのローズが同じ孤児院で育ったとは本当に信じがたい。


「どういうことだ」

統治者であるアレキサンダーには聞き流す事ができない内容だった。


リックが真剣な目をしていた。

「これからは、リゼも知らないことだ。色町のことなんて、あいつには言えねぇ。どこの店が子供に客をとらせているか、俺たちは知ってる。そこの客に、貴族がいる。下手に俺たちが知ってるってばれたら、孤児院そのものがあぶねぇと思って、黙ってた。なぁ、兄ちゃん、偉いよな。偉い兄ちゃんならなんとかなるか」

「何とかなるだろうな。ただ、到着してから話を聞く」


 警護を近衛兵から近衛の制服を着た影に入れ替え、王都の外れにある離宮の一つに子供たちを連れて行った。かつては本当に離宮として使用されていたが、数カ月前から影の兵舎になっていた。


 ローズは、“記憶の私”から興味深いことを教わっていた。その1つが「木は森に隠せ」という言葉だ。その言葉通り、影の兵舎となった離宮は、周囲から王家の離宮だから警護する人間が多いと認識されていた。影の長が、「昼間から堂々と、玄関から屋敷に入る日が来るとは」と、感慨深く言ったほどだ。


「リゼには言わないで。ミリーの話は、あいつ泣くから。ミリーが死んで、そのあと俺たちでリゼの真似して調べたんだ」

 リックと、声をかけてきた少女が語った内容は、子供たちなりに、よく調べ上げたといってよかった。


 売春宿の中に、許可された年齢に満たない子供に客をとらせているものが複数ある。そういった店は客と合言葉などの特殊な手段を持っている。定期的に客としてきている貴族や商人たちに関しては、屋敷や定宿まで把握されていた。


「リゼが、下手な大人に知らせたら、口封じに殺されるから、相手は選ばないと駄目っていってたから、困ってた。王太子様がきてくれてよかったよ」

リックがいい、周囲の子供たちが頷く。


「私が行く前にも、近衛をつれてきていた貴族がいたろう。レオンだ。レオンは信用できるが」

「リゼにばれそうでさぁ。リゼに色町の話なんてなぁ。いや、別にお産とか手伝ってたから、リゼも知ってるけど、言いにくくて、なんかなぁ」

子供たち、とくに少女たちが頷く。


「リゼって、ちょっと、なんというか、そういうのに疎いし、そういう話もほら、出来ないのよ。あの子相手だと」

「リゼが相手だと、コウノトリの話をしないといけない気がするのよ」


近衛の制服を着た影達の肩が震えている。よく耐えている方だろう。

「まぁ、兄ちゃん頑張れ。あいつも知らないわけじゃないからさ」

リックに言われたロバートは苦笑した。

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