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我が魔術を受けよ(魔術を使ってみよう)

……………………


 ──我が魔術を受けよ(魔術を使ってみよう)



 いざ、再びドーフェルの森へ。


 他の探索地域の解放は時間経過になる。


 ゲーム時間で一定時間経過すると、ジークさんやミーナちゃん、オットー君が新しい素材が取れそうな場所が見つかったよと教えてくれるのだ。


 最終的にドーフェルの森から始まり、ドーフェルの山、ドーフェルの大洞窟、ドーフェルの湖、ドーフェルの神殿跡地、ドーフェルの採掘場跡地、ドーフェルの未発見ダンジョン、禁忌のダンジョンの7つの探索マップが解放される。


 でも、禁忌のダンジョンだけは全ての探索マップのボスを倒さないと解放されない。そして、そのダンジョンの奥底にいるのが邪神なのである。


 そして、それがラスダンかと思いきや、魔王ルドヴィカが邪神を倒したディアちゃんたちに宣戦布告して、真のラスダン“魔王ルドヴィカ邸”が解放されるわけである。“魔王ルドヴィカ邸”では採取などはできず、各フロアの四天王を倒すだけなので、探索マップとしてはカウントされない。


 そんなわけで、今のところディアちゃんが探索できるのはこのドーフェルの森だけだ。今はここで素材を採取し、レベルを上げよう。ミーナちゃん、オットー君、ジークさんのレベルも上げておかないと、邪神戦で困ることになっちゃうぞ。


「ワン!」


「あ。ポチスライムだ」


 今日もスライムにしては愛嬌のある鳴き声を上げて、ポチスライムが飛び出してきた。これをペットにできるお店が早くオープンしないかな。一匹飼いたい。


「ここは私に任せて!」


 ミーナちゃんはそう告げると杖を構えた。


 これも初期装備の“見習い魔女の杖”だ。基本的に装備はディアちゃんが準備するものだから、ディアちゃんが装備更新しない限りそのままである。ディアちゃんには職人通りに通ってもらって、みんなの装備を更新してもらわなきゃ。


 え? 私の魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”?


 これはもうそのままでいいんじゃないかな……。最終段階まで強化すれば理屈の上では邪神を10ターンキルできるけれどさ。もうそれって趣味の領域だよ。


「ファイアーボール!」


「キャン!」


 おっと。ここで初めて魔術を目にした。


 杖の先の空間が僅かに歪み、そこから炎の弾が吐き出される。それは真っすぐポチスライムに向けて突き進み、ポチスライムは哀れ焼死。ぼふんと白煙が生じると、ポチスライムの素材だけがその場に残った。


「どうよ! 私の魔術、凄いでしょ!」


「ミーナちゃんは相変わらず凄いね。魔術が使えるなんて」


 この世界で魔術が使える人間はごくわずかだ。


 というのも、魔術というものの仕組みはよく分かっていないのだ。この世界の人々は『なんか凄い力が使える! 不思議!』程度にしか思っておらず、魔術師を養成しようとする教育機関もなければ、魔術を解明しようとする研究機関もない。


 使える人は使える。それは凄いこと。頑張って!


 それが、この世界の魔術に対するスタンス。


 魔女狩りとかで弾圧したりもしないし、積極的に育てもしない。


 だから、この世界ではファンタジーゲームや小説でよくある魔道具というものがない。魔術が使える人が少なすぎる上に、その原理がよく分かっていないのでは、そんなものを普及させようにもさせられない。


 その代わり錬金術は凄く発展している。


 ディアちゃんも言っていたけれど、このローベルニア王国には宮廷錬金術師という地位があり、王立錬金術アカデミーでは優秀な錬金術師が育成され、新しい錬成方法を日々模索している。ここはそういう世界なのだ。


