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これぐらいの獲物でなければな〈大陸大猪襲来!〉

……………………


 ──これぐらいの獲物でなければな〈大陸大猪襲来!〉



 私たちはお昼ご飯を終えて、午後の見回りを終えると、農家で夕食をご馳走になり、エーレンフリート君に夜の見張りを任せることにした。


 農家での夕食は野菜たっぷりのシチューだった。九尾ちゃんの和食もいいけれど、たまには洋食もいいよね。素朴なお味で大変美味でした。


 さて、後はエーレンフリート君に任せて、私たちは風車小屋の中で仮眠だ。


「……寝てる?」


「起きている」


 じ、実を言うと友達とお泊りとか初めてで緊張しているのだ。


 風車小屋のギイギイという木材の動く音は気にならないのだが、隣で寝ているジルケさんの息遣いにすごく緊張する。


「……トランプする?」


「いや。ここは寝ておくべきだろう。いつ、大陸大猪が仕掛けてくるか分からん。それを札遊びなどで体力を回復するのを怠り、不完全な状態で挑むなどとは」


 いつ起こされるかも分からないし、頑張って寝ようと言いました。


「……ねえ」


「なんだ?」


 私が頑張って寝ようとしているのにジルケさんがごろりと私の方に転がってくる。距離が近い。距離が近いよ、ジルケさん。


「……私たち、ずっと友達でいられるかな?」


「フン。そのような心配をしていたのか、愚かな。私とともに歩むのだろう? そうであるならば、我とともに歩め。私の歩調に足を合わせ、ともに進め。そうすれば、貴様とはいつまでも友でいられるだろう」


 わがままな私に合わせてくれたら友達でいられるかもと答えました。


「……そう」


 あ。これはジルケさんの機嫌を損ねちゃったかな。ようやくできた友達を失うことになるかも。せっかくできた友達なのにー!


「……じゃあ、ずっと友達だね」


 ジルケさんはそう告げてにこりと微笑んだ。


 ジ、ジルケさん……。こんなわがままな私の言語野に付き合ってくれるなんて……。やはり、友達とは一生の宝だな!


「陛下」


 私たちがそんな寝付けない夜を送っていた時エーレンフリート君が現れた。


「大陸大猪を確認しました。お休み中であれば私が排除して参ります」


「大丈夫だ。エーレンフリート。ちょうど、寝付けなかったところだ。私が処分してきてやろう。ジルケ、行くぞ」


 エーレンフリート君が報告するのに私がそう告げて返す。


「敵は何体だ?」


「6体です。成体が2体に幼体が4体。逃げ足は速そうです」


「そうであるならば迅速に駆除してやらなければな」


 地球でもイノシシによる農作物の被害は何億円という規模と聞いたことがある。ソースはしらないけれど、やはり野生動物による被害があるのはどの世界も同じか。


 これ以上、農場を荒らされないためにも私は一肌脱ごうじゃないか!


「……でかいな」


「ええ。巨体です」


 大陸大猪。でかい。


 山のようですと農家の人に説明を受けた時はそう言う比喩なんだと思っていたけれど、本当にちょっとした丘ぐらいのサイズはあるんじゃないかな?


 この間のグレートドラゴンよりは小さいけれど、それでも迫力満点。


 これはいけるのか……?


「……あれは見掛け倒し。大したことはない」


「そうであろうな。でかいからといって強いわけではない」


 で、でかいだけでビビッてなんてないからね! と言いました。


「では、行くぞ。1匹逃さず鏖殺だ」


 私はそう告げて大陸大猪の方を向く。


「魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”」


 それを抜いたと同時に危険を察知したのか大陸大猪の群れが逃げ出した!


「エーレンフリート、ジルケ! 逃がすな!」


「畏まりました、マイマスター!」


 エーレンフリート君も魔剣“処刑者の女王(ブラッディ・メアリー)”を抜いて、霧になって消える。そして、それと同時に大陸大猪たちの逃げ出そうとしていた方向に回り込む。流石は吸血鬼。夜は最強だ。


「……逃がさない」


 ジルケさんも大陸大猪の進路に回り込んで逃げ道を塞いだ。


 これで3方向からの包囲だ。もう逃げられないぞ。


「グルルルル……!」


 ついに覚悟を決めたのか、大陸大猪が姿勢を低くして身構える。


 く、来るならこい! 魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”で真っ二つにしてやるからなっ! お前なんか怖くないぞ!


「グオッ!」


 そして、大陸大猪は鼻息を荒くすると、私たちに向けて突撃してきた!


 ちっこいのはジルケさんに大きいのはエーレンフリート君と私に。それぞれイノシシがするように牙を剥きだしにして突撃してくる!


「所詮は獣か」


 余裕たっぷりのようですが、内心焦りまくっております。


 だって、ちょっとした丘ぐらいのサイズがあるイノシシだよ? 普通のイノシシでも人は死ぬんだよ? それがさらにでかいとか怖いに決まってるでしょ!


「死ぬがいい」


 ええい。とにかく今はこの超巨大イノシシを叩き切るのみだ。食らえ、魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”!


