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チープな劇だな(治療薬と冒険の約束)

……………………


 ──チープな劇だな(治療薬と冒険の約束)



 私とディアちゃんがディアちゃんのお店に戻った時、既にジークさんたちは戻って来ていた。大ムカデの牙はゲットできたのかな?


「クラウディア君。ユニコーンの角は?」


「ありますよ! ルドヴィカちゃんがやっつけて手に入れたんです!」


 ジークさんが尋ねるのにディアちゃんはガラス瓶を見せる。ガラス瓶の中には白いユニコーンの角が収まっていた。


「ジークさんたちは大ムカデの牙、手に入れられました?」


「ああ、この通りだ」


 ヘルムート君の立つ調合台には大ムカデの牙がこんもりと積まれていた。


「こんなに取れたんですか!」


「それが私とオットー君で探していたところ、大ムカデの群生地に入り込んでしまってな。エーレンフリートさんとシュラーブレンドルフさんに応援に来てもらって、とにかく倒し続けたらこんなにも集まってしまった」


 大ムカデの群生地か。大ムカデの群生地が。うええ。


「あれはトラウマになるぞ……」


「お、お疲れ、オットー君」


 げっそりとした表情でオットー君が告げるのに、ディアちゃんがそう告げる。


 私は何があっても昆虫系の魔物の群生地には立ち入りたくないところだ。


「では、調合を始めます!」


 ディアちゃんがそう告げて、錬金窯に向かう。


 ヘルムート君が心なしかいつもより気合を入れて、素材をトントンして下ごしらえを整え、ディアちゃんがレシピの順番通りに素材を錬金窯に入れていく。


 ここからはディアちゃんの勝負だ。私たちは見守るしかない。


「うーん、と」


 ディアちゃんはいつものような鼻歌は歌わず、真剣に錬金窯を掻き混ぜる。


 そして、掻き混ぜ続けること10分。ぼふんと白い煙が噴き上げた。


「完成!」


 ディアちゃんの手には銀色に輝く、ポーションが握られていた。


「これでミーナはよくなるんだよな?」


「そのはずだよ。すぐにミーナちゃんのところに行こう。効果を確かめなきゃ」


 オットー君が心配そうにそう告げるのにディアちゃんがそう返した。


「私も見届けさせてもらおう。貴様が本当に光をもたらせるのか」


 私も心配だからついていくねと言いました。


「私も同行しよう。ヘルミーナ君の容体は心配だ」


 そして、ジークさんが続く。


「……私も」


「陛下がいかれるのであれば、このエーレンフリートめも」


 結局、全員で行くことになってしまった。


「よし! なら、行こう! ミーナちゃんが待ってる!」


 ディアちゃんはそう告げてお店を飛び出した。


 深夜のドーフェル市は真っ暗だ。


 日本のように街灯もついていないし、コンビニもない。夜は街の活動は停止し、暗闇に浸るのである。王都なんかだと夜中までやっているお店とかもあるそうだけど。


 そんなことより、今はミーナちゃんだ。


 効いてくれよ、ポーション。


 私たちが走ること20分程度。ハーゼ交易の建物に到着。


 夜間は警備の人が立っているが、事情を説明したら通してくれた。


 私たちは階段を駆け上って、ミーナちゃんの病室に向かう。


「ああ。皆さん!」


 病室の前ではハインリヒさんが待っていた。


 ハインリヒさんもミーナちゃんが心配なのか、そばを離れられないらしい。


「どうでしたか? ポーションはできましたか?」


「はい。今から効能を試してみます。きっと有効なはずですよ」


 ハインリヒさんは心配そうに尋ねるのにディアちゃんがそう告げた。


「それでは病室に。娘はかなり苦しんでいます」


 ハインリヒさんは病室の扉を開いた。


「う、うぐ、う……」


 病室ではミーナちゃんの苦しそうな呻き声が聞こえる。


「ミーナちゃん。ポーションを作って来たよ。もう大丈夫だからね」


「ハハッ、ディアってば急ぎすぎだよ。今日、レシピ貰ったばっかりじゃん」


 ディアちゃんが告げるのに、ミーナちゃんが笑ってそう告げる。


「うぐっ……」


「ミーナちゃん。しっかりして。これさえ飲めば大丈夫だから」


 でも、やはりミーナちゃんは苦しそうだ。キメラに刺された場所は腫れあがり、全身汗まみれになっている。今にも死んでしまいそうだ。


