ドーフェルの神殿跡地攻略
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──ドーフェルの神殿跡地攻略
「おはよー! ルドヴィカちゃん!」
「うむ。今日は私を待たせるような真似はしていないようだな」
おはよう、ディアちゃんと言いました。
「準備はできているか?」
「ばっちり! 任せといて!」
今日一日でドーフェルの神殿跡地を攻略して、お昼はそこで食べる予定だ。お弁当係はディアちゃん。ディアちゃんの料理は美味しいのだよ。九尾ちゃんの料理も和風で美味しいのだけれど、ディアちゃんの料理は素朴で美味しい。
「よう、ディアとルドヴィカ。それからエーレンフリートの兄ちゃんも」
「やあ、おはよう」
「……おはよう」
私たちが朝の挨拶を交わしていたとき、オットー君、ジークさん、ジルケさんがやってきた。あれ? ミーナちゃんは?
「成金の娘はどうした?」
「それってミーナちゃんのことだよね。ミーナちゃんは今日はハーゼ交易のお仕事があるって。挨拶したりして回らないといけないって愚痴ってたよ」
ミーナちゃんも大変だなあ。
「それじゃあ、そろそろ出発しよっか?」
「応っ!」
というわけで、私たちはドーフェルの神殿跡地に向けて出発。
ドーフェルの神殿跡地は南城門から徒歩で30分の位置にあった。
「ほえー。こんな近場にこんなものがあったなんて知らなかったなあ」
ディアちゃんたちの見上げるのは、古代ギリシャの建築様式に似た造りの神殿だった。ただ、丘の上にある神殿の本へと至るまでの道のりは入り組んでおり、もう少し歩かないといけない。
「ここでしゃべっていても仕方があるまい。進むぞ」
「了解!」
私たちはドーフェルの神殿跡地の本殿を目指して出発!
本殿までの道のりはそれなり以上に込み入っている。
流石にトラップの類はなかったけれど、道が崩れていて封鎖されていたり、崖に繋がっていたり、迷路のようになっている。私たちは慎重にマッピングしながら、ドーフェルの神殿跡地本殿を目指す。
「それにしても我々が一番乗りか?」
「そうみたいだな。まだ他の冒険者が来た様子はなさそうだ」
私が尋ねるのにオットー君がそう告げて返す。
私たちが一番乗りのようであり、まだ神殿は荒らされた様子はない。ということは、魔物とかもそっくりそのまま残っているわけで。
「ワオン!」
出た! ポチスライムキング!
ポチスライムの中でも最強を誇るポチスライムだ。
まあ、あくまでポチスライムの中で最強ってだけなんだけどね。図体は大きいし、動きは鈍い。けれど、これまでのポチスライムと違ってHPもそれなり以上だし、攻撃力もかなりアップしているぞ!
「食らえー!」
開幕第一撃にポチスライムキングに巨大樽爆弾を投げつけるディアちゃん。
「ワオオン!」
「わあ! 効いてない!」
いや、効いていると思うよ。ただ、流石にポチスライムキングとなると巨大樽爆弾一撃では撃破できないんだ。
「いくぜ!」
オットー君が張り切って攻撃をしかける。
オットー君は矢を放ち、その矢がポチスライムキングを貫く。
「ワオオン!」
「うわっ! 効いてねえ!?」
いや、効いてると思うよ。ただ、ポチスライムキングはHP高いから。
「行くぞ」
そこにジークさんが斬りかかった。
ポチスライムキングは真っ二つにされて、核を切断されると倒れた。
「きゅーん」
最後に情けない声を上げるところはやはりポチスライムだ。
「魔物のレベルが上がっているな」
「これはクリアするのは難しそうだ」
オットー君とジークさんがそうぼやく。
「でも、倒せるには倒せたよ。みんなで力を合わせて頑張ろう!」
そして、ディアちゃんがそう告げる。
「ディアの言う通り、力を合わせて頑張ろうぜ」
「そうだな。クラウディア君の言う通りだ」
うんうん。力を合わせて頑張ろう。
ということで、これからは全力で行くぞ。
「ワオン!」
「邪魔だ」
「ワオオン!」
「邪魔だ」
「キャンキャン!」
「邪魔だ」
出てくる敵を出てきた端から殲滅。
流石は魔剣“黄昏の大剣”。ポチスライムキングが100体現れても大丈夫。やって来た奴から順に素材になりな!
「……ルドヴィカちゃん、えげつなーい」
「何を言う。力を合わせているだろうが」
「これは力を合わせてるとは言わないよ」
まあ、ですよねー。
「だが、これが効率的だ。最も速いものであろう。貴様らだって早く仕事は終わらせたいだろうが。大人しく下がっておけ」
雑魚は任せて! と言いました。
「……私にも任せてほしい」
「貴様にか? まあ、構わんぞ」
ここでジルケさんが参戦。
「ワオオオオン!」
纏めてポチスライムキング6体が姿を見せた!
「行くぞ、ジルケ、エーレンフリート!」
「はっ!」
ポチスライムキング6体に私たちが突貫する。
「ワオン!」
「我が覇道を邪魔するならば斬り捨てるのみ」
私がまず1体を撃破。
「ワオン!」
「陛下のために!」
続いてエーレンフリート君が1体撃破。
「……死んで」
さらにジルケさんが1体撃破。
「てやあ!」
そんな状況でディアちゃんが巨大樽爆弾を投げつけた。
炸裂。
「ワオオン!」
3体のポチスライムキングがポヨンポヨンとディアちゃんに向けて突撃していく。
「コツはつかめた!」
オットー君はそう告げて矢を放つ。
効果は抜群だ! クリティカルが出て、ポチスラムキング1体が倒れる。
「ここは通さん」
そして、前衛としてジークさんが2体のポチスライムキングを相手する。
ジークさんは横なぎに剣を振るって、ポチスライム2体に同時攻撃を仕掛ける。
なんと、その一撃でポチスライム2体が撃破された!
