お産のはなし。
一か月あたり10冊くらいずつ絵本が増えています。
定期購読や生協の宅配のついでに気になった本を買っています。
しかしだからといって、私は「子どもに一日五冊読み聞かせ。東大入試目指して一万冊クリア」などを目標に掲げているわけではありません。単に買うのが好きなだけです。なんだったら読み聞かせは面倒なので買った絵本を積むまであります。
とはいえ、子ども(三歳、一歳)も新しい絵本を見つけると気になるようで、読み聞かせをして欲しいと寝る前に持ってきます。昨日は「みいこのおさん」というような絵本でした(ごめんなさい家探ししたんですが今手元にありません。子どもがどこかに持って行ったようです)。
これ、飼い猫のみいこがおさんをするという内容の話なのですが。
やせっぽちのみいこ。だんだんお腹が大きくなってきた。どうやらお腹に子どもがいるらしい。ある時みいこが落ち着かない様子でうろうろしはじめた。ぼくとおかあさんはみいこに段ボールを用意してあげた。
「お、愛媛みかんの段ボールだね」
でもみいこはソコジャナイだったみたいで、ぼくの布団に入ってきた。
「布団に……え、まさかみいこ!?」
みいこは僕の布団で生むと決めたようだった。
「ええええ布団で!? それものすごいことになっちゃうでしょ。みいこちょっと思いとどまって、たかし(仮称)も何落ち着いてんの布団はやばいよ絶対大変なことになるよ」
みいこのおさんが始まった。
「うわあああああ布団でうんじゃう。で、その布団はどうするの? どうするの? 布団どうなっちゃうの!? おさんってほら、赤ちゃん以外にもなんかいろんなもの出て来るじゃない!? たかし! 布団は!! みいこおおおおおお、待ってええええ」
こんな調子で読むので「ごめん、おかあさん一冊でもう疲れちゃった。今日はおしまいね」となります。
こうして絵本も積まれていくのです。
ところで、子どもというのはなかなか記憶力が良いようで、おかあさんが絵本を読んでくれないとなると、記憶を頼りに読み始めます(字はまだ読めてないと思う)。
「みいいこおおおおおお。そこで産んじゃうの、産んじゃうの、みいこおおおおおお」
ごめんそれは絵本に書いてないお母さんのアドリブだよ。
*
ところで前述のように二児の母です。お産は二回してます。
だいたい、経産婦にお産の話をふると話が長くなるのでやめたほうがいいです。みんな武勇伝があるからね!
ですが一行前の文章を忘れたように今回はお産の話を少し。
一人目のときは朝方三時くらいに病院に着き、入院。
すぐには生まれないだろうということで夫は一度帰宅。
朝の九時くらいにはもう陣痛がひどいことになっていましたが「前駆陣痛だったら一回帰ろうね。先生の診察がはじまる時間まで待ってね」と言われてその辺に放置されてました。で、実際に診察をしてもらったところ「あーこれ前駆陣痛じゃなくて微弱陣痛だね。今日の昼には生まれるよ」と言われて、そのまま分娩台待機。
陣痛モニターのようなものをつながれ、夫もそばにいます。
この陣痛モニター、病院に来た当初は20~30とかそのくらいの数値だったと思うのですが、陣痛促進剤をどんどん入れていったらだんだん数値が上がっていき、メーターが振り切れるくらいになりました。
すかさず夫がナースコール。
「痛そうなんですけど!」
もちろん忙しい看護師・助産師さんには怒られます。「まだ生まれないから!」
それでもメーターがふりきれるとナースコールを押してしまう夫。
「すごく痛そうなんですけど!」
すごく怒られました。
そうこうしているうちに「あーもうこれだめでしょ」という痛さになっていき、うーうー言っていたら「ちょっと待って、誰がいきんでいいって言った!! あー、これお産はじまるわ」と通りすがりの助産師さんに怒られつつお産がスタート。
「〇〇さんがお昼休憩から帰ってきてからが良かったのに~」というスタッフさんらの本音が乱れ飛ぶ。
「助っ人の先生呼びます!! ……え、分娩室って何階ですか? って言ってるよ」内線を切って大笑いするスタッフさんたち。病院二階建てだからね! ところでその先生本当にたどりつくんですか?
「旦那さんは出て!」と誘導しようとする看護師さんに「あ、いえ、立ち合いで大丈夫です」と食い下がるわたしたち夫婦。
実は「立ち合いなんてしないですよふふん」と思っていたわたしはその旨伝えていたのですが。土壇場になって「いやいやいやいや一人とか無理でしょ」となったのです。
しかし、立ち会いをするひとは可愛い院内着、しないひとは白い院内着など見た目で区別できるようにするシステムだったらしく、私がその時着ていたのは白のパジャマでして。
「ご主人が出て行かない!」「いいの、急遽立ち合いになったの!」「これ着てるのに!?」「なんかそういうことになったからもういいんだって!!」
目の前で押し問答するスタッフさんを前に本当にすいませんと思いながら生みました。
……このお産でちょっと面白い話があるんですけど長くなるので割愛しておきましょう。経産婦の武勇伝ってほんと長いですよね。
もしもっと読んでも良い方がいたらご一報ください。
*
さて二回目のお産。
こちらは妊娠後期になって私がステータス異常だらけになり、切迫早産もあって入院。
帝王切開にするだなんだ色々検討されましたが、そのままお産に挑む運びとなりました。
前回の反省からちゃんと可愛いパジャマで最初から立ち合いにしていましたし、夫もモニターを見てナースコール連打することもありませんでした。
しかし今回はお産が夜でして。
「〇〇さんが院内巡回終わってからが良かったのにいいい」
と言われて、またもや手薄なときに産む私。
立ち合いの夫もすっかり頭数に入れられていまして「奥さんの背中持ち上げておさえて!」とあれこれ指示を出されていました。
指示を出したあげくそっちはそれで良いと思ったのか、スタッフの皆さんは別のことに集中しています。
分娩台の傾斜では体勢的に無理で(巨体児だった)、夫に背中を支えられていた私は気が気ではありませんでした。
「大丈夫なの……!? 無理しないでねっ」「俺のことはいいから!! なに心配してんの!?」
スタッフさんたちをよそにそんな会話をしていましたが、内心では、
(赤ちゃんが出て来る前に夫の腕が折れるよ肥満度マイナス23の細腕をなめるなよ、これ絶対腕が折れてわたし落とされるから怖いからああああ。もうやめてええええ)
でした。
実際物凄いスリルだった。
赤ちゃんは無事でした。
*
思えばうちの夫婦はいつもろくな会話をしてません。
結婚式の時ですら、
「病めるときも健やかなるときも」と神父さんが誓いの言葉を滔々と口にしているときに、夫が、
「病めるときもすごくやばいときも??」と言い出し、
「ちょっと決まり文句を豪快に聞き間違えないでよ、なんで良いことなさそうな話になってんのよ」
などと言い合っていた気がします。
結婚式のビデオ見ながら「このとき二人やけに笑ってるけど何言ってんの?」と聞かれて「悲惨な話を……」としか答えられないのでできればもう親族はそんなビデオ見ないでほしい。本人たちは一度も見たことないですよ。
おしまい。
石河翠さまリクエスト回。
第一子出産時の担当医師と助産師さんがともにI川さんだったという伏線をわたしはいつ回収するのか。