表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死にたいメンヘラちゃんの救済法

作者: アルミ缶

「死にたい…」

自分でも引くくらいどんよりとした顔をして私はそう口にした。幼馴染のあいつは、そんな私を前にして笑ってこう言った。


「だーめ」


ちくしょう。こいつ、私がこんなに辛そうな顔をして弱音を吐いてるってのになんで慰めの言葉一つもくれないんだ。それどころか軽く笑い飛ばしやがって。悔しい。

「死にたい」ともう一度言ってみる。

「だめ」

「なんで」

彼はそうだなあ、と少し視線を上にやって考える仕草をした後、「だってまだお前テストで100点とったことないじゃん」と笑った。

へー、テストで100点取らなきゃ死んじゃいけないなんて決まりあったんだ。知らなかった。ってあるかっ、そんなの。心の中で突っ込む。


ええそうですよ、私はどうせバカですよ、赤点の申し子ですよーだ。でも、そんな風に言われて本当に100点を取らないまま死んでしまったら、あの世に行っても悔しさでまた死んでしまいそうだったから、今死ぬのはやめた。そんなに言うのなら100点取ってから死んでやろうじゃん。


その日から私は猛勉強をした。そして、その後3回目の定期テストでついに念願の100点を取ったのだった。

あいつに返却されたテスト用紙を見せびらかす。

「へえ、すごいじゃん」と驚く彼に「じゃ、今度こそ私死ぬから!」と宣言するとあいつはまた可笑しそうに笑って、だめだめ、と言う。理由を聞くと「だってお前まだ部活でスタメン入れてないじゃん」。

う、嫌なところをつく。確かに私は女子バスケ部のいわゆるシックスウーマンってやつだけども。わかった、そんなに言うならやってやるわ。スタメンだかブタメンだか知らないけど掴み取ってやる。運動神経はいい方ではなかったけど、その日から死に物狂いで苦手だったシュートを練習した。その甲斐あって、引退試合でついに私は初めてスターティングメンバーとして試合に出場できた。我ながら上出来ね。途中で足がつって交代しちゃったのは、目をつぶるとして。


「見たか!ちゃんとスタメンで出たぞ!」と応援にきてくれていたあいつにドヤ顔で報告すると、あいつは「見てた見てた」と笑った。

「じゃ、今度こそ…」

「いやいや、次は大学合格しなきゃ」

うー、学のない死人は閻魔様に嫌われるってことね。仕方ないから必死に勉強してなんとか志望の大学に合格した。なんか偶然あいつとおんなじ大学だった。キャンパスであいつに遭遇したのでアピールする。

「見たか!じゃ…」

「次はサークル入らないと」

それもそっか。社交性ないと天国でもやってけないだろうしね。

「入ったぞ!これで…」

「恋愛経験もないとなあ」

うー。正論じゃん。どうやったら彼氏ってできるんだろう。

「俺と付き合ってよ」

え、今なんて言った?


付き合うことになった。いろんなところに行って、いろんな思い出を作って、なんだかとても楽しい。時が飛ぶように過ぎていく。ある時、彼とカフェでだべりながら気づく。はっ、これでひょっとして恋愛経験もクリアしたのでは!?

「ねえ!これで恋愛経験もクリアだね!」

「そうだねえ」

気の抜けた声で彼は返事をする。相変わらずつかみどころのないやつ。

「じゃあ…」

「じゃあ、何?」

あいつは私の目の前で楽しげに私の顔を見つめている。

「えーと、じゃあ…じゃあ…」

私は一体何をしようとしてたんだっけ。目の前でニコニコしているこいつに言われるがままにがむしゃらに生きていたら、忘れちゃった。でも、まあいいか。今私はとっても幸せだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あまーい!と叫びたくなる作品ですね。 彼、メンヘラちゃんの事が好きなんだなあと思っていましたが、引き止め方が本当に素敵で最後も甘々で、読後思わずニヤけてしまいました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