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1話 二色の視線

時系列入れるの忘れてました!


この話は第3節の十数年後の話になります

ネタバレを含みますので、第3節を先に読むことをおすすめします

 初等部の制服に身を包んだ少女が生徒玄関前で誰かを待っている。


 可愛らしい少女だ。沈みかけの陽の光を浴びて橙色に輝く黒髪は編み込みにされ、白いリボンが愛らしく飾られている。

 くりくりと丸い目は長い睫毛に縁取られながら、真っ直ぐに前を見つめている。


 当然周囲を行き交う生徒は目を奪われるように彼女へ視線を寄越す。色を滲ませた男子生徒の視線を気にしたふうもなく、少女はただ待ち人を待つ。


「ごめん、遅くなった」


 表情らしい表情のなかった愛らしい顔がぱっと華やいだ。年相応、まだ幼さの残る笑顔がより一層の輝きを放つ。

 遠巻きに眺めていた男子生徒たちは頬を赤らめ、魅入られる。

『春のかぐや姫』の名は伊達じゃないな、と待ち人こと藤咲鈴蘭(ふじさきすずらん)は苦笑混じりに息を零した。


 ここまで色めいた視線が注がれているのを見ると、花開く笑顔を向けられているのが自分だという事実が少しだけ申し訳なくなる。


「リンを待つ時間なら楽しいから平気よ」


 容姿を裏切らない声音が、自分に向けられるには申し訳ない言葉を放つ。

 岡山杏月(おかやまあづき)。三つ下の幼馴染で、彼女が小等部に入学して以来、ほとんど毎日一緒に登下校している。


「あーあ、リンと同い年だったらなあ。そしたら登下校もずっと一緒だし、クラスだって一緒になれるかも」


「またその話?」


「だって、リンは先に卒業しちゃうし……せめてお兄ちゃんの年交換できたらいいのに」


 杏月には二つ上の兄がいる。つまるところ、鈴蘭の一つ下だ。

 岡山晴星(おかやまはるせ)、こちらも小さいときから知っている幼馴染だ。


 杏月と晴星の親と鈴蘭の親は友人関係にあり、家も近いことから昔からよく一緒に遊んでいたのである。

 小さい頃から杏月は同世代よりも鈴蘭を優先させるところがある。実の妹のように思ってる鈴蘭からしてみれば、学校で上手くやれているか心配である。


「私だって中等部も高等部もリンと一緒に通いたい!」


 杏月が中等部あるいは高等部に上がるのは鈴蘭はすでに卒業した後だ。見事なまでのすれ違い。

 そのことが気にいらないと杏月は事ある毎に口にしている。

 年齢差なんて今更どうにもできなくて鈴蘭は杏月の愚痴を苦笑で聞くばかりだ。


「私が卒業したからって会えなくなるわけじゃないでしょ? アン、機嫌直して。むくれた顔より笑顔の方がかわいいよ」


「むぅ」


 頬を膨らませ、不満げな杏月。こういうところは成長しても変わらず、愛らしい。

 鈴蘭にはこういう可愛い表情は似合わないので少しだけ羨ましいと思う。やっぱりあの人も可愛い子の方が好きだろうか――。


「リン!」


 金色に縁取られた輪郭を脳内に浮かべる鈴蘭へ、やたらと大きな声が突き刺さった。

 聞き慣れた声、挑むような大声の響きもまたよく知っている。噂をすればなんとやら、だ。


「お兄ちゃん、うるさい」


 不愉快そうに顔を顰める杏月の兄、岡山晴星はずかずかと二人に歩み寄る。


「リン、お前また高等部の先輩を倒したらしいな」


「倒したなんて人聞きが悪いよ。手合わせして勝っただけ」


「リン、すごい! もう女子部には相手になる人いないんじゃない?」


「たまたまだよ」


 鈴蘭は剣道部に所属している。小さい頃、とあるきっかけから剣道に興味を持ち始め、従叔父の道場に通っている。


