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これで人形が2体か(ゴーレム2号、起動)

……………………


 ──これで人形が2体か(ゴーレム2号、起動)



 粘土質の土。硝石。水銀。機械油。


 全ての材料が揃い、いよいよミーナちゃんの依頼の品であるゴーレムを作ることになった。ディアちゃんは入念にレシピを確認している。


「ルドヴィカちゃんはゴーレムとかほしくないの?」


 私がぼんやりの錬成前の準備中であるディアちゃんを眺めているのに、ミーナちゃんがそう声をかけてきた。


「フン。あの未熟者が作ったゴーレムなど何の役にも立たん。私にはあのようなゴーレムよりももっと頼りになるだろう手勢がいる。ゴーレムなど不要だ」


 ディアちゃんもゴーレム作るの大変だろうし、私はエーレンフリート君たちがいるからいいよと言いました。


「でもさ、でもさ。ディアにゴーレムのレシピを買ってあげたのってルドヴィカちゃんなんだよね? 何かディアに期待してたんじゃないの?」


「そうだな。あの者がその未熟さから幾分か解放され、その光を本当に宿すかどうかを確かめたかったのかもしれぬ。風の囁きによればあのものは未だに成長する。その末にあるのが人類にとっての希望か絶望か、見定めてみたくはないか?」


 ディアちゃんがこれから成長していくことを祈って投資しましたと言いました。


「……ルドヴィカちゃんってなんかポエミーな人だよね」


 うぐっ。正直、その通りだから何も言い返せない。


「貴様ら愚鈍なものに私の言葉は分かるまい」


 ポエミーでごめんねと言いました。


「よしっ! 確認完了。いよいよ錬成を始めるよ」


 ディアちゃんがそう告げるとヘルムート君がトントンと素材を準備し、ディアちゃんが素材を錬金窯に放り込んでいく。粘着質の土、硝石、水銀、機械油がヘルムート君によって錬金素材に加工され、ディアちゃんの手で錬金窯に放り込まれる。


「ぐーるーぐーるー♪」


 ディアちゃんが実家のような安心感のある声で錬金窯を掻き混ぜ、それに合わせてヘルムート君が左右に首を振る。


「上手くいくかな? 上手くいくかな?」


「上手くいくんじゃないか? だって、ディアってもうゴーレム、錬成しているし」


 ミーナちゃんが興味津々で見つめるのに、オットー君がヘルムート君を指さした。


「あれはただのまぐれだ。真なる領域には到達していない。今後も同じようにいく保証など、朝霧より儚いものでしかないだろう」


 ディアちゃんがヘルムート君を錬成できたのは運がよかったこともあるから、今回も同じように行くかは分からないよと言いました。


「ううむ。なんだか、錬金術って分からないな。普通は一度、成功すれば次も上手くいくんんじゃないか?」


「貴様は一度的に当てた矢の上にもう一度矢を当てられるか?」


「い、いや、それは無理。ってか、そんなに難しいのかよ」


 錬金術って一度成功しても次に成功するとは限らないんだよと言いました。


 もちろん、錬金術レベルが十二分に上がれば、簡単に錬成できるようになる。だけれど、そこから難しい錬成に挑まないと、錬金術レベルは上がらない。常に70%ぐらいの成功率の錬成に挑んでいないと錬金術レベルは低いままである。


 錬金術師とは常に挑戦あるのみなのだ。


 その点では今回のゴーレム錬成はいい機会──とは言い難いよなあ。


 ゴーレムって中盤くらいのアイテムだから、成功率は今の段階ではちょっとスキルアップしていたとしても15%あるかないか。成功したら経験値がっぽりだけと、失敗したら今日の探索が無意味なものになってしまう。


 どうか成功しますように……!


