一夜目8
「お、おい見ろ」
ユウイチの声に我に返った。
どうも意識が散漫になっていた様だ。蜘蛛退治の疲れのせいか、それとも点数について考えていたせいなのか。
ユウイチが指差したのは蜘蛛と男の亡骸。
粉になっていく。
男の苦悶の表情も、あちこち千切れた蜘蛛の身体も粉になって崩れていった。
(最期は本田あさみと同じって訳か)
「死ぬと粉になっちまうのか」
「いや……多分だが、仮面を取る事が条件だろう」
誰かが仮面を手にした時、粉末状になるのではないか?
本田あさみは自分で自分の仮面を脱いだ。オレ達が仮面に触るまであの女は原形を保っていたのだから、そう考えるのが自然だろう。
粉の山から目を上げる。
オレの目に映ったのは【43】の数字。壁に示されたカウンターだ。
(マジか……)
蜘蛛との格闘でだいぶ時間を喰ったが、どう考えても時間設定が短いだろ?
一時間半程で出逢ったのはユウイチ・本田あさみ・名も知らぬ男・化け物蜘蛛。
いったいどれだけの点数がクリア条件なのか知らないが、どう考えても時間が短過ぎる。クリアさせる気が無いとしか思えない。
(夢だから仕方無いのか)
「どうする?あと40分くらいしか無いけど、二人合わせて5点にしかならないぜ?」
そこでなんで二人合わせるんだ。
コイツいざとなったらオレを襲うつもりか?
「そうだな、そこの部屋に入るか」
「な……なんで?」
「下手に焦って動くと手痛い目に会いそうだ。部屋に隠れて様子をみよう」
上手くすれば待ち伏せも出来る。
「そんな悠長な真似で大丈夫かよ?」
「どう考えても時間が足りないだろ?仮に100点必要だとしたらどっちみち動くだけ無駄だ」
渋るユウイチを連れてオレは近くの扉を開けた。
その部屋は長椅子が二列に並べられた他にこれといった特徴が無い、まるで病院の待ち合い室の様な感じだった。
人気は無い。
オレは長椅子の一つにどっかりと腰を下ろし、息を吐く。
肉体的に疲れは感じていなかった。夢なのだから当然と謂えば当然だが。
代わりに精神的疲労が酷い。
(夢の中でくたびれるとか洒落にならないな)
普通睡眠をとる事でリフレッシュするものだが、目が覚めたら余計に疲れているんじゃないだろうか。
ぼんやりとする頭を振り、オレは壁を見た。
この部屋にも『ルール』と『カウンター』がある。気が付けば、オレはルールをまた読み直していた。
(協力するとペナルティ……累積……)
今のところ、ユウイチと一緒にいる事でペナルティを受けた感じはしない。
累積というからには少しづつ何かが溜まるのか。
(まぁ……不満は溜まるな。イラつくヤツだし)
蜘蛛退治では助かったが、ユウイチの言動はどうにもオレの神経を逆撫でする。
「お、おい、見ろ時間が」
ユウイチがカウンターを見て騒いだ。
【1】の数字になった途端、カウンターの光が赤く変わり、【60】【59】【58】と秒単位に刻まれる。
(いよいよか……どうなる?)
オレは内心の焦りを隠しながらカウンターが【0】に近付くのを待った……
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