 と、決意しながらも畑や向こうで戦わっているジルケさんたちに被害が及ばないように加減して剣を振る。この魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”は、思いっきり振ると剣先から波動が生じて、クレーターを作ってしまう厄介な代物なのだ。


 農作物を荒らす獣を退治しに来たのに、私たちが農作物を荒らしては意味がない。


 というわけで、ちょっと加減して振る。


 それでも魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”は凄かった。軽く振ったつもりが、突進してきた大陸大の頭にめり込み、そのまま真っ二つに引き裂いたのだ。


 でかいだけで大したことはなかったな!


 いや、死体になってこのでかさにはちょっとうえっとくるけれど。


「片付きました、陛下」


「……終わった」


 私が死体になった大陸大猪を見上げているのに、エーレンフリート君とジルケさんがそう告げてきた。エーレンフリート君の方に突撃した大陸大猪はサイコロステーキに、ジルケさんに方に突撃した大陸大猪はミンチになっている。えげつない。


「容易なクエストだったな」


「はっ。討伐の証拠として素材を回収しましょう」


 エーレンフリート君がそう告げると死体だった大陸大猪がぼふんと白煙を噴いて、素材だけを残して消え去った。……いつ見ても不思議だ。


「……待って」


 そこでジルケさんが制止した。


「どうした、ジルケ」


「……まだ来る」


 え?


 と思った途端、地面に地響きが鳴り響き、森の向こうから黒いシルエットが。


 大陸大猪のお代わりだー!


 畜生! 報酬が高かったからそんなことじゃないかなと内心思ってたけど、やっぱり1体だけじゃないってわけだよね!


「やるぞ、エーレンフリート、ジルケ」


「イエス、マイマスター」


 それから私たちは次々に押し寄せる大陸大猪と激戦を繰り広げたのであった。


……………………


……………………


「おお! 討伐してくださったのですね!」


 翌朝、泥まみれになった私たちに農家のおじさんが嬉しそうにそう告げる。


「ああ。大陸大猪は当分は近づくまい。連中に脳みそが詰まっていればだが」


 私はそう告げてごっそりと採取した大陸大猪の素材を渡す。


「確かに確認しました。今、冒険者ギルドへのクエスト達成の用紙を書きますから、座って待っていてください。おおい、冒険者の方々にお茶を入れてやりなさい」


「はいはい。今入れていますよ」


 これから冒険者ギルドに行って、今度はクエスト達成の申し出をしなければならないわけだ。また何時間も待たされると思うと今からうんざりしてくる。


「うちの畑で特別に育てているハーブのお茶です。どうぞ召し上がってください」


「うむ」


 ハーブティーか。昨日はろくに眠れなかったしありがたい。


 私はハーブティーを口に運ぶ。


「これは……それなりに美味いな」


 このハーブティー凄く美味しい!


 なんてハーブだろ。これは街の特産品になるんじゃないだろうか。


「これはなんというハーブだ?」


「学者さんが言うには大陸カモミールの一種だそうですが、なんでも変異しているそうです。美味しいお茶をと思って交配を繰り返している間に変化したんでしょうね」


 おお。まさしくドーフェル市オリジナル。


 これは使えるのでは? 今度、ディアちゃんに教えてあげよう。ディアちゃんもミーナちゃんからドーフェルの特産物のお土産の依頼を受けているからね。


「悪くはないぞ。褒めて遣わす」


「これはこれは、ありがとうございます、お嬢様」


 私の魔王弁にも農家のおばさんは笑顔で応じてくれた。


「書類ができましたぞ。これを持って行ってください。それからよろしければ、南の方に畑を持っているアンゼルムの畑も見てやってはくださいませんか。あそこも大陸大猪に作物を荒らされているのですが、冒険者ギルドではなかなか引き受けてもらえないそうでして。あなた方ならば大陸大猪でも勝てると分かりましたので」


「そうだな。考えておいてやってもいいだろう」


 任せておいて! と言いました。


「ありがたい、ありがたい。これは報酬とは別に持って行ってくだされ。今が旬の野菜です。どうぞ、報酬のついでだと思って持って帰ってください」


 そう告げて農家のおじさんは春キャベツとアスパラ、トマトを渡してくれた。


 ……帰って九尾ちゃんに渡して後は任せよう。


「しかし、見事に泥まみれだな。全く」


 大陸大猪は地面を掘り起こして私たちにぶつけて来たり、泥だらけで突っ込んできたりしたので、自然と我々も泥まみれになってしまった。


「……銭湯、行く?」


「銭湯?」


 え? 銭湯なんてあったっけ?


「……うん。ドーフェルの温泉。ドーフェルの山から湧き出して来ているのを引いているって話。どうする?」


「そうだな。泥を流すくらいのことはしておくか」


 と、安易に了承したものの、私ってこんな長い髪の毛をケアしたことはないのだ。


 子供の時からショートヘア。乾かすのとか、洗うのとか面倒くさいから、女の子に見える程度にしか伸ばしてこなかった。


 これまではベアトリスクさん頼りだったが、ここはどうしたものだろうか。


「……行きたくない?」


「そんなことはない。いいだろう、付き合ってやる」


 私がそう告げるとジルケさんの表情がぱあっと明るくなった。


「……じゃあ、帰りに銭湯によって行こうね」


「温泉というからにはそれなりのものなのだろうな」


 というわけで私たちは銭湯へ。


 冒険者ギルドへの報告は明日でいいだろう。


 どうせまた数時間待たされることだろうし……。


……………………

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