「で、できたー!」


 その声と同時に錬金窯から白煙が噴き出た。


 周囲が真っ白な煙で包まれる中、私たちは錬金窯の方を見つめる。


 やがて白煙が晴れていくと、ディアちゃんの手にはヘルムート君と同じくらいの年齢のブロンドの髪の男の子が握られていた。ヘルムート君と違ってやや女の子っぽいが、やはり男の子なのか七五三のような恰好をしていて、むすっとした表情を浮かべている。


「成功だよ、ミーナちゃん。この子がミーナちゃんのゴーレム!」


「やった!」


 ディアちゃんが嬉しそうに告げるのに、ミーナちゃんがレジカウンターを通り抜けて、調合室に飛び込んでいった。文字通りの大喜びだ。


「また神の振ったサイコロを上手く操ったようだな……」


「?」


 ディアちゃん錬成成功おめでとう! と言いました。私の謎のポエミーな発言にオットー君の頭にクエッションマークが浮かんでいる。そんな目で見ないで、お願い。


「じゃあ、ミーナちゃん。この子に名前を付けてあげて」


「名前かあ。悩むなあ……」


 分かる、分かる。ゴーレムの名前つけるのって凄く悩むもんね。ディアちゃんにお任せすると『フリードリヒ大王』とか『ポチョムキン』とか『ピラフ御膳』付けられるしさ。『ピラフ御膳』ってもう人の名前じゃなくて料理店のメニューじゃないか。


「私が付けてあげよっか?」


「ダメダメ。こういうのは自分で考えないと」


 ディアちゃんが告げるのに、ミーナちゃんが首を横に振る。


 ミーナちゃんが悩んでいる間にも名無しのゴーレム君はヘルムート君と一緒に首を左右にゆったゆったと振っている。


「決めた! あなたの名前はリーヌス! 今日からあなたはリーヌスよ!」


 なんか俳優みたいな名前を付けてきたな。


「識別名認識。よろしくお願いします、マスター」


 名無しのゴーレム改めリーヌス君がそう告げる。


「これで私のゴーレムになったの?」


「うん。そだよ。これからリーヌス君を可愛がってあげてね」


 ミーナちゃんが尋ねるのに、ディアちゃんがそう告げて返す。


「よろしくね、リーヌス君! これからうちの会社で働いてもらうからね!」


「ひょおをひっぴゃらないでくだひゃい」


 ミーナちゃんがぷにぷにとリーヌス君のほっぺを伸ばすのにリーヌス君がミーナちゃんの手を掴みながらそう告げる。


「これが土と硝石と水銀と機械油でできてるってのが不思議だよな。街の子供の中に混じていても違和感ないと思うぞ」


「だよね。我ながら不思議に思うよ、錬金術というものは」


 確かにヘルムート君もリーヌス君も普通の子供という感じだ。ゴーレムっぽさはない。ヘルムート君は命じられるまでもなく、いそいそと錬成後の後片づけを始めているし、リーヌス君はミーナちゃんがいろいろと話しかけるのを首を左右に振って聞いている。


 ロボットというか人工生命体という点においては私がいた地球でもいろいろと開発されていて、ロボットと人工知能が人類の知能を上回る日は近いなどと言われていたけれど、私が生きている間にヘルムート君やリーヌス君のような子は開発されなかったな。


 いたら、ボッチから離脱できたかもしれないのに。


 ……私も1体、ゴーレム作ってもらおうかな。


 いやいや。今はボッチじゃないし。エーレンフリート君とベアトリスクさんとイッセンさんと九尾ちゃんがいるし。別にボッチじゃないし。


 それに今はディアちゃんだって友達だしね。


「それじゃあ、この依頼のお礼をしないとね。はい、どーぞ!」


「これってレシピ?」


「うん。名付けてミーナ特製ポーションのレシピ。私の計算通りなら、体力と魔力を同時に回復させることのできる優れものだよ」


 おお。ミーナちゃん特製レシピが来た!


 ミーナちゃん特製レシピはミーナちゃんの依頼をこなすことでしか入手できない貴重なレシピだ。さっきミーナちゃんが言っていたようにHPとMPを同時に回復させる効果のあるポーションが作れたりと、何かと重宝する。


 ミーナちゃん特製レシピは全部で15種類あり、どれも冒険には欠かせないアイテムだぞ。気合入れて錬成していこう!