 それだけでもよかったのだが、春ヶ峰学園の剣道部には優秀な指導者がいるという話を聞いて入部した。

 杏月と晴星の父から聞いた話は事実でなかなか有意義な部活動を送っている。一つの問題を除いて。


「男子部に入れよ。俺が相手してやる」


「やだよ」


 何度目かの誘いを逡巡の余地もなく返す。


 問題というのは女子剣道部に鈴蘭の相手になれる人がいないことだ。

 道場では男子、場合によっては大人の男とも手合わせしてきた鈴蘭には少々物足りないのが本音だ。とはいえ、


「部活は和気藹々と楽しくやりたいし」


 本気を求めるのは道場でする。元々指導者目当てで入っただけだ。

 女子の剣道仲間ができるのは嬉しいし、部活では楽しさを優先したい。


「そんなんで強くなれると思ってんのか!?」


「別に強くなりたいわけじゃないから。好きだから続けてるだけ」


 プロになりたいなんて願望もない。

 剣道は趣味の範疇。それ以上を望んだことは一度としてないのである。


「俺よりも強い癖に舐めた態度とってんじゃねぇ。もっと本気でやれよ」


「どういう気持ちで言ってるの?」


 本気でやったら晴星の勝ち目がなくなっていくだけである。

 本気で強い相手と戦いたいとかそういうことなのだろうか。鈴蘭にはそういう考えはいまいち理解できない。男子特有の考えだったりするのだろうか。


 剣道には楽しいを求めている。勝ちには正直興味はない。強くなるのは楽しいの範疇に入るので、求めてる部分がなくはないけど。


「もうっ、お兄ちゃん。私とリンとの時間邪魔しないでよ」


「アン! お前は黙ってろ」


「それはこっちの台詞だよ! 私の方が先にリンと一緒にいたんだからね」


 目の前で繰り広げられる兄妹喧嘩。ここは「私のために争わないで」と言った方がいいのだろうか。

 思案し、やめる。二人がこの手の喧嘩をすることは日常茶飯事である。

 当事者たる鈴蘭は他人事のように空を仰ぎ、視線を巡らして暇を持て余す。


 そこへ――金色が飛び込んできて思わず息を呑み込んだ。胸が不自然に跳ねる。


 黒と紺碧、二色の瞳がこちらに気付いたのとほとんど同時に駆け出した。岡山兄妹の驚く声を背中にその人の前に立った。笑みが零れる。


風斗兄(ふうとにい)! こっちに来てたんだ」


「ああ。華蓮に用があってな」


 腰の辺りまである長い金髪を風に遊ばせる美青年。整った顔立ちは中性的でありながら、凛々しくかっこいい。

 向けられる瞳は鋭いながら優しさを孕んでいるのが感じ取れる。


「いつまでいるの?」


「まだはっきりしたことは分からないが数日……長くて一週間くらいにはなるだろう」


「そ、そっか」


 頬が熱いのを走ったせいだと決めつけて、笑み崩れた表情を叔父、武藤風斗へ向ける。


 母と同い年とのことだが、全然そんな風には見えない。二十代前半くらいの若々しさで、でも独特の空気感がその話を嘘とも言えなくさせている。

 妖と人間のハーフだから、と聞いたのは何歳のときだったか。


「あ、ふう兄だ〜。久しぶり」


「いいとこだったのに何の用だよ!」


 追いついた兄妹が各々、風斗へ言葉をかける。

 杏月は親しみを持って、晴星は敵愾心を持って。

 晴星は昔からやたらと風斗に噛み付く癖がある。風斗は強いので、敵視してるのかもしれない。


「久しぶりだな。お前らも変わりないようで安心した」


「はっ、今まで同じと思うなよ。俺は強くなっ――」


「はいはい、私たち先に帰ってるね。リンはふう兄とごゆっくり〜」