流石はジークさん。いや、オットー君も凄かったな。
「やるではないか」
「でしょー!」
ディアちゃんも凄かったのかな?
「この調子ならば瞬く間に攻略できそうだな。テンポを上げていくぞ」
「了解!」
だが、この探索マップの強敵はポチスライムキングだけではないのだ。
「……来るぞ」
私がそう告げて立ち止まると全員が立ち止まった。
この無人の神殿跡地には相応しくない機械音が響き、その姿を見せる。
「これは……」
「ガーディアン。このドーフェルの神殿跡地を守護するものだ」
そう、厄介なのはこのガーディアンというゴーレムだ。
「ここからが面倒なところだ。私が出れば一瞬で終わるかもしれんが、どうする?」
「私たちも頑張るよ!」
ディアちゃんがやる気だ。
「では、やってみよ」
私はいざという場合に介入するために魔剣“黄昏の大剣”を構えたまま、後ろに下がる。
「食らえー!」
巨大樽爆弾が投擲され、ガーディアンが爆風に晒される。
だが、ガーディアンは無傷であり、倒れるようには見えない。
ガーディアンはそのまま無言で鎌を構えると、のっしのっしとディアちゃんたちの方に向かってきた。た、倒せるかな、ディアちゃん。
「ここは通さない」
「……おんぼろ」
前衛のジークさんとジルケさんが長剣とハルバードを構え、向かってくるガーディアンと相対する。それに対してガーディアンは無言で鎌を振るった。
「その程度!」
ジークさんは鎌の一撃を受け止めると、反撃に転じた。ガーディアンに向けて長剣を振るい、そのさび付いた金属の肌に打撃を加える。
「……やってやるから」
ジルケさんもハルバードでガーディアンを攻撃する。ハルバードの刃はガーディアンの肌に食らいつき、僅かにその腕を引き裂く。
「畜生。こいつはやばいぞ」
オットー君も攻撃だ。
彼は爆薬が結び付けらた矢を放ち、ガーディアンの頭部に刺さったそれが炸裂する。ガーディアンが僅かに揺さぶられ、その体をよろめかす。
「今だ! 一斉攻撃!」
ディアちゃんがそう号令を発するなり巨大樽爆弾を投げつけ、ジークさんが長剣で斬りかかり、ジルケさんがハルバードで殴り、オットー君が爆薬付き矢を放つ。
それらが一斉に炸裂し、ガーディアンは膝を突いた。
だが、まだ倒れてはいない。
ガーディアンは非常にタフなのだ。ポチスライムキングがお遊びに見えるほどにタフなのだ。HPは他の探索マップの最終ボスレベルで、しぶとく攻撃してくる。
「もうっ! しつこいのは嫌われるんだよ!」
ディアちゃんはそう告げると再び巨大樽爆弾を投げつけた。
それによってガーディアンが揺さぶられる。
「その通りだな。そろそろご退場願おう」
「……最後の一撃」
ジークさんがガーディアンの右腕を、ジルケさんが左腕を刎ね飛ばす。
「これでトドメ!」
そして、最後にオットー君が矢を叩き込む。
矢に付けられた爆薬が炸裂し、ガーディアンの頭部が失われ、ガーディアンは地に倒れた。ようやくガーディアンはその機能を停止したわけである。
「やった! 勝ったよ!」
「うむ。悪くはなかったな」
ディアちゃんたち、お見事。
「だが、ここでひとつ知らせがある。ガーディアンはこれからさらに2体出没する。それに加えてガーディアンを上回るグレートガーディアンと戦うことにもなる」
「げっ」
げって思うよね。
私もプレイしていたとき思ったもん。
ですが、いるのです。残り2体のガーディアンと探索マップボスであるグレートガーディアンが。
「ともかく先に進むぞ。うだうだ言うのは後にしろ。この地域を観光名所にしたいのだろう? それならば敵は倒すしかない」
「そうだね。行ってみよう!」
というわけで私たちは意気揚々と突撃。
今度はディアちゃんたちに任せっぱなしにせず、私とエーレンフリート君も前に出る。ガーディアン1体、1体に律儀に構っていたら、数日がかりになってしまう。
「邪魔だ」
ガーディアンが起動すると同時に撃破。
「邪魔だ」
ガーディアンが起動しかけると同時に撃破。
「……もうあいつだけでいいんじゃないかな」
「そんな情けないこと言わないで、オットー君」
まあ、自分たちがあれだけ苦戦した敵を私がばったばったと薙ぎ払って行っているのを見たら、そう思わなくもないだろう。私だったら自信なくす案件だ。
それでも、これはディアちゃんたちの物語であって、私たちはあくまでお手伝いです。無駄なイベントスキップ係だとでも思ってもらえばそれで結構。
その証拠に──。
「ここを抜ければ本殿だ」
探索マップの最終地点までやってきた。
心臓が強く引っ張られる感触がする、来るぞー。
「ようやくだね」
「だが、そう簡単には通してもらえなさそうだぞ」
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