夫がごはんを食べない。
個人情報なので数値はぼやかして書きますが、夫は180センチ弱にして50キロ台前半という体格で、健康診断を受けると肥満度マイナス23という数値を叩き出してきます。
食べない。
結婚当初、なぜか新居に箱買いしたじゃがりこを搬入し、キッチンのカウンターの上にずらりと並べていたので「好きなのかな」と思って眺めていましたが、1個を3回に分けて食べたあげく食べきれない、という食の細さでした。
(なんで箱買いしたんだよ)
かたや私の食の遍歴などは語るもおぞましいほどの大食漢でして、小説なども「食べ物を美味しそうに書いている作品はそれだけで傑作」と信じていました。大学も最初の仕事も食とは全然関係なかったのですが、「調理師学校の話を書きたい」と突然思い立ってしまったがためにある日会社を辞めて調理師学校に入り、免許も取得しています。食にうるさいわけでもこだわりがあるわけでもありませんが、食べることは好きです。
これほどまでに「食」でかみ合わない二人がなぜ結婚したのか。
交際ほぼ0日婚というのが決め手かと思います。
「ある日本屋さんの本棚の前(秋葉原の本屋さんのラノベ棚)で話して意気投合してお茶して『絵師100人展』見てごはんして結婚することにした」
というそれだけの話なのですが、人に説明してもたいてい「お前は何を言っているんだ」と言われます。
もう少し遠慮がちな人は「何も聞き洩らさないようにきちんと聞いていたけど、何を言っているのかわからなかったの、どうしてかな?」と言います。
私をよく知る人たちでさえこの有様なので、ここは詳しく話してもしょうがないですね。省きましょう。
なお、このとき後の夫にすすめられて購入した本は「ブラック・ブレット」でした。
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とはいえ、お互いまったく何も知らない相手だったわけではありません。
その半年くらい前に一度だけラノベ読書会のようなイベントでお互いを見たことがありました。
また、夫は当時ラノベを読んで感想ブログを一日一記事必ず更新していたので、私もよく参考にしていました。
ちなみにそのような感想ブロガーだった夫の実家は壮絶な量の蔵書を抱えていましたし、記事のストックをきらさない為に休日は読み溜めねば! という引きこもり生活を送っていたようです。実はカッコイイ車も持っていたのですが、走行距離は新車状態でした。
夫のすごいところは、そんな生活を送っていたにも関わらずふらっとある日秋葉原に行って奥さん見つけてきたところだなって、よく他人事のように考えてしまいます。
一方の私は朝7時半に家を出て深夜1時帰宅週6勤務のような仕事をしておりました。
朝ご飯を7時に食べて、昼ご飯は20時に食べて、夜ご飯は駅前の富士そばで0時過ぎだよ!
(出会ったタイミングではもう少し時間的に余裕のある営業所に異動しておりましたが、およそ仕事量はどうにもならんという状態でした)
そんなわけで、出会って会話して「お、これは話合うな。結婚するでしょ」って思ったんですけど「交際しようにも休みもあわないし現実的に月一回会えるかどうか」という事実に気付き、「交際はできなくても結婚はできるのではないか」との見解となりました。
かくしてお互いのことはよくわからないけど、結婚することは早々と決まりました。
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ところで本題の「食」です。
私はそれまで「食べ物がおいしそうな小説は正義」と信じていました。
しかしながらおよそラノベ読書遍歴を話し始めると「スレイヤーズ、オーフェン」からはじめて車余裕で買える程度のお金を費やして読み漁って来た夫は、
「食べ物のシーンは興味ない。あんまり気にしたことない。読まないまである」
ということを清々しいまでに迷いなく言い放っておりました。
(いるんだ、そんな人……)
食べ物に興味がないんです。
というところからはじまる結婚と読書生活なんて書いて需要あるのかわかりませんが、少しだけ続けます。