「計算通りって、実際に作ってみたの?」


「ううん。でも、うちの会社で研究してできたものだから効用はばっちりだと思うよ。これは一応試作するための材料代ね」


 ディアちゃんが怪訝そうな顔をするのに、ミーナちゃんが150ドゥカート程度をディアちゃんに手渡した。


「ふむふむ。大陸ニンジン、カモミール、大王ニンニクと。どれも市場に売ってるかな? 大王ニンニクはあんまり見かけない気がするけど」


「この間、見かけたよ。試しに作ってみてよ。私が実験台になってあげるから」


「分かったよ。作ってみるね!」


 うむ。本当に仲いいな、この子たち。私も混ざりたい。


 私の記憶がもう少し鮮明だったならば、ゲームの時のレシピを思い出して、ディアちゃんに教えるとかできそうな感じだったんだけどな。けど、錬金術って材料だけ分かっても加工方法が分からないと意味ないんだよね。だからレシピが必要なわけで。


「ルドヴィカちゃんも今日はありがとうね!」


 そこで不意にディアちゃんが私に笑みを向けてくれた。


 ああ。これが友達ってものか。私がずっとほしかったものか。


「私の戯れだ。貴様のためにやったわけではない」


 私の言語野がツンデレな件について。いや、ツンしかないな。


「でも、ルドヴィカちゃんのおかげでとっても助かったよ。私たちだけだったら野良犬とかワイバーンとか危なかったかも」


「そうそう。ジークさんがいたから全滅したりはしなかっただろうけど、大怪我したりとかはありそうだったじゃん。だって、ワイバーンだよ、ワイバーン」


 レッサーワイバーンが出たのは完全に私のせいであって、本来ならばジークさんたちとちゃんとパーティーを組んでいれば攻略できる探索マップなんだ。


 うう。罪悪感で胸が痛い。


「それじゃ、ディア。また明日ね。今日はそろそろ帰らないと」


「また明日ね、ミーナちゃん」


 ミーナちゃんがリーヌス君の手を引いて出ていき、店舗には私とオットー君が残った。ジークさんはワイバーンの件で自警団に警告を出すために途中で離脱してしまったのだ。どうにもディアちゃんの恋路を私が邪魔している気がしてならない。


「そういえば採取したワイバーンの鱗、爪、牙って何に使うんだ?」


「えっとね。装備を作ろうと思うんだ。鍛冶屋さんと防具屋さんでレシピを買って、私たちの装備にしようって思ってる。ワイバーンの素材だから絶対に役に立つよ」


 うんうん。実際にワイバーンの素材はいい材料になるよ。


 ジークさんとディアちゃん向けの翼竜のレイピアとか、オットー君向けの翼竜の長弓とか、後は防具なんかもいくつか作れたりするはず。


 この世界は装備のレベルこそが強さなので、強くなるには装備のレベルを上げるのみである。キャラクターのレベルを上げて利益があるのはHPとMPの増強とスキル取得である。これもなかなか重要なのだが、装備レベルが低いといくらいいスキルをとっても意味がない。ミーナちゃんの魔術にしても威力は装備依存だ。


「錬金術師の小娘。あの成金の小娘から受けた依頼を忘れてはおらんだろうな?」


「ああ。“琥珀の杖”だね。忘れてないよ。でも、琥珀ってどこで採取しよ?」


 そうなのだ。ドーフェルの森では琥珀は手に入らない。


 だが、市場にはこの依頼が発生すると琥珀が並ぶようになるのだ。数日すれば、鍛冶屋さんで“琥珀の杖”のレシピも手に入る。


 ただ、錬成難易度はそれなりなので、今までの錬成で錬金術レベルを上げていないと、錬成に失敗してしまうこともある。シビア。


 けど、難しいゴーレムの錬成に2回も成功していディアちゃんだし、錬金術レベルはそれなりに上がっているはず。彼女ならば問題なく、“琥珀の杖”を作れるはずだ。


「市場を見て回り、風の囁きに耳を澄ませよ。さすれば展望は開かれん」


「風って何か言ってくれるのかな?」


 中二病でごめんねー!


「明日、一緒に市場に行ってみるか?」


「うん。明日の朝8時にお店で待ち合わせね」


 ディアちゃんはジークさんのみならずオットー君も狙っているのだろうか。ハーレムエンドならミーナちゃんも加わるし、百合の花が咲き誇りますわあ。


「では、私も帰らせてもらう。貴様との戯れもなかなかであったぞ」


「えへへ。また一緒に探索に行こうね!」


 これが友達ってものか。感動してきた!


……………………

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