 さて、そんな魔術だが、エーレンフリート君が言うには私も使えるらしい。


 ちょっと試してみたいが、どうしよう。


「あっ! 野良犬だ!」


 そこでディアちゃんが声を上げた。


 このゲームの野良犬は完全に野犬化していて危険なものである。狂犬病ワクチンもないんじゃ死の危険すらあるんじゃなかろうか。


 その野良犬が6体。こちらに向けて迫っている。


 普通、ドーフェルの森の野良犬と言ったら1、2体出てくる程度なのに数が多いな。


 よし。では、ここで試してみるか。何事も挑戦あるのみ。


「魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”」


 私は空間の隙間から巨大な剣を抜く。


「降り注げ。無垢なる刃」


 私がゲームの時と同じように詠唱すると魔剣“黄昏の大剣(ラグナロク)”の先端の空間がぐにゃりと大きく歪み、それが空高くまるで切り裂くように立ち上っていく、そしてそこから無数の白い刃が野良犬たちに向けて降り注ぐ。


 刃を受けた野良犬は悲鳴も上げることすらできずに、あっという間に全滅した。


「わあ! 何あれ、何あれ? 水系統の魔術じゃないし、風系統の魔術でもないよね。ひょっとしてエーテル属性の魔術なのかな!?」


 ミーナちゃんが大興奮で私に質問を浴びせかけてくる。


「フン。このような手品程度でそこまで興奮するとはレベルが低いな。貴様に教えることはない。己の技術は己で切り開け」


 ミーナちゃんもイベントでエーテル属性の魔術が使えるようになるよと言いました。


「ルドヴィカちゃんはケチだなあ。私もあんな魔術が使えたらいいのに」


「ならば、自己鍛錬に励むことだ。せいぜい足掻くといい。それが凡人のあり方だ」


 ディアちゃんもこれから魔術のスキル取得頑張ってねと言いました。


 しかし、魔術というのは割合フィーリングで使えるものなのだね。私に使えるか心配だったけれど、これなら一安心。


「では、粘土質の土、ゲットー!」


 相変わらずディアちゃんの探索スキルは高い。


「妙だな……」


 そこでジークさんが声を上げる。


「妙って?」


「さっきの野良犬の数。それに妙な魔物の気配も感じる。やはり物騒になっているな」


 確かに野良犬が6匹も群れになって襲ってくるなんて最初の探索マップであるドーフェルの森ではありえない。そんな群れに遭遇したら、初期装備の初期メンバーは全滅してしまうだろう。ここは最初の探索マップであり、チュートリアル的な場所なのだ。


 ここで強敵となるのは野良犬1、2匹の群れと探索マップ最奥のレッサーグリフォンだけ。レッサーグリフォンでは全滅もあり得るけれど、それは装備のレベルを上げて挑みましょうというチュートリアルの一部なのだ。事実、勝てないと思ったらレッサーグリフォンからは逃走できるようになっている。


 なのに、それなのに、今回は初期装備で探索に赴くメンバーを全滅させる勢いで、野良犬が出現した。これは明らかにおかしい。今回は(魔王)がいたからさして問題にはならなかったけど、こんな数の野良犬に襲われたら初期装備のみんなは全滅だ。


「よくない風が吹いているようだな。高ぶるものがあるぞ。この私に逆らおうとする愚かな者たちの気配がするではないか」


 確かにちょっと変ですよねと言いました。


 意味が変わってくるから、私の魔王弁と中二病にはいい加減にしてほしい。


「やはりこの森の異変は……」


「フン。そのようなことも分からぬか。所詮は辺境の騎士だな」


 私のせいですと正直に言いました。言いました!


