化かし077 挽歌
夜の大江山。
黒に浮き沈む大地の眉々。そのひとつの頂。
篝火がひとびとの影を映し出す。
酒や肴を囲んだ彼らは、逝ったふたりの思い出を語り、盃を回し合う。
「どうじゃ、タルクマの醸した酒は?」
「うむ」「なかなかであるな」
鬼の首領が友を果たした陰陽師たちに勧めている。
酒飲みのミズメもまた盃を頂戴しているが、それとは別に鬼酒刀禰が特に自慢としていた品を一瓶、出逢いの記念に贈られていた。
彼女の横に座する巫女はなにやら湯呑みを“どこへともなく”しまうように頼み、何かの薬を服用していた。
「舞をご覧に入れましょう」
石熊が扇子を片手に水干の袖を振る。
「相変わらずきらきらしい見事な舞。ああ、妬ましい」
鬼女イチジョウが嫉みを向ける。
「イシクマさんは男の子じゃ?」
オトリが首を傾げた。
「弟は男だけどよ、寺で稚児をやってたんだ。坊主どもは大切にしてるって言ってたけど、俺にはそうは見えなかった」
答えるのはイシクマの兄のカネクマ。
彼はオトリの隣に座り、トラクマが狩って調理した猪の脚にかぶりついている。
瀕死の重傷から救ってもらい、目が醒めてからは巫女の躾けにまったく大人しく従うようになっていた。
酒呑ノ鬼の仲間ではないと言っておきながらも、此度の宴の仕度の手伝いを自発的に行っている。
オトリ曰く、「カネクマさんはもしかしたら、自分のせいでおふたりがなくなったと感じているのかも知れません」とのことであったが、宴の最中、彼女の横顔を頻繁に偸み見ているカネクマ少年の姿が見受けられ、ミズメは苦笑した。
「稚児は女のようなものだからな。しかしそれも長くは続くまい。いずれ大人になれば、その化粧も眉墨も不釣り合いとなるはず」
言いつつも鬼女は睨み続けている。
「大人になれるのかい? あたしは物ノ怪になった時から、ずっとこの容姿のままだけど」
「イシクマはまだ人の身なんじゃ。ここに入った時に鬼の名だけ揃いにしてな」
シュテンが言った。
「名前はおまえらが勝手に呼んでるだけだろ! こいつは鬼にはさせねえ!」
兄が口から食べかすを飛ばし、腰を浮かせながら言った。巫女が行儀を注意すると大人しくそれに従う。
「鬼になんて成らないほうが良いわ」
オトリは口を尖らせる。
「そりゃ、鬼に成らずに済むならそのほうがええじゃろうが。……イシクマは果たしてそうじゃろうかのう」
「む、どうしてですか?」
「鬼に成ると角が生えたり体つきが変わっちまうこともあるが、大体は歳を取らんくなる。兄のカネクマは鬼じゃ。ずっとそのまま若いかもしれん。イシクマがじじいになってもな」
「若いまま……」
首領の指摘にオトリは呟き、他の面々の顔を見まわした。
――あたしも、自分だけが歳をとったり、とらなかったりするのは御免だね。
酒を呷り、これまでに出逢った人や物ノ怪との挿話を思い流す。
「若さだけじゃねえがな。どうも時が止まったまま……いや、ちげえな。季節が止まったままな感じがする」
醜鬼は見上げる。彼の目に見える木々は何色の季節であろうか。
「妾は一番良いときに鬼に成ったと思う。永遠の若さよ。これだけは都の女どもに感謝してもよい。あやつらはいずれ醜く老いさらばえるのだ」
鬼女は妖しく高笑いをした。
「……季節が止まったままねえ」
ミズメも頭上を覆う枝々を見る。その向こうには三日月。
――あたしは最近になってようやく時が動き出した、そんな気がするよ。
言い得て妙だと思ったが、逢魔時の時分では空の変化も激しい。彼女にとっての生は常に季節や月齢を意識する日々でもあった。