「ゆっくりでいいから、全部飲んでね」


 そんなミーナちゃんにディアちゃんがゆっくりとポーションを飲ませる。


「ぷはっ」


「調子はどう? 少しはよくなった?」


 ミーナちゃんがポーションを飲み終えるのに、ディアちゃんがそう尋ねる。


「……痛みがなくなってきた。効いてるよ、ディア!」


「よかった……!」


 ミーナちゃんが嬉しそうに告げるのに、ディアちゃんがミーナちゃんに抱き着いた。


「ディア。苦しいって。まだ病み上がりなんだからそっとしておいて」


「ご、ごめん」


 ミーナちゃんがぽかんとディアちゃんの頭を叩いて告げるのに、ディアちゃんが申し訳なさそうに笑った。


「でも、ありがとう、ディア。それにみんなもありがとう。みんなが素材を集めてくれたんでしょ? こんな夜遅くまでかけて……」


 ミーナちゃんがそう告げて私たちを見渡す。


「単なる気まぐれだ。貴様のためなどではない」


 ミーナちゃんのこと心配してましたと言いました。


「素直じゃないなあ、ルドヴィカちゃんは」


「そこがルドヴィカのいいところなんじゃない?」


 私の魔王弁もちょっとは受け入れられているようで安心する。


「ところで、ミーナちゃん。これからも冒険は続けられる?」


 ディアちゃんが心配そうにそう尋ねた。


「どうかな……。お父様、凄く心配していたからもう無理かも」


「そっかー……」


 ミーナちゃんの言葉にディアちゃんがしょんぼりと肩を落とす。


「ってね。冗談、冗談。あたしがお父様が何といおうと冒険者を続けるわよ。あたしがいないとディアだって寂しいでしょ?」


「もう、ミーナちゃんってば! でも、嬉しい。ミーナちゃんがいないと本当に寂しいから。これからも一緒に冒険しようね」


「うん。これからも一緒にね、ディア」


 いい話だなー!


 女の子同士の友情にオットー君も嬉しそうだし、ジークさんも微笑んでいる。エーレンフリート君は無関心か。そうか。


 ジルケさんの方は私の方をじっと見つめている。


「私と貴様もこれからも共に冒険を続けるぞ。そう言って欲しいのだろう?」


「……うん」


 ジルケさんもこれからもよろしくと言いました。ジルケさんは嬉しそうだ。


「じゃあ、ミーナちゃん。安静にしててね。毒が完全に抜けたら、一緒にお祝いしよう。私、ケーキ作るから!」


「ディアのケーキ。楽しみだなあ。早く元気にならないとね」


 そんなこんなで私たちはミーナちゃんと快復祝いの約束をしハーゼ交易を出た。


「夏の暑さも和らいできたね」


「そうだな。次は全てが凍てつく冬の季節だ」


 最近では夏の日差しも弱まり、涼し気になってきた。地球温暖化とは無縁のこの世界では、夏もそこまで異常な暑さではないのだ。


「寒くなったら温泉に来てくれる人はいるかな?」


「どうだろうな。貴様ら次第であろう」


 私たち次第だから頑張ろうねと言いました。


「よし、私も石鹸づくり頑張ろうっと。そじゃあね、ルドヴィカちゃん。おやすみ」


「ああ。おやすみ」


 私はディアちゃんに別れを告げるとエーレンフリート君とともに帰宅した。


……………………


……………………


 魔王城。


 無数の魔物が跋扈するこの城でひとり思索に耽っているものがいた。


 アルゴル。


 赤毛のメデューサで、相手を石化させる能力こそ失われたものの、未だにその瞳には相手を呪う力が備わっている。


「ディオクレティアヌスは死に、ピアポイントは去り、ヴラドは散った」


 アルゴスがそう呟く。


「残されたのは私のみ。もはや、降伏すること以外に選択肢はないようにも思える」


 エーレンフリートたちが去った後に結成された新しい四天王もほぼ壊滅状態。


「打てる手は打った。ミドガルドシュランゲにキメラ。だが、どちらもあっさりと屠られた。あれらがあっさりと屠られるならば私にしたところで……」


 ドーフェルの街にミドガルドシュランゲやキメラを送り込んだのはアルゴルだった。彼女が魔王ルドヴィカの力を削ぐことを画策して、強力な魔物を送り込んだのだ。


 だが、いずれもあっさりと屠られた。


「かくなる上は──」


 アルゴルの視線がある方向を向く。


「神にでもすがるしかないか」


……………………

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