「その愚鈍な頭で案ずるな。この程度の魔物など私にかかれば相手にすらならん」


 一応責任は取るので勘弁してくださいと言いました。


「魔王である君がそういうのであれば異論はない。これぐらいならば我々でも相手にすることのできるレベルであるしな。ただ、このまま魔物がこのドーフェルの森に溢れると、街への影響が懸念されてくるな……」


 そうだよね。ゲームでは探索マップから魔物が出てくることはなかったけれど、ここは現実になったゲームの世界。探索マップと日常を分けるものは、あのドーフェルの街の高さ6メートル程度の城壁にしかないのである。


「何、問題はない。狩り尽くせばいい。私に対抗しようとする魔物全てを狩り尽くせばいいだけの話だ。単純であろう?」


 魔物が溢れないように倒しますと言いました。


「簡単に言ってくれるが、ドーフェルの森にいるだけでもかなりの魔物がいるぞ?」


「問題ない。殺し尽くすだけだ」


 安心させるために微笑んだつもりが、酷い悪人面になったのが分かる。


「……分かった。そちらの望むようになるように手配しよう。我々も城壁の守りを固める。いざとなれば冒険者ギルドに増援を要請しよう」


「そのような必要などあるまい。ここには私がいるのだ」


 なんとか私の方でどうにかしますと言いました。


「確かにルドヴィカちゃんがいたら、あれぐらいは余裕だよね!」


「ねえ、ねえ。他にどんな魔術が使えるの? 他にも使えるんでしょ?」


 ディアちゃんとミーナちゃんが口々にそう告げる。君たちは暢気だね。


「でも、狩り尽くされたら狩り尽くされたで俺たちの仕事がなくなっちまうんだけどな。ほどほどにしてくれると助かるぜ」


 オットー君は駆け出しとは言え冒険者だもんね。普通の人が行けない場所から素材を取って来たり、畑を荒らす魔物を退治するのがお仕事。猟友会みたいな仕事だけど、猟友会よりやることの幅は大きい。


 ダンジョンの探索も冒険者の仕事だし。


 あっ。そうだ。ダンジョン!


 ダンジョンが発見されると、そこにある財宝を求めて冒険者がやってくるのだ。このドーフェルにもダンジョンが眠っていて、それを求めて冒険者がやって来て、そのことで町興しに繋がるんだよ。冒険者のお客さんが来たらどこも盛り上がるからね。


 ……なのだが、私はこのドーフェルの街のどこにダンジョンがあるのか知らない。街の郊外のどこかなのだと思うけれど、何分ゲームのマップは大雑把だったからね……。


 まあ、将来的に街が発展する要素はあるということです。


 それはそうとこの魔物の群れをどうにかしなければいけない。


「エーレンフリート。どれくらいで狩り尽くせる?」


「半日もかからないでしょう。ですが、少し引っかかる点があります」


 エーレンフリート君、どうしよっかと尋ねたら、エーレンフリート君が何やら真剣な表情をして私の方を見てきた。


「なんだ。申せ」


「はっ。先ほどのような下級の魔物が暴れるのには原因がいくつかあります。ひとつ、気象異常。気象異常によって食物連鎖に支障が生じると下級の魔物たちは餌を探し求めて、大きな群れを作り、近隣の都市に押し寄せるでしょう」


「だが、ここ最近の気象は安定している。気象異常ではない」


 ここ最近は春うららかな、とても住みやすい気候だった。大雨も降ってない。


「もうひとつは自分たちを上回る脅威が森の中に現れたということです。この森にはレッサーグリフォンという下等な魔物がいましたが、それを上回る何かがここに住み着いた可能性があります。それが恐らくは」


「私の地位を狙いに来た者。あるいはその先兵というわけだな」


 私を狙ってきている人がここに住み着いちゃったのか。


 迷惑な連中だな!


「だが、貴様ならば我が手によって食らわれた貧弱な魔王の率いていた残党など相手にもなるまい。違うか?」


「もちろんです。どのようなものであろうとも陛下の覇道を邪魔する者は排除するのみであります。それが我らが使命」


 エーレンフリート君なら大丈夫らしい。一安心。


「では、行くぞ。次は硝石だ」


「ルドヴィカちゃん。洞窟はそっちじゃなくてこっち」


 ……私って天性の方向音痴?


……………………

本日は2回更新です。

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