 兄の背中を押しながら振り向く杏月が巧みなウインクを見せる。それが意味することを察して、自覚する胸の鼓動で頬を赤らめながらも感謝していた。

 風斗と二人きりで話せる機会はほとんどない。杏月のの心遣いはありがたいものだ。


「俺たちも帰るか」


「う、うん」


 久しぶりに会うからか、妙な緊張感に囚われながら歩き出す。

 鈴蘭の歩みに合わせてゆっくりと歩いてくれるその姿に堪らない思いが溢れる。

 長い金色の髪は傾きつつある陽の中でも存在感を示すように輝いている。その美しさにただ目を奪われた。


 顔をあげ、自分より身長の高い相手の顔を見上げる。ふとオッドアイの瞳が何かを追いかけるように泳ぎ、和らいだ。


 視線を向けられているのは鈴蘭だ。鈴蘭の肩口で切り揃えた短い髪。

 ふわりと風に煽られた髪が陽の光と溶け合う。黒と、一房だけ藍色の髪。

 藍の髪を見るとき、風斗は他では絶対に見せない優しい顔をする。


 鈴蘭を見る風斗の目はいつだって優しい。けれど、藍色を追うときの目はそれとは違う深い愛情が込められているように思えた。

 優しくて、悲しそうで、愛おしそうで、痛ましい表情。もういない誰かを見る目。


 幼い頃、鈴蘭は風斗にこんな表情をさせる藍色の髪が大嫌いだった。

 母も、他の大人たちも鈴蘭の髪を見て誰かを回顧する。悲哀を滲ませて、違う場所を見る。

 それが堪らなく嫌で、母と同じ黒一色だったらと幾度となく願った。


 ――覚えていて。


 蘇る声がある。記憶の中の柔らかな声が鼓膜を揺らした。

 今はもう、嫌っていない。むしろ、誇らしく思う。

 あの人と同じものが自分の中にあることを。


「鈴蘭、どうかしたのか?」


「んーん、ちょっと考え事してただけ」


 風斗も、母も、他の大人たちも鈴蘭の髪を見て誰かを思い出す。けれど、それは鈴蘭を見ていないわけではないのだ。

 左右色の違う目は確かに鈴蘭のことを案じている。

 それをあの人が教えてくれた。横に並ぶ叔父と同じ顔をした、藍色の青年が。


「そうか」


 短く頷いた風斗が鈴蘭の手を握る。転ばないように、迷子にならないように。

 いつまで経っても子供扱い。でも、大人に近付いた心は触れ合えることに喜びを感じてもいて、不満な子供扱いすらも受け入れてしまう。


 大きな手に包み込まれて、その熱を味わいながら家に着くまでの長くない距離を歩く。

 この時間がもっと続けばいいのに。子供扱いでいいから手を繋いだまま、二人でずっと。






 帰宅した二人を迎え入れたのは白衣姿の青年だ。清潔さを感じさせる好青年は鈴蘭の姿を認めて、目元を和らげた。


「お帰りなさいませ、鈴蘭様」


「ただいま。レオンさんも来てたんだ」


「はい、レミも一緒ですよ」


 レオンとの関係性を説明するのは非常に難しい。父方の祖母に仕えている人で、風斗と一緒に仕事をしている、という認識だ。


 幼い頃、産まれたばかりの頃から世話をしてもらっているので鈴蘭の認識は親戚のお兄さんに近い。

 未だに様付けで呼ばれるのは慣れないが。


「風斗様もご一緒だったんですね。先に向かわれたのに姿が見えないので心配しました」


 首を傾げた。

 鈴蘭と会ったときは今来たばかりといった感じだったけど、レオンの言葉はそれを否定する。

 それではまるで鈴蘭に会うためにあの場で待ち伏せしていたようでないか。


 流石に思い上がりだ。そんなわけがない。久しぶりの町を散歩していてたまたま鈴蘭に会ったのだ。

 勝手な思い込みで膨れ上がりそうだった乙女心に冷静さを注いで鎮静化させる。


「久しぶりだからな、顔を見たくなった」


 低め声が紡ぐ言葉に息を呑み込んだ。落ち着き始めていた鼓動が再び跳ねる。こういうところはちょっと憎らしい。

 どうせ、昔から知っているからとかそういう理由だろう。こっちは本気だというのに。


「っれ、レオンさんも久しぶりだよね。他の二人も元気?」


「はい。鈴蘭様もお元気そうで何よりです」


 ふとレオンの目に深い感情の波が宿る。愛情の中に悲しみが灯った目。

 鈴蘭を通して他の誰かを見ている目だ。


 そんなに似ているのだろうか。幼い頃の朧気な記憶を掘り起こしても求めている答えは得られない。

 似ていたらいいな、と思う。あの人の欠片が髪色以外にもあればいいと。


「俺たちは華蓮と話してくる。鈴蘭は――」


「分かってる、部屋に行ってるよ。今日は宿題もたくさんあるし」


 厄介払いのようで申し訳ない。そう書かれている二人の顔に、笑顔を向けてひらひらと手を振る。

 仕事の話を邪魔するわけにはいかない。昔と違って寂しさもなく、鈴蘭は自室へと向かう。






 離れていく鈴蘭の背中を見送り、風斗は小さく息を吐いた。

 鈴蘭を関わらせたくない、そう思いながらも遠ざけることに罪悪感を覚える自分の矛盾が苛立たしい。


 聞き分けよく頷く鈴蘭の姿。浮かべられていた笑顔を想起し、また息を吐き出した。

 どんどん似てくる。その表情が、佇まいが、彼の姿を重なる。


「不思議ですね。顔立ちは華蓮さんの方に似ているというのに」


 風斗の心根を悟ったレオンに言葉は返さず、歩き出す。それこそ、万感の思いが込められた返事だった。

 向かった先の部屋には既に女性陣三人が集まっていた。


 癖のない黒髪を低い位置で一つにまとめた気の強そうな女性。

 寒色の着物に身を包み、桜の髪飾りで銀髪を彩る女性。

 ウェーブのかかった髪を側頭部で二つに括った女性。


 何やら談笑でもしていたらしい三人は男二人の到着にそれぞれ目を向けた。黒目一対と藍白の目二対。


「久しぶり、風斗。相っ変わらずの無愛想ねぇ」


「どうだっていいだろ」


(すず)、結構身長伸びてたでしょ。最近成長期に入ったらしくて――」


「世間話をしに来たんじゃない。とっとと本題に入るぞ」


 口火を切った黒髪の女性、鈴蘭の母親である華蓮へ冷たく告げ、離れた位置に腰を下ろす。


 最初は振り回されっぱなしだったが、ここ数年は彼女のあしらい方も分かってきた。でも、やはり真っ直ぐに向けられるあの目は苦手なままだが。

 つい、と視線を華蓮から外し、この先の会話はレオンに任せると言わんばかりに黙り込む。


「既にレミの方からある程度話はされていると思いますが、少々厄介な妖がこちらに出てきているようです。状況によってはご助力を願うこともあるかと思います」


「了解した。最近身体が鈍っているからな、ちょうどいい運動になるだろう」


 処刑部隊の役目は王の命令で妖を処刑すること。今回の目的もそれに準ずる。

 風斗は処刑部隊の一員、そして妖界の王の息子として各地を回って妖の動きの視察と対処を行っている。


 そこはあの頃と少し違っている。処刑部隊は妖界の王の息子を監視するためではなく、その部下として共に行動しているのだ。

 文句を垂れる幹部連中もいたが、そこは力で黙らせた。どうせ本気を出しても風斗に勝てないような輩だ。

 権力だの、伝統だの、心の底が面倒臭い。


「最近、聞くようになった噂など心当たりありませんか?」


「レミにも話したが、生憎それらしい心当たりはない」


「噂なら私たちよりも若い子の方が詳しいと思うわよ。鈴に聞いてみたらどうかしら?」