頬隣に座る相方からの視線と、憂鬱のそよ風を頬へ感じる。
「私は兄様が鬼に成れと仰れば鬼に成りますし、成るなと仰れば成りません」
殊勝に答える弟イシクマ。兄は腕を組んで沈黙している。
「しかし、私には鬼に成る仕組みというものが分かりませんね」
稚児は首を傾げる。
「角の生えた人の身の物ノ怪を一括りにそう呼んでおるだけで、実際には鬼にも様々な種類があるのだ」
ミヨシが口を開く。
「死して魂だけになり、なんらかの理由でこの世に留まったさいに、悪心と強い霊力が備わっておれば邪気が肉を成す鬼と変ずる。あるいは、ユキクマ殿のように、黄泉國からの干渉を受けて鬼にされてしまう者や、地の底より訪れる生粋の黄泉の尖兵がおる。そして、ここに居る者の多くは、人の身として生きながら何かに囚われて陰ノ気を貯え過ぎて鬼化した者であろう」
物ノ怪も同様だ。悪霊もまた何かの形を取れば物ノ怪と呼ばれるし、鬼もまたその括りの範疇となる。半妖半鬼は、人との境すらも曖昧である。
「陰ノ気とはどういった気なのですか?」
「怨み、怒り、悲しみ、妬み、執着などの暗い気持ちからなる霊気だ。こういった気持ちは伝播し、ひとりでに増えたり、誰かにうつったりもする。穢れとも呼ばれており、それを俺たち陰陽師やオトリのような巫女が祓うのだ」
「なるほど。では、私もいつか鬼に成ってしまいますね」
「ここの連中は上手く陰ノ気を抑え込んでおるから、気に当てられておまえが鬼に成ることもないと思うが……」
「そうではありません。兄様が私を想って鬼に成ったわけですから、兄様を想う私が鬼に成らないはずはないのです」
美童子イシクマは笑顔で言ってのけた。
「ま、鬼も悪い者ばかりではないがな。俺たち陰陽師の識神だけでなく、坊主連中も経で改心させて使いにすることがあるというし。理由は様々であるが、成したことが善であれば、とやかくいうものではないのだろうな」
「俺も獲物の追い過ぎで鬼に成ったが、里に出辛くなったくらいで人の身だった頃と大して変わらん暮らしをしておる」
トラクマが言った。
「トラクマはどうして大江山に来たんだい?」
ミズメが訪ねる。
「ちょっとした“言いわけ”だな。狩りへの執着はあるが、山や森への感謝や礼儀は捨て置けない。命に対して無礼にならぬように、かつ満足ゆくまで狩りをしようと思えば、大喰らいの多い同族どもと暮らすのが都合がよい。胃袋の数は減ってしまったが、育ち盛りが飯を食うようになったから、俺は変わらず獲物を追って山を駆けるつもりだ」
狩人が言うと、少年が「育つかは知らねーけどな」とぼやいた。
「育つじゃろ。一番大喰らいじゃったあいつの腹はどんどんでかくなっとったし。これからは飯も酒も減りが遅くなるし、力比べも休業じゃから、人里に出る理由が減っちまうか。ちょいと寂しい気もするのう」
「善行をなさるなら、里へ下りてもよいかと思いますが。鬼の大力や術は暮らしの助けに……」
漂泊の巫女は言い終えずに言葉を切り、下を向いた。
「いつか変わるかもしれないよ。人の目もさ」
ミズメは取り繕ってやる。
「構わんさ。俺たちは醜い鬼じゃ。幸い、山の女神さんは俺らのことを嫌っとらんようじゃしの」
三日月を取り囲む木々へ盃を掲げるシュテン。
篝火の映す草木は春。しかし、梅や桜のような華やかな木はここにはなかった。
「金縷梅」
唐突に、播磨晴明が声を上げた。
「金縷梅の花は地味で捻じくれておるし、取り立てて食事や薬事に役立つものではない。だがこれは、春になるとまっさきに咲くのだ。秋には他の木々と共に紅葉し、冬でも葉が落ちづらく、雪の下でも若木は成長を続け、自ら弾けて種を蒔く力強い木なのだ。私はこれが嫌いではない」
彼は目立たぬ黄色い花を見上げている。桜の季節に残花の金縷梅。
「そうか……」
鬼の首領は乱杭の牙を笑わせると、華やかな月空から質素な蔭の花へと盃を向け直し、一気に呷った。
「彼の岸に あべしと思ふ 並び月 胸に献は 未来の盃」
鬼が睦魂に捧ぐ挽歌を詠う。
酒で濡れた口元はこぶしで大仰に頬まで拭われた。
静寂の中、春の夜風が大江山を撫でる。そよぎの中にいくつかの哀悼の呟きが聞こえた。
「――――」
隣の巫女もまた、口の中で鬼にひとつ捧げていた。
ミズメは自身の不粋な音術の癖を戒め、骨なしとも言い切れなくなった相方の歌を忘れ去る。
「しかし、ねぐらが寂しくなると“茨木”の奴と別れたのも惜しくなってくるのう」
「イバラギ? それも鬼の仲間かい?」
ミズメが訊ねる。
「おう、昔の仲間じゃ。鬼に成ってまだ浅いころに一緒に悪さをしておった。凶暴な奴でのう。じゃが、俺は殺生を好かんかったし、真言坊主どもに挑戦するために行を積むと言ったら、修行をするよりも自分より弱いもんを相手にすれば良いなんて返されての。そっから仲違いをし始めて、信濃で悪行をした時にふっと居なくなっちまってそれきりじゃ」
「へえ」
「俺と似た理由で里を出たくせに、性根がせこくていかん。もう、どこかで退治されちまってるんじゃねえかのう」
寂しげに語る鬼。
「酒呑ノ鬼よ。おぬしが鬼に成った理由はなんだ? 今は力を失っているが、いずれまた俺たちとやいばを交えるかもしれぬ。その時に礼を持って斬ってやれるように聞いておきたい」
赤ら顔のミヨシが訊ねる。
「俺か。俺はな、こう見えても人の身だったころは美少年だったんじゃ。そこのイシクマは俺の若いころにそっくりじゃ」
酒呑童子が鬼化の挿話を語り始める。
今より二百年近く前、越後国にて人の身として生を受ける。
当時の綽名は“外道丸”。
容姿端麗の美少年で、稚児として寺で囲われていたが、外道の名の示す通り、戒律は守らず、霊力や武術の才を悪事に使い、乱暴と破壊の限りを尽くす悪童であった。
それを差し引いても、あるいはそれが妙な魅力を生み出したのか、寺の僧たちはそんな彼を甘やかし、里の女たちも挙って彼に惚れ込んだ。
貰った恋文や恋歌は星の数ほど。しかし、外道丸はそのすべてを辛辣な言葉で撥ねつけ、嘲笑っていた。
「俺は欲しいものは自分の力で手に入れてたからのう。相手の誘いに乗るのはどうも気に入らんかったんじゃ」
多くの男女を泣かせ続けた外道丸であったが、彼の罵倒にも折れずに何度も言い寄る女がいた。
「その執念に中てられちまって、とうとう俺は腹を決めたんじゃ。次に断ってもまだ来るようであれば俺の負けじゃ、ってな」
女は歌と共に文を渡してきた。外道丸はこころを無碍にするために編んだ貶しの返歌と共に恋文を炎で焼いてみせた。
すると女は、再挑戦でも断念でもなく、懐から包丁を取り出し己の喉へと突き立てることを選択したのである。
「俺はそれ以来、ずっと憑りつかれたままじゃ」
語る酒呑童子。彼の周囲には悪霊の姿は見えない。
「それで気が変わって寺を出て、外で暴れるようになった。暴れてるうちに元々でかかった身体が余計にでかくなって角も生えた。悪行の噂も広まって、伝教法師や弘法大師に山を追い出されたり封印されたり……。何度も挑戦したが、奴らは決して俺を滅したりはしなかったんじゃ。いつか勝つ気でおったんじゃが、連中は歳を取って先にくたばっちまった」
「なるほどな。それで不殺生を貫いているわけか。俺もおまえを退治するさいは、滅せず封印することを選ぶとしよう」
ミヨシが言った。
「馬鹿言え。今は力を失ってるが、万全だったらおめえにゃ負けんぞ。俺に勝ったミズメにも遠く及ばねえ」
鬼が歯を見せ笑う。
「む……やはりそうか。ミズメの実力をこの目で見たのは、じつはさっきが初めてだったのだ。正直なところ、オトリはともかく、ミズメよりは強いと思っていたのだが……」
ミヨシは盃を呷った。
「おっさんも精進しなよ」
笑うミズメ。
「おめえこそ、どうして陰陽師なんかになったんじゃ?」
「仕官したのは家のしきたりのようなものだ。代々一族から官人や法力僧を輩出しておるからな。俺もそれに倣ったまでだ」
鼻で嗤うミヨシ。
「なんじゃつまらん」
「とかいって、ミヨシのおっさんは自分の気に入らない命令には従わないし、仕事の合間を縫って自主的に化け蜈蚣退治に出向いたりしてるけどね」
「ほーう。鬼も色々じゃが、おめえらも色々なんじゃのう?」
シュテンは異端の陰陽師を見てにやにやした。
「おい、安倍晴明よ。おめえはなんで陰陽師になったんじゃ?」
「……」
返答無し。
ハリマノカミを見ると、なにやら手の中で小さないかづちを弄んでにやついている。
酒気に中てられたか、頬には僅かに紅が差していた。
「なんじゃ、こっちはよく分からんやっちゃのう?」
「シュテンの大将さんよ、あたしのことは聞いてくれないの? なんで物ノ怪になったのかーってさ」
ほろ酔いで鬼に絡むミズメ。
「おめえか? おめえはなんか……酒が不味くなる話が飛び出してきそうじゃ。元気が良いぶん、余計にそう思うわい」
意地悪く笑う鬼に、ぷいとそっぽを向かれる。
「ちぇっ。正解だよ」
同じ妖しの者の勘か。ミズメは苦笑する。
「気になるっちゅーのなら、巫女のほうじゃな。オトリよ、若い身空でそれだけの霊力を持った人間には滅多にお目に掛かれねえ。俺が術比べで手こずるような巫覡や僧侶には年寄りが多かった。おめえは一体、何者じゃ?」
鬼が巫女へと興味を示す。こちらもこちらであまり酒の肴に美味しい話ではないが……。
「うち? うちはねえ……だーれだ!? あはは! 分からんなー!」
オトリはけらけらと笑って答えた。
「なんじゃこいつ、酔っ払っとるのか?」
首を傾げるシュテン。
――おっ! 面白いことになりそうだね。
ミズメはほくそ笑んだ。これは酔っ払っている場合ではなかろう。
オトリは酒盛りが始まるさいに薬を服用していたが、あれは恐らく酒気が抜けるのを手伝うものだったのであろう。
彼女は「体質的にお酒に弱い」と言ってずっと勧めを断り続けてきた。
此度の飲酒の決意は恐らく、鬼たちの死へ敬意を示してのことなのであろうが、顔色が全く変わっていなかったために、ミズメはオトリが酒を口にしていないものだと思っていた。
「おい、シュテン!」
巫女が睨む。
――なるほど、酒が入れば笑うたちかと思ったけど、“そっち系”かい。
保食神に暴言を吐いた泥巫女を思い出す。喧嘩にならなければいいが。
「貴様! シュテン様を呼び捨てるとは何ごとか!」
猛ったのは鬼女イチジョウ。彼女は重い衣のままさっと立ち上がり、容赦なく鬼の爪を振り下ろした。
酔っ払いはそれをひょいとかわし、座ったままの大将の前に仁王立ちをした。
「鬼やんは“こいつ”のこと、どう思っとるんけ?」
再攻撃を企む鬼女をとっ捕まえ、シュテンの前に突き出しながら訊ねる。
「なんちゅう酔っ払いじゃ……」
呆れるシュテン。
「ええ仲なんやろー? さぞ、あたたい夜を過ごしとるんやろなー?」
お邦言葉で絡む巫女。
あまつさえ、捕らえていた鬼女の衣の袂に手を突っ込んだ。短く上がる嬌声に数名が酒を吹いた。
しかしシュテンは返事をせずに、隣にいるホシクマから盃を回してもらった。なにやらばつの悪そうな顔である。
「……シュテン様、先程のお話は以前もお聞かせいただきましたが、なぜ妾には返事も罵倒もいただけないのでしょうか?」
巫女への憤怒はどこへやら、一条石竹は真剣な面持ちで問うている。
「そ、それはだな……」
「妾はなんと言われようと諦めるつもりはありませぬ。無論、自害するようなことも。必ずしやあなた様に認められるように精進いたします。人の女などではなく、執念い鬼の女なのですから!」
鬼女がずいと大将に迫る。シュテンは僅かに身を引いた。
「イチジョウは自身の立ち位置を非常に気にしている。妻なのか仲間なのかとな。首領はイチジョウに好かれているのを喜んでいるものの、未だにはっきり言わなんだ」
トラクマがミズメに小声で伝える。その声も半笑いだ。
――いや本当。人間色々、鬼にも色々。むしろ、違いなんてないのかもしれないねえ。
「ねっからに答えへんなー? なっとしたん? なんで言わへんの?」
「なぜですか、シュテン様?」
問い詰める女ふたり。
「こ、こんな顔なってからは女も逃げるようになったし、今さら人に好かれるとは思っとらんくてのう……」
なにやらシュテンの八尺の巨体も一寸に見える。
「妾は鬼です。人ではありませぬ!」
「恥ずかしいんちゃうけ? あはは! 鬼のくせに!」
オトリはシュテンを指差し嗤った。
「おい、巫女のねーちゃん。飲み過ぎじゃないのか?」
気に掛けたのは小鬼のカネクマである。
「うるせーっ! あははは!」
笑いを止めないオトリ。
「一応はユキクマとタルクマの弔いなんだぜ……」
カネクマは哀しげに言った。
「……へっ!」
だが、オトリはそれを鼻で嗤うと、
「おい、タルクマーーーッ!!」
口に両手を添えて空へ向かって叫び始めた。
「高天國にはなーっ、お酒がいっぱいこあるんやにーっ! それになー……めっさええおなごしもおるんやにーっ! ほやで、鬼でも結婚できるやんなーっ!?」
届くか問い掛け。言葉こそは酔いであったが、その貌は素面で、瞳は星空を映している。
「幸せになりーーっ! 約束やにーーっ! はんまくわせたら、そっちまで行って祓ったるからなーーっ!!」
彼女は一息つくと、鼻を啜った。
「ユキクマさんも……」
巫女は自身の胸に掌を重ねる。
「流星だな」
呟くは天文博士の安倍晴明。
きらり、静かな星屑の海にひとすじの涙が流れた。
*****
睦魂……慣れ親しんだ人の魂。
挽歌……死者を悼む歌。相聞、雑歌と共に万葉集に集められた三大ジャンルのひとつにもなった。
あたたい……あたたかい。
ねっからに……一向に。
なっとしたん?……どうしたの?
おなごし……女子。
はんまくわせ……すっぽかし。
今日の一首【シュテン】
「彼の岸に あべしと思ふ 並び月 胸に献は 未来の盃」
(かのきしに あべしとおもう ならびつき むねにささぐは みらいのさかずき)
……あの世にも並び月があって欲しいと強く思いながら、別れの盃を傾ける。並び月は仇の褒めた金縷梅の花や鬼の角の比喩としたようだ。