「駄目だ」


 ほとんど間もなく華蓮の意見を却下した。


「貴方が鈴のことを大切に思っているのは分かってるわ。でも、いつまでも遠ざけているわけにはいかないでしょ」


「鈴蘭様は藍の子の性質を受け継いでおられますからね。何かの拍子で巻き込まれることもあるかもしれません」


 藍の子、藍色の髪を持って生まれた子供。

 龍王の宿主として選ばれたその子供は妖を引き寄せやすい。甘く芳醇なその霊力は妖の魂を惹き付けて止まないのだとか。


 華蓮の祖父は妖から守るために軟禁状態で育ったと聞くし、風斗の父はその性質を利用して多くの妖と友人関係を作っていたらしい。

 風斗にとってもっとも身近な彼も自らの性質を使って妖を誘き出すこともあった。


 鈴蘭は藍の子ではない。けれど、藍の子の性質を継いでいる。真の藍の子程でないにしろ、妖を引き寄せやすい体質であることには間違いないのだ。


「戦う術はこちらでも教えているがな。知ってるのと知らないのとじゃ、いざという時の対応も変わる」


「分かってる」


 分かっているけれど、受け入れ難い。

 風斗は鈴蘭を守りたい。ただ幸福に笑っていられる場所にだけいてほしい。


 危険から遠い場所で、恐ろしいことなど知らないままで。

 もっとも守りたかった人は守れなかったから、その人の大切なものだけでも守りたい。

 鈴蘭を脅かすものは風斗がすべて、どんな手を使ってでも打ち払うから、安全な場所で笑っていてほしい。


「まあいいわ。危ないことに関わらせたくないのは私も同じだもの」


 この話題のたび、風斗は頑なになる。それを知っている面々はそれ以上何も言わず話を切り替える。


「星司君にも聞いてみるわ。あっちの方が詳しいだろうし、彼を頼れるかもしれないわ」


「この程度のことで力を貸してくれるとは思えませんが」


 もっとも嫌いな人物が話題にのぼり、風斗は口を真一文字に結ぶ。

 たとえ理由があったって、あいつは彼を殺した。そのことを永遠に許すつもりはない。


「あら、天気予報なら気軽に答えてくれるって言ってたわよ」


「世界の管理者がそれでいいんですか……」


 レオンが渋い顔を見せている。

 この世を創った帝天からこの世界の管理権を奪った出来損ないの神、知帝(ちてい)

 情報屋『カガチ』として運営していたチャットルームを使うことで彼と連絡することができる。


 ただし、神出鬼没のチャットルームは二人の例外を除いて、本当に必要なときにしか見つけ出すことはできないようになっている。


 例外のうちの一人である星司は知帝の持つ『万物を知る』力を随分便利に使っているらしい。

 こちらの求める情報は出し渋りする癖に身内には甘いらしい。問い詰めれば「天気予報なら世界に与える影響が少ないから」なんて言い訳がましいことを言いそうだ。


「ヒントくらいならもらえる、と期待してそちらは華蓮さんにお任せします」


 風斗は知帝のことが心の底から嫌いだが、彼の力が有用なのも事実。利用できるものは利用する、と嫌悪を押し隠すように無言を貫いた。昔よりそういう融通は利くようになった。


「私たちもしばらく滞在して情報を集めます。何か分かれば連絡を」


「うちに泊まっていけばいいのに」


「以前使っていた拠点がまだ残っていますので」


 ちらり、と風斗を一瞥したレオンが華蓮の申し出を断る。

 鈴蘭を守りたい。そう思いながら同時になるべく距離を取っておきたい、そう考える風斗を慮